BLCD 『COLDシリーズ(SLEEP・LIGHT・FEVER)』感想 | 半腐女ry生活?

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腐っているような腐っていないような声優&アニメヲタが送る感想ブログ。
(と言いつつ、中身はドラマCDの感想ばかり・・・w)

BLCD「COLDシリーズ」(「COLD SLEEP」「COLD LIGHT」「COLD FEVER」「LAST FEVER 四季」)を聴きました。
2010年1月27日・3月25日・5月26日発売 原作:木原音瀬 イラスト:祭河ななを
出演 羽多野渉 野島裕史 (杉山大 恒松あゆみ 滝田樹里 滝沢ロコ 家中宏 鈴木れい子 他)



COLD SLEEP

COLD SLEEP
事故で記憶をなくした高久透は、友達だと名乗る年上の男・藤島啓志に引き取られる。藤島は極端に無口なうえ、透の「過去」を何ひとつ教えてくれず、透はどこにも居場所がないような寂しさを募らせる。しかし藤島とともに暮らすうち、彼の中に不器用な優しさを見いだして──。


COLD LIGHT

COLD LIGHT
透をかばって負った傷も癒え、藤島の退院の日がやってきた。再び二人の生活が始まり、恋人として暮らしたいと願う透だが、藤島は「君と恋愛するつもりはない」と拒絶する。透の記憶が戻れば今の関係を忘れられてしまうことだけでなく、過去の何かを藤島は恐れていて――。

COLD FEVER

COLD FEVER
ある朝目覚めた時、透の時間は六年の月日が経っていた――。事故でなくした記憶を取り戻したものの、周囲に愛されていた『もう一人の自分』の影に苦しみ、さらに誰よりも憎んでいた男・藤島と同居していたことに驚愕する。藤島に見守られ、失くしかけた夢と歳月を取り戻そうとする透だが、藤島の裏切りが明らかになり――!


LAST FEVER 四季
透と藤島2人のその後を描いたストーリー+キャストコメント



高久透(CV.羽多野渉)

事故で記憶を失くし、藤島の家に同居している。

自分の過去がわからなくても前向きで、一緒に生活していくうちに藤島に惹かれた。

藤島の好物という理由から始めたケーキ屋のバイトが、後に本格的にパティシエを目指すほどになる。

藤島啓志(CV.野島裕史)

とても無口で、何を考えているのかわかり辛い。

感情を出す事が苦手で、不器用だが優しい。

透への恋心を隠していたが……。



羽多野渉(高久透)×野島裕史(藤島啓志)



※とても長い文(約8400字)なのでパソコンからご覧いただくことを推奨します。

更に、怠慢から絵文字等全く入れていません。読みにくくてすみません<(_ _)>




私はこの作品を二度と聴きたくありません。
少なくとも今は、「当分は・・・」ではないです。時間が経てば心境は変わるかもしれませんが、ジャケットすら見たくないです。
もう発売されてから一年も経ちますので、この作品の作りに対して書いているでない事は察していただけるかと思います。
COLDシリーズの評判はCDを聴く前から知っていましたが原作は未読でした。しかし1を聴き終わった瞬間、まるで何かに取り憑かれたように積んでいた原作を引っ張り出し一気に最後まで読んでしまいました。木原作品独特の魔力みたいなものにすっかり取りこまれ、“そこ”へ行ってしまうのです。
CDは原作に大変忠実に作られており、音声化することによって登場人物に命が吹きこまれSEが付いたという点ではリアルですが、結局読んでも聴いても最後はずしんという重みが全身にのしかかります。
読んだ後すぐにCDが発売されていたらしばらくは手をつけられなかったことでしょう。実際、CDを聴いた後の衝撃は莫大で同月発売のCDにほとんど手をつけられず未だに聴けていないものもちらほら。
改めて書く必要も無いかと思いますが、覚悟して聴いてください。絶対に、何か聴こうかな~という精神では耐えられないと思います。
以上を踏まえた上でも感想のようなものを書くことにしたのは紛れもなく聴く価値のある作品だからです。



今日はいつもと少し書き方が変わってしまいます。
読者様には大変失礼ですが、ほぼ発売時に聴いた記憶を手繰るだけの執筆になります。でも、うろ覚えというほど酷くはないかと思います。
三部作をまとめてごちゃまぜで書くので、ネタバレ必至、わかりづらい部分も多々あるかと思いますがお許しください。



早速ですが、そもそもこの作品にリアリティなどあるのだろうか、というのが最初の話題。
作品内で道理が通ってしまっているからリアリティが出ているというのは前提に置いて、別の視点で見て行こうと思います。


記憶喪失になった人間が別人格になり、6年という丁度よい頃合いを見計らって元の人格に戻るなんてまずあり得ない。おまけに透も藤島も育った環境は最悪で、まるで昼ドラのような描写が多々あります。
藤島は呉服店の跡取りとして生まれ、母親に操作され自分の意見も言えず生きてきます。父親は交通事故から不能になり、実は妻と義兄との間に生まれた藤島を忌んでいるのです。
透は母親にネ//グ/レ//ク/ト/され、藤島の父親が誰も引き取り手のない彼を遠戚という理由で藤島の家に連れて来るのですが、それにも裏があり、妻に対する抵抗、とでもいいましょうか。嫌がらせなのです。もちろん藤島の母親はいきなりどこの馬の骨とも知れない汚い子どもが来た事に腹を立て、透を離れに閉じ込めます。父親は連れて来ただけで後は無視しています。
関わりを持たないように忠告されていた藤島ですが、ある時出会ってしまいます。年は離れているものの、まるで兄弟のように過ごし・・・。
二人とも初めて自分の存在を確認し、お互いを理解しあえる人間に会えたのです。
それが長く続くわけではないのですが・・・。


話を戻しますが、それも少なくとも私の生活からはかけ離れた話で、登場人物の過去を抉り理由づけをするという意味では欠かせませんが、痛々しさが勝り共感とは程遠いように思うのです。
全く共感せず話に入れ込む事などできるのでしょうか。胸が痛くなるのは遠い世界が描かれながらもどこか一点で作品を内に入れているからではないでしょうか。

私は三巻の最初の一言が本当に辛かったです。
「ふぁー良く寝た。あ?なんだこの天井……ここ、どこだ」
それまでわちゃ演じる透はワンコみたいな人間でした。藤島に擦り寄って来て彼を守りたいとも思っている。それだけにワンコ系はいいとして、三巻目で演技に違いを持たせられるのだろうか、という失礼な疑問まで浮かびもしました。
だから余計に一言に震撼したのかもしれません。
それまでの二巻で記憶を失った高久透だけを見てきて、彼の元の人格が凶暴であることはちらほらわかっていましたが、僅かな描写を忘れさせるほどに記憶喪失の透は輝いていました。
透は交通事故で人を/殺/し/た事を本当に悔い、のちにわかる事ですが遺族へ送金し続けています。何か新しいことを始めなくてはと思い、藤島の好きなケーキを買ううちに自分がパティシエになろうと決心し、必死に勉強します。
商店街中の人から“透ちゃん”と可愛がられ、それにまっすぐに答える姿。
元を知らないから余計にいい子だなあと信じて彼を見ていました。
藤島は元の透の時から大切にしていたのですから彼の抱く感情とは全く別物の、作品から勝手に派生させた私的感情のみで透を作り上げて甘い夢を見ていたのです。
ところが、“透ちゃん”が居なくなり、私の中の透が消えて寂寥が込み上げたのです。
元の透は藤島を嫌い暴/力やレ//○//プを繰り返します。殺人のこともすっかり忘れ、結果的には遺族を再び苦しめることになり、仕事もパリへの修業が認められた矢先だったというのに無断で辞め、町の人が声をかける“透”に嫌気が差し商店街を避けて歩くようになります。
何もかもがショックでした。
6年も経っていて自分が別人として生きていたら理解もできないし矛先を誰にぶつければいいのかもわからない。何もかもを否定したくもなるでしょうし、自分という別人との摩擦に悩みもするでしょう。
しょうがないとわかっていても、藤島の大切にしていた“透”との写真をゴミ収集に出した時には鬱状態になりました。


私はその一連の事件を見ていながらも、どうしても“透”の片鱗を探してしまうのです。もしかしたらいつか前の彼が戻ってくるかもしれない。どこか共通点があるかもしれない。無くても探し、穴を埋めるために優しかった“透”を懐古するのです。
私が作り上げた透像を藤島も同様に捉えるだろうと勝手にすり替え共感したようにも思います。
それは非常に身勝手な行為であり、虚像を大切にしていただけとも取れるかもしれません。
木原先生が狙っていたかどうかは知りませんが、まんまと入りこんでしまったのです。
先ほども少し書きましたが、藤島は動揺もあったでしょうけれどきっと透と向き合おうとしていたはずです。が、私は一瞬の動揺を誇張して捉えたのです。
しかし、これが私なりの共感であったことに違いはありません。


話は最初に戻りますが、リアリティなど皆無なんです。現実的な事を描いているようで中身はファンタジーだらけ。
でも、共感するからこそ自ずとリアリティが出てきてその影にずっと付き纏われて辛くなるんだと考えました。
そういう重さを充実感として受け入れて欲しいとも思っています。




ここまで書いてみて、次に浮かぶ問題は、二人の間にあるのは愛と呼べる感情なのか、ということ。
お互い孤独で、切羽詰まった心境を共有していた、でもある事件が起こったせいで透は藤島を軽蔑するようになり、藤島は透に懺悔するばかり。それまでの関係が逆転したのです。
弱みを握った握られたという関係に近く、でも、それはある意味好都合だったのかもしれません。無意識にお互いを縛り合う口実ができたのですから。
でもそれは愛なのでしょうか。痛み分け?傷の舐めあい?
そう捉えてしまいます。
が、では別の人間と結婚して幸せに過ごしていけるのか?と言えばそれも違う。誰もこの二人を支える事などできはしないのです。
二人が一緒に居る事は宿命だと思いました。
ベタ甘な愛の物語を求めていらっしゃる方には向かないことでしょう。

と書きつつ別の事も書きますが、それでもやはり愛していると思います。藤島の透を思う気持ちは本物だと思いますし(そうでなければ、藤島は自分の会社を売ってまで事件を揉み消して透を釈放なんてするはずないですし。こういう具体例を出してもチープかもしれませんが・・・。)、その逆もまあ・・・LAST FEVERまで聴くとそうかな、と。
どんな状況があったとはいえ、好きにならなければこれまでもこれからもずっと一緒に居る事なんて出来ないですし、一つの形として、BLの新たな定義を作った作品でもあると思います。



ここまで長くなりましたが、演者さんのことを書いていきます。
登場人物が多いので、掻い摘んでご紹介します。



透@わちゃ
彼の伸びしろはまだまだあるのではないか?と思わされました。この作品で更に演技の幅を広げられたなと思います。
わちゃが元々若手の中でも演技上手なことは言われていましたが、どうしてもヒットが出ると似たような役ばかりが来てしまうように思います。
私の中ではワンコというイメージが非常に強く、記憶喪失の透は合っているだろうけれど、その後は演技次第だと感じていました。
実際一、二作目は完璧だったと言っても過言ではありません。
真実を知っても藤島の元から離れず、記憶が戻ってもずっと藤島を好きでいると言ったのは無垢な本気で、それは「COLD LIGHT」の最後の2トラックでもよくわかるかと思います。
でも、経験していない事はどこか他人事でしか無かったのかなと深く悩んでしまうほどに三作目の透は別人でした。
わちゃ大丈夫かな、なんていう心配は徒労でしたが、そのぬるさがより牙を太くして刺さりました。
声の出し方が低くなり、とりあえずああ・・・と思わされるのですが、それからの違いは悲鳴にも近くなります。
苦しんで、レプリカの自分との壁にぶつかりまくり、憎き藤島と顔を突き合わせなければならない現実。それでも藤島しかいなくて求め続けること。書き出しにくいことですが、複雑な感情を目一杯演じてくださっています。
藤島の性//器を切断しようとするところも、写真を見つけて捨てるところも、被害者のキノシタサトコに事故の話を聞くところも、事実に恐怖し、家に帰らない藤島(実は社員旅行に出かけていたのですが・・・)に血眼で連絡を取ろうとするところも、俄かには信じられず聴き続けられるのかどうかと悩みそうにもなりますが、それでも透を真正面から捉えなければと気を引き締めるのです。


もちろん原作も最後まで読みましたが、より立体的になった世界ではわちゃの演技に引き込まれたからこそ透に気持ちを入れて聴くことができたと思っています。
ワンコな演技ができるから透にキャスティングされたのかもしれませんが(←偏見でしょうね)、結果として新たな羽多野渉を見せつける最高の舞台になっていました。
これからの更なる活躍に期待しています。
褒め言葉ですが、特に記憶を取り戻してからの透にはわちゃを求めない方がよろしいかと。そこには透しかいませんから。



藤島@裕史さん
裕史さんのBLなら何でも聴きますが、特段裕史さんだー!とはしゃぎもしませんでした。(いつか書いたような気もしますが、元はそんなはしゃいでいなかったんです。)
でも、どこかでこの作品が裕史さんご出演BLの集大成ともいえるものになるのではないかと思っていたので(実際は未だに出てくださっていますけれど。)一言一句聴き逃すまじ!と力んでもいました。


透の子ども時代は滝田さんが演じていらっしゃるのですが、藤島の学生時代は裕史さんがそのまま演じていらっしゃいます。
現在の藤島は寡黙で必要なことしか話しません。低音で静かに話をします。一巻ではほとんど抑揚がなかったような・・・。刺/された時でさえ人混みの中に居ながら通報するなとそのままの調子で言うのですから、彼の背負っていこうという決心は並大抵のものではないなと痛感します。
裕史さんの声は品の良さを感じさせるので、藤島の良いところのお坊ちゃんというのがよく出ています。
母親の傀儡として育ちながら自我を保っていられたのは実は兵なのかもしれないと思わされました。
アイドルを好きになる事も許されず、自///慰したい時は母親の元に行かなければいけない。
狂//ってるとしかいいようがないんですよ。この鬼畜母は本当に消えればいいのにと・・・。
ベテランの滝沢さんが演じていらっしゃるので迫力満点です。藤島を縛り続ける姿はもちろんですが、竹箒で幼い透を折//檻するシーンは目も当てられませんでした。
こんな中に居て、母親に逆らうのは無理でしょう。少年に手を出すなんていけないこととわかっていますし、どうして透を助けられなかったのかと思いもします。
でも、しょうがない。もう聴いているとそれしか言いようがないです。
藤島は必死なんですもの。板ばさみにされている中で、父親が自分をどう思っているのかもわかっていたのに透について尋ねるのは本当に偉かったです。
彼の持つ精一杯で、もがいている姿が裕史さんの演技からますます感じとれて、苦しまないでと言いたくて言いたくてしょうがなかったです。
藤島は藤島で記憶喪失の透を引き取り、でも過去の透のこともずっと忘れずにいて、いつ戻っても受け入れると決意しているのです。
それまでの人生は壮絶で、母親と離れてもまだ安寧は訪れやしないのに、一度も逃げ出そうとせず、何をされても透を守り抜く姿は、殻を破ったようにも見えました。
裕史さんの演技に文句など一つもありません。



この作品は豪華なキャストが周りを固めていますが、あと二人ほど。



楠田@杉山大さん
楠田は唯一の中間点に居る人物です。
記憶喪失の透も記憶を取り戻した透も彼の事だけは大切な友人だと思っています。
透と藤島が恋人だということも知っていますが、驚きながらも受け入れてくれた人です。
「LAST FEVER 四季」でまた話に関わってきますが、他ではクッション材の役割を果たしていると言えるのではないでしょうか。
彼の声を聴くだけで安心できました。周りが周りだけに。
杉山さんはその安心感を与えるような、と言っても変に作ってるのではなく、気の置けない友人、を出してくださっていました。
楠田は本当にいい奴ですv



キノシタサトコ@恒松さん
恒松さんと言えば「ガンダム00」のマリナ・イスマイールのイメージが強くお嬢様!や、後はサバサバした役も聞いた事がありますが、そちらもかっこよさが十二分に発揮されていて素敵でした。
が、今回はまた見事に・・・
弟を/殺//され、犯人は金を積んだことで法の裁きを受けずどこかに逃亡。ようやく発見して刺/そうとするものの別の人間(藤島)に刺/さってしまい、その人間から記憶喪失だと聞く。許せなかったものの、犯人の必死の謝罪で少し落ち着き、その後は犯人の送るお金をとりあえず受け取り、6年後入金が無いことが続いたのでお金に困っているのでは?と心配し返しに行くと今度は記憶を取り戻した犯人に出会い事故の事はきれいさっぱり忘れていてまた憎しみが込み上げて来る。
「いいわよね。何度も忘れられて・・・私たちはずっと覚えているのに」
というようなことを言うシーンがあったのですが、とても感情がこもってます。
登場する度に感情をむき出しにするような部分が多く、演じ切られたことにとても感動しています。
恒松さんはもっと評価されるべきです。
キノシタは本当に気の毒としか言いようがなく、このあと家に帰って両親にどう説明したのかとか、立ち直って生きていけるのかどうかとか心配で心配でたまりません。
彼女も苦しさをずっと抱えるのでしょう。もう嫌です。この家族を幸せにしてください。




ここまでとにかく重く書いてきたので、読んでいただいたお礼の意味も込めてシーン抜き出しをやってみます。(頑張ってCDを引っ張り出してきました!結構勇気が要りました。)
暗いシーンではありません。私の大好きな、幸せの絶頂にあった二人のお話です。(ストーリー終了後にはまた違う意味で幸せになったかもしれませんが、描かれている部分で。)


記憶を取り戻す前のお話。(「COLD LIGHT」の2枚目のトラック2の最後の方です。)

藤島は透を自分から離すためにも離婚した事を隠して結婚していると嘘をつきます。
透は藤島を愛していましたが身を引く事にし、一緒に暮らしていたマンションを出て行く事に。
ところが引っ越し前夜、会社を売却して逃げた藤島を探していた母親がマンションを探し出し、とうとう尋ねてきます。狂ったように叫ぶ母親を見て、藤島は透をここから早く出さないとと考え今すぐ引っ越しをしろとせがむのですが、透は頑として首を縦には振りません。ふとした時に、藤島は口を滑らせ結婚していることが嘘だとばれてしまいます。言い合いになり、過去の透を気にするあまり消極的な藤島に体で好きを伝える透でしたがやはり逃げます。諦めてとうとう出て行く透・・・


「はっ…ぅっ…ふっ…ふはっ…」
―こうなることを望んでいたじゃないか。別れて暮らすのは、僕の望んだ形だったはずだ。―
「は…うっ」
―嫌だ…嫌だ…透が居ないのは嫌だ。笑いかけてくれないのは嫌だ。好きだと言ってくれないのは嫌だ。泣いているのに慰めてくれないのは、嫌だ―
「っ!……透」
物音を聞きドアを開ける藤島。
……
「裸でどこ行くの?」
「っ!」
「何か言えば?」
……
「君と居ると、苦しい…君が居なくても、苦しい……僕は、どうすれば、いいんだ」
「はぁ」
……
「俺を追いかけるつもりなら、もっと早く出て来なきゃ。本当に居なくなったらどうするつもりだったんだよ。部屋から出て来ないつもりかってひやっとしたじゃないか……いいけどさ」
―体が震える。怖いけど、嬉しい。欲しかったもの、失くしたくないもの、大切なもの―
「同じ苦しいなら、一緒にいて?どうか、俺と一緒に居てください」
大泣きして崩れる藤島。
「泣かないでよ。俺、藤島さんに泣かれるの、駄目なんだよ」
……
「泣くよりも、好きだって言ってよ。笑って、俺の事を好きって言って?」
―この男を離したくない。傍に居たい。こんな幸福な夢と引き換えなら、その後に何があろうと耐えていける。明日透の記憶が戻って全てが無かった事にされても、それでもいい―
「藤島さん?」
「強く、なりたい……」


書いていない部分も全部おすすめします。ここを聴いてしまうと余計にその後が辛いのですが・・・ぜひ。
改めて聴いてみると、藤島の覚悟のほどがよくよく知れますね。泣きたくなってきました。



一つ残念なのは・・・このお話の後の「LITTLE WISH」が描かれていない事。別の話が入っているのですが、愛に溢れた//セ//ッ//○//ス//をするこのお話がカットされていることは残念です。どうして削ってしまったのでしょう。私のオアシスだったので最大限描写して欲しかったです。
もちろん鬼//畜母との真っ向対決も入って無かったですし。あれでようやく本当の意味で独り立ちし、こちらとしても痛快だったのですが。
別の話もあれはあれで良かったですけれど。



書いてから更に数か月経ってしまい、その間にコミックスが発売されていました!

COLD SLEEP (ビーボーイコミックス)/麻生 ミツ晃


早速読みました。色々削られてしまっていますが雰囲気は踏襲していると思います。
(コミックスは挿絵の祭河先生では無く麻生ミツ晃先生が描いていらっしゃいます。コマの割り振りがきっちりしていて枠内に収まりながらも、線がシャープなのと重要なシーンでは鉛筆を強く走らせたような西洋画デッサン風の描写があり重みがあります。続編も作られるようですが、きっと原作のままの痛々しさを表現してくださるだろうと想像できます。それだけにあまり読む気が起きません・・・。あと、個人的には祭河先生のイラストの方が好みです。)
小説とCDが非常に良い出来だったのでどれかをお薦めするならコミックスは選びませんが、木原先生の書き下ろしも数ページありますので、ファンなら入手しておきたい一品かと思います。

(書き下ろしは入院中の藤島のお話です。この頃からちゃんとずっと透の事を想っていたんだな~とSLEEPでは藤島が謎めいているだけに知らなかった心理を読めて嬉しくなりました。)



※重要※

最後に、LOVE PSYCHEDELICOの「LAST SMILE」という曲を、ぜひ全部聴いた後に聴いてみてください。
ニコニコ動画で関連動画を見てわかったのですが、まるでこの作品のための曲、この曲のための作品、のようです。
有名な曲なので聴いた事のない方は少ないかと思いますが、何度も聴いているはずなのに今までで一番歌詞が胸を打ちました。
そうしてまた沈むんですけれど・・・ね。
ちなみに動画は現在消されてしまっていました。
が、Youtubeにもアップされています。
_cS2inm7p3o
URLで「youtube.com/watch?v=」の後に上の文字を入れていただければ出て来ると思います。(ネタバレ注意)



これにて感想は終わりです。省いているところが多々あり一種の考察になってしまいましたが、ちゃんとした内容に関しての感想は書いてくださっている方がたくさんいらっしゃるので、私は私目線で書かせていただきました。
本当に大切なワードや感情からはそれた所で書いている分邪道ですので、気になる方はやっぱり読むか聴くかしていただきたいです。(CDの場合は今は入手困難ですが通販特典CDもぜひお聴きいただきたい。)
参考にはならないかと思いますが、COLDシリーズに少しでも興味を持っていただければ嬉しいです。



間違いなく名作です。