- ボーダー・ライン/久能 千明
- ¥1,470
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BLCD「ボーダー・ライン シリーズ」(「ボーダー・ラインⅠ」「ボーダー・ラインⅡ」「ボーダー・ラインⅢ」)を聴きました。
2005年4月30日・5月30日・7月30日発売 原作:久能千明 イラスト:蓮川愛
出演 鳥海浩輔 三木眞一郎 小杉十郎太 (立木文彦 西村知道 浅野真澄 他)
ボーダー・ラインⅠ
全身全霊をかけて愛しいと思ったのは、―おまえだけだ…
県警本部捜査一課の刑事・真行寺佳也は、雑踏の中、ひとり浮き上がって見えた男・由利潤一郎に目を奪われた。やがて、刑事と弁護士として法廷で再会した二人。頑なに人との深い関わりを拒む佳也は、自分に対しあからさまな好意を示す由利に、戸惑いを隠せないでいた。そんな中、佳也と親しかった元刑事・久保田が殺人を犯し、自///殺を図った。そしてそれが、佳也と由利、そして多くの人間を巻き込んでいく大事件の幕開けだった…。
ボーダー・ラインⅡ
「あなたが引いた線の内側に、僕の居場所を作ってみせる。あなたが好きだから……。」
元同僚の久保田が起こした事件、そして自///殺。真行寺佳也は、友人だった男の死に疑問を抱き、調査を始めた。その中で佳也は、久保田が以前に担当していた事件で、捜査の終わり方がおかしい事件があることに気づく。―政治家、暴力団、警察幹部の癒着…。証拠はない。理論的な説明もできない。それでも「何か」があると感じた佳也は独自に捜査を進め、とんでもない真実を知ることになる。その衝撃に崩れ落ちそうになった佳也は、由利潤一郎の差し伸べる手を自ら取るのだが…。
ボーダー・ラインⅢ
「佳也さん……僕は、あなたの何……?」「……由利…、おまえは、俺がつらいときにだけ優しい……」
佳也は自分を拒まない。しかも、進んで身体を開く佳也に、由利潤一郎は自分の知らないところで、得体の知れない何かが大きく動いているのを感じていた。政治家、暴力団、警察幹部の癒着。元同僚の死をきっかけに、真行寺佳也が知ってしまった事件の真相。それは既に一介の刑事が手を出せる規模ではなかった。だが、佳也は単独でその事件の捜査を進めていった。事件に深入りしていく佳也を待ち受けていたものは!?そして、由利が受け入れなければいけなかった現実とは…!?
ブクレに人物紹介が載っておらず、説明もしにくいので省きます。手抜きでごめんなさい。
三木眞一郎(由利潤一郎)×鳥海浩輔(真行寺佳也)
好きですか?嫌いですか?と問われたら困ります。
聴いたのによくわかりません。聴き終わって初めに思ったことはとにかく疲弊した・・・だったからでしょうか。
でも、間違いなく良作なので聴いて欲しいと声を大にして言えます。
この作品で私は深く反省しました。それは阿部さんの演出を過小評価していたからです。
もちろん原作や声優陣の熱演があって素晴らしい作品になっているのですが、今作に関してはBGMや効果音含む編集が作品を魅せる大きな役割を果たしていたと言い切れます。全てひっくるめて良作です。
最初は特にBGMについてはどうも思いませんでした。聞いた事ある曲だな~とか、息の詰まるシーンが多い中で少々息抜きの意味を成すシーンでもここまで軽くしなくてもいいのでは?とか、寧ろ失礼な意見を持ってもいました。
ですが、聴き進めていくと180度変わりました。
決して大げさなものを使っているのではなく、場に見合った正しいものを的確に嵌めてきている、という感じがします。
特に心に残っているシーンが三つあります。
一つ目はⅡの最後。真行寺@鳥海さんがある固い決意を持ったことに気付いた由利@三木さんが不安と焦燥に駆られるのですが、じわじわと奇妙な音楽に不安を煽られます。由利の心の中が透けて伝わってくるようでした。
寒くなり鳥肌が立ちました。
これで終わって続きはⅢで・・・となるのはちょっと怖いです。発売時に聴いて続きを待つのは一番避けたいタイプの作りでした。唯一の救いは直後にフリトが入っていたことでしょうか。
二つ目はⅢのタンクローリー爆破シーン。
これはまさしくトラウマを植え付けるものです。リスナーではなくキャラに対して。
この後の展開にもスムーズに納得がいってしまいます。真行寺が忘れたかったものはこの出来事ではありませんが、このこと自体も忘れたかったのではないか、と勘繰ってしまいます。
このシーンは演者の命の危機に瀕した際の絶叫が胸に突き刺さりますが、爆破音など効果音が的確に使われ臨場感が増した結果、演者の芝居も引き立ったように思います。
三つ目はⅢの最後。バタバタバタって。それが今や使い古された手法だったとしても、希望が見えます。これは絶対に必要です。このシーンはそのバタバタバタという音で、Ⅰのレンブラント光線の説明が鮮やかに蘇ってきます。イエスが洗礼を受けた時、天が裂け無数の聖霊が白い鳩のように降り注いだと言われていますが、そんな神々しさまでを全体で演出していたようにさえ思えます。
三木さんはやはり飄々とした奇人の役がお上手です。何を考えているのか、敵なのか味方なのかもさっぱりわからない様子で登場するので、途中までは疑心暗鬼で聴いていました。
良い方へ転ぶのか、それとも豹変して辱めるのか。とりあえず二択を出して悩みました。
導入から私は置いていかれていました。
まるでチューリップのような奇抜な格好をした男が真行寺の目に留まり、刹那その男が駆け寄ってきて挨拶をしカフェに連れていかれる。
意味がわかりませんでした。正直、そんな人物が歩いていたら目も合わせないでしょう。
真行寺も状況を飲み込めていないようだったのでそれが救い。ただ、真行寺の場合は由利を見る目が私のような一般人とは少々違っていましたが。
目も合わせたくないような変人があれよあれよと言う間に引っ張っていくというのをナチュラルに三木さんはこなしていらっしゃいました。これからどうなるのか一寸先も読めないのに、気付けば由利のペースにはまっているのです。
良いシーンはたくさんあるのですが、Ⅰの最後のバーでの催眠術のような誘導は素晴らしかったです。最近「感応時間」などの催眠音声が流行っているようですが、ぜひ三木さんをキャスティングしてみてはいかがでしょうか。
とてもエ□ティックで、バーのカウンターで手を重ねているだけなのですが、二人の肢体が淫 らに絡み合っているような気にさせられます。それでいてバーに居るということも忘れさせない作りになっています。
もちろん、このシーンでの鳥海さんの少々くぐもった声が出てしまう感じは必聴です。
由利というキャラのすごいと思うところは、フリトで声優陣もおっしゃっていましたが、“強い”ということ。
彼は最初から最後まで大切な時には真行寺に選ばせます。それは大凡二択ですが、正反対の難しい二択なのです。登場人物になりきって考えると、生きるか死ぬかというような重大な決断なのです。
面倒くさいから丸投げしているのではなく、それは真行寺が選ばなければならないことです。(こういう時にモノローグで(真行寺の)心理を徹底的に抉り出すのもとても良いです。)
それにしても、最後の最後まで選ばせるとは・・・。
相当な心の準備をしてからあの場に出かけていたとしても動揺が走ってうっかり口から錆が出てしまいそうな気がしました。
それを平気な振りをして(直前の片岡@小杉さんとの会話から由利はその時が必ず来ると信じて待っているのがわかるので、直後に兆しが見えたからと思えばその通りに受容できてしまったのも不思議では無いのですが、それでも動揺してしまうのが普通だと思います。)、にこやかに選択肢を与える姿には心揺さぶられました。
鳥海さんは、最初に思ったのはおお!今より声が澄(略)、いや、よく言えば今は渋さが増したわけですが。
絶対零度の刑事なのかと思えば、元カノの南@浅野真澄さんが言う通り意外と不器用なだけなんだなと南との会話から理解したり。
由利のような変人に対して、いくらカッとしたからといって名刺は渡してしまわないよね・・・と思えば確かに上手く立ち回れていないのだなと納得させられます。
ですが、そういう一つ一つが可愛いです。
最初は職場の上司にも声をかけづらい存在だと敬遠されていましたが、由利と出会ったことによって表情が多彩になっていきます。あるシーンで、今なら真行寺に声をかけられるかも!と思ったのですが、直後に上司等が口々に話しかけやすくなったと言い合っていたから驚きました。
オーラもですが、二、三言話しているのを聞いただけでこの人に声をかけてみたいなと思わせるだけの愛嬌を作ってしまったのですから驚きです。
初めて由利に抱かれるシーンでは似たような声の出し方が続きましたが、バーのシーンやⅢの冒頭のシーンとの変化は出ていましたし、いつ聴いても艶っぽいので良いです。
ただ、キャラとして安心して聴けていたのはその辺までで、この後真行寺はどんどん追い詰められていくことになります。
もうほんっと辛い。
重い重い重い。
具体的な行動は寧ろ簡潔に書かれており、そこに至るまでの気持ちや、止めようとする由利との、本心と常識という理想、を交えたせめぎ合いの会話に時間を割いています。
彼の背景が見えてくれば見えてくる程闇は広がって、簡単に手を差し伸べられる位置には居なかったんだと思い知らされます。
真行寺の、母の遺伝子を受け継ぎ抗えない自分への諦めにも似た吐露にはショックを受けるでしょう。
由利は変人ではありますが頭は良いですし言っていることは意外と常識的なところもあります。
彼は母と真行寺は別人だと訴えかけますが、いくら必死に心の底から思って声にしても真行寺の心を動かすことはできません。
こういう虚しさがやり場の無さに繋がっていき、片岡のところへ乗り込む際の気が狂ったような悲痛な叫びに乗り移っていったようにさえ思えます。
沈むを通り越して、その場で硬化して静止せざるを得ないような、どうしようもない辛さがありました。
気になったところと言えば、由利は勝訴を取ることをゲームのように思っており、故に真行寺から殴られましたが、その後話の展開としては独立した由利のエピソードとして変人の部分が出て来ませんでした。
由利は由利のスタイルを貫けばいいのではないかと思うので描写が必要だったとも思いませんが、生まれて初めて人を殴るほど真行寺は彼を嫌がっていたのに、彼のどこまでも赦し続ける深い愛に触れるうちに心底愛すようになるというのは少々不思議。というか、うやむやにされた気分。
痘痕も笑窪になったのかもしれませんし、真行寺は自分のことでいっぱいいっぱいで人の欠点になど目がいかなくなったのかもしれませんが、なんとなく丸めこまれたような気もしました。
個性の強い由利の姿が影に隠れるほどの真行寺の切迫した荒波のような心。比較によって新たな見方もできますが、別にこれが正しいとは思っていません。
エンディングだけでなく、どのシーンを思い出しても前後との繋がりを考えて無数の感じ方捉え方のできるお話です。
※ただし、以上は「ボーダー・ライン」のみを聴いた時の感想です。
片岡をメインにした時系列がもう少し後のお話「グレイ・ゾーン」を聴くと由利への理解も深まり全てにすとんと納得がいきます。力尽きたので感想は書きませんが、両方聴いて一個の作品です。
あとは、小杉さんが鳥海さんよりも若い役(26歳)というのは驚きましたが・・・まあ・・・そういうものなんだと思って聴けば問題ないでしょう。
最近、BLCDを聴いていてもどこか受動的だった気がしてきました。
その場その場で表されたキャラクターの表情だけを頭に入れていました。
しかし、今作は細かな特徴やキャラクターの性質を3枚に渡ってじっくり考える機会を与えられ続けました。その一例として由利について少し挙げてみましたが、これは大分わかりやすい部分だったことでしょう。
続けて何度も聴けるものではありませんが、抜かり無く作られているので、聴く度に以前得た物を思い出し、新たな発見もできるでしょう。
インターが倒産した今、入手方法はほとんどありませんが・・・どこかで再版してくれないかと願わずにはいられません。
きっと泣いてしまう方もいらっしゃることでしょう。
私のようなCD1枚に収まるBLを好む人間には勿体ない作品です。
以下独り言。
この頃のフリトでは、三木さんは「~をやらせていただきました」と紹介されていたんですよね。
一体いつから「~の声をやらせていただきました」と強調するようになったのでしょう。
(そういえば、ブクレでも顔を隠していませんでしたね・・・。)
こう紹介されるようになった経緯を御存じの方がいらっしゃったらぜひ教えてください!









