日影規制の話5:手計算で逆日影を行う方法 | 比嘉ブログ

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建築企画CAD「TP-PLANNER」開発者の日常・・建築基準法,天空率、日影規制講座などチャンプルーなブログ

2月14日快晴の東京。

 これは、昨日名古屋出張の新幹線の車窓からの一枚。最近のスマホの写真はすばらしい。のぞみから気軽のパチリでイイカンジの写真が撮れる。ピント合わせが早いのだが試しに大井川の鉄橋越しにシャッターを切ると鉄橋の鉄骨がきれいに撮れていた。目視はまず不可能だ。削除してお見せできないのが残念だが・・・カメラ機能には重宝している。

 本日土曜日は、朝から琉球舞踊の編集作業を行っていた。空手の型を琉球舞踊にのせて踊る素晴らしい舞をスマホなど多用途で携帯できる様に編集していた。比嘉が踊るわけではない・・念の為。沖縄系の仲間からの頼まれ毎だ。

 編集の合間、YOUTUBEを起動すると「あなたへのおすすめ」が最近眺めたシリーズから気になる音楽映像が限りなく表示され・・・とまらくなってしまった。

 話は一転して、この所、ちょっとブルーな事がある。趣味の関係で金属を長時間握る事が多い今日この頃だがどうやら金属アレルギーになった様で手の皮が突如はがれ出した。まだパッチテストは行ってないが握っているカ所だけがみごとにはがれた。・・・痛いんです。石鹸がしみるし困っている。

 だけど本日も手袋でにぎり続けるゾ。来週は医者いかなきゃ。

 今週は、日影の講座がクライマックスを迎える。早めに行いたい。その前に今週は
名古屋で不動産鑑定事務所の皆さんとの2回目の講座。

天空率の威力、そして日影規制可能空間の算出法を解説させて頂いた。
天空率施行以来、日影規制と天空率をバランスよく利用した土地評価が不動産鑑定士の皆さんにも求められる事は必然。今回は2回目で知った仲。楽しい時間を過ごさせて頂いた。皆さんお疲れ様でした。
 

 という事で日影規制講座を開始したい。


前回は影の時間のカウント方法を解説した。その結果

8時側では



5mライン、10mラインをいずれも5時間、3時間の影の線(等時間日影線の一部)が越えている。
16時側では





3時間線が10mを越えている事がわかった。

 今回は、このNG部をクリアーすべく、影の長さから可能建物高さと幅を算出する方法を解説してみたい。つまり手動で逆日影計算を行う手法だ。

 その前に影の計算式を「日影規制基礎講座」の比嘉作成のテキストを参照し解説したい。

まずは影の長さは下図とともに影の公式で表現される。

 

 

 

 

影の長さL=(h-受影面)×倍率で表現できる事がわかった。この計算式における不明な項目の解説から始める。今回受影面は4mゆえ

L=(H-4)×倍率となる。

 前回からの積み残しゆえ本題に入る前に受影面の話から始める。
なぜ4mだったり1.5mだったり6.5m(殆ど東京での利用)の受影面でチェックするかから始めたい。

 日常で目にする影は地面つまり受影面は0mの位置にある。上図の様にそれぞれの受影面でチェックする意図から確認したい。東京都の安全条令P304に「この1.5mは、通常の木造住宅の1階の窓の中央の高さ、4mは同2階の窓の中央の高さ、また6.5mは同3階の窓の中央の高さを想定して定めたものであり、対象区域の種別に応じそれぞれの位置における日照保護を図ろうとしているものである。」と分かり易く解説されている。

 立体的に4m受影面のイメージを図示すると

 地面に落ちる影の位置を上図の様に4mの位置に設定する事により計画建築物の高さもその分低く考えてよい事になる。その事により地面に投影される影の長は、受影面分影の長さも短くなり、規制ラインを越える率が低くなる。日影規制の緩和だ。その緩和により高い計画建築物を建てる事が可能になる。その結果、土地の有効活用がすすみ地主のみならず、税収等の国益にも寄与する事にもなる。

 では、土地の有効活用の為には、受影面4mの場合、1階の住人の日照を無視されるのか?というとさにあらず受影面1.5m、と4mの時刻日影図を比較すると

A側はいずれも日影時間が3時間で変わらない。一方16時側は、影の長さが約25mから約29mに長くなっている事がわかる。どうやら全く日照時間がなくなるわけではない様だ。

A地点から建物と太陽の軌跡を眺めると

太陽が建物の右側面からみえる時間が11時となり日影時間そして日照時間も同じとなる。


E側の場合はいずれも現況の日影時間の比較だが

いずれも建物の屋根部分から太陽が建物と重なり1.5m受影面では12:33分、4m受影面では13時で影の時間が長くなる。だがこの場合でも1階部(1.5m受影面)において日照がまったく無くなるわけではない。1階の住人もやや安心だ。

 さて影の長さの公式に戻る事にしたい。

L=(H-4)×倍率

受影面はOK、次は倍率とはなんぞや・・だ。
 

 倍率は上図ではL"で表現されているが任意の時間における、単位棒(1m)の影の長さの事。影の長さは太陽の位置で確定し、L"も太陽の位置で確定する。その太陽の位置は時間で確定する為、北緯、時間により定数として存在する。日影規制の申請図でも倍率表を添付する様にその行政の指定する北緯で確定する。

 東京北緯36度における倍率表は概ね下図の様に規定される。

今回NGとなる8時側3時間の11時、および16時側の13時の倍率はいずれも1.813倍となる。

11時と13時が同じ倍率になるのは真太陽を採用する為、12時中心に対象となる為。(真太陽時の事は前回解説した。)

 倍率もわかった
L=(H-4)×倍率

残りは影の長さLとカット幅だ。これら時刻日影図からCAD的に測定すれば良い

まず8時側は

11時の影の基点から10m規制ラインまでの距離は15.255m、NG幅は約9mである事がわかった。

 16時側の3時間の13時は

10mラインまでの距離は21.041m、NG幅は、約3.5mだ。

影の長さの公式

L=(H-4)×倍率

の全ての未知数がわかった。建物高さHを逆算だ。

8時側から

15.255m=(H-4)×1.813からHは 約12.144、階高を各階3mとすると、4階が可能でカット幅9m分を4階にすればおさまりそうだ。


16時側は
21.041m=(H-4)×1.813からHは 約15.6m、5階が可能でカット幅は3.5m分を5階にすればおさまりそうだ。

 早速、建物を切断し時刻日影を作図し検証してみよう

6階建て建物の妻側からそれぞれ4階、5階にカット。そして時刻日影でチェックすると

みごとに規制ラインいっぱいでクリアー。パーフェクトバンザイと言いたいところだが実は充分ではない。まだ道半ば可能空間はさらに広がる。さらに検証をすすめる。
L=(H-4)×倍率

で求まる建築物の可能高さは

この図で示す用に太陽高度による仰角以下に建物を計画する事で可能高さを逆算する手法だ。敷地の南側つまり規制ラインからLが長くなればなる程高い建物が建つ事を意味するが日影規制のかわし方はそれだけでない!。

 5/3,4/2.5、3/2時間とある様に影にして良い最短時間幅は、10mライン規制の3,2.5、2時間幅になる。

 10mライン規制の時間幅で建物をカットすれば5mライン規制時間幅はそれを超えない為同様に規制時間内におさまる。

 太陽高度で高さをカットする事以外に建物幅を狭くする事でも日影規制はクリアーする事が可能になる。

 今回、幅で確定するゾーンがあるのは8時側の建築物だ。再度建築物の高さを18m(6階相当)に戻し時刻日影図で確認する。 今回の時刻日影は原因特定をクリアーにする為に3時間を示す8時、11時、16時、13時の時刻線のみを表示すると

 

 8時側は11時の方位線がさらに東側に移動すべく建物幅をカットしたら高さは無視して良いゾーンがある。一方16時の時刻線の幅が広くその角度でカットすると殆ど道路向きの建物が極端に削られてしまう。8時側だけ11時の方位線を平行移動しカットする事にする。

カットされた上側はそのまま6階部が残りカットした下側は逆算した4階に設定される。
時刻日影図で確認すると

8時と11時による3時間をみる限りおさまっている様にみえる。等時間日影と合成すると

おや?8時枠を越えた部分でNGとなっている事がわかる。つまり8時以降の時刻線と3時間幅を構成する時刻線の交わりが3時間を超えたという事だ。めげずに確認検証を続ける

20分毎の時刻日影で確認すると、カットする幅が読めるかもしれない

どうやら8時20分の枠でNGの様だ。8時20分と3時間で交わる11時20分の線分を平行移動しでさらに建物をカットすると

くさび状にカットされる。結果は

規制ラインいっぱいにおさまっている事がわかる。ヤレヤレ・・・。


 この様に日影規制は基本的に影にして良い時間が指定されているだけに10mライン上の規制時間分は可能幅として存在する。その幅で全ての規制ライン上から建物幅カットを行うと日影規制におさまる幅を有する無限高の建物が可能になる。(もちろんその他の制限は無視しての話だが)。この部分を日影規制に関係ない高層巾と称する。

 今回は手動逆日影を一気に解説する為に長くなった。次回はTP-PLANNERによる逆日影の考え方を解説したい。低層、無限高を有する可能空間が効率的に算出される。

次回までお元気で!いよいよ花粉のシーズン到来だ。負けるな!hi

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