指定校推薦のデメリット ~来年の大学入試に向けて~ | これでも元私立高校教員

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30年以上の教員指導を通じて、未来を担う子供たち、また大人の思考などをテーマに書き綴っています。
日本史と小論文の塾を主宰し、小学生から大学生、院生、保護者の指導をしています。

指定校推薦のデメリットについて改めて、書いてみたい。
指定校推薦を利用する生徒・保護者になにか問題があるわけではないが、この制度ほど、教育的にマイナスのものはなく、しかもひどい制度とわかっていながら、拡大しているからだ。 それは、指定校推薦を実施している大学側だって、ホンネではわかっている。 しかし経営上、やめるわけにいかない。 今回は、この制度のデメリットを皆さんにお伝えしたい。

まずは大前提として、指定校推薦という制度があり、しかも合格の可能性がきわめて高く、入試も早期に終わるということであれば、それを生徒・保護者の方が選択するのは当たり前だ。
しかし、制度としては極めてデメリットの多いと言わざるを得ない

まず何よりも学力の問題が決定的である。
多くの指定校推薦は11月中には終了するが、それ以前の10月初旬には志望理由書を書いたり、面接の練習をしたりと受験勉強などはほったらかしになる。
つまり実質的な受験勉強は10月初旬には終了している。
もっと言えば、指定校推薦は1学期の評定で判断されるため、へたをすればまじめに勉強をするのは3年生の7月までだ。 その一方で、一般入試は2月に実施される。国公立の2次試験にいたっては2月の末であり、ざっと受験勉強で5か月の差ができる。 しかもその5か月とは、ラストの5か月であり、もっとも必死になる5か月だ。 さらには、入試が早く終わる指定校推薦組は、受験勉強に囚われずに様々な分野の学問に取り組めるという人もいるが、ほんの少数の例外を除き、多くの場合は、そんな大人が描く理想的な世界などにはならない。 多くは、「バイト」「車校」「遊び」などの3点セットとなる。 別にこの3点セットが悪いのではなく、その現実を無視して、タテマエに指定校推薦のメリットととするのがおかしいのである。

また、そこでつく学力差は決定的だ。
そこでの苦しみは自己のストレス耐性を高め、なにより合格を勝ち取った達成感も大きい(個人差では客観的に見て)。
さらには、5か月の差は、勉強した側が学力で引き離しだけではない。 受験勉強を終了した側の学力は維持できず低下していく。

また まだある。 多くの指定校推薦は、本人の学力より下のランクの学校にいくことになる。
少しわかりにくいが、例えば、難関大学の指定校推薦枠があるとしよう。一般的には、なぜ指定校推薦枠があるかといえば、同じ学校の先輩たちが、多くの合格を勝ち取り入学した実績があるからだ。しかし大学側は、そうした高校の中位に生徒が欲しいわけではない。その学校の最上位の生徒が欲しいのである。
つまり、もともと、その大学に合格できるレベルか、もしくはそれ以上の学力の生徒しか推薦資格を得ることができないのである。
結果として多少学力的に妥協して安全を取る・・・これが指定校推薦の多くのケースだ。
まだある。

補足
指定校推薦が、時に学力より上位の大学に行けることは承知している。自分が書きたかったのは、もっと学力の高い大学に進学できる能力を持った生徒が、この指定校推薦に惹かれて学力を低下させ、結果としてより低い大学を選ぶという意味である。
実際に、補習などで受験指導をしていて、MARCH、関関同立に行ける程度の日本史の偏差値であっても、偏差値50前後の大学の指定校推薦を選ぶ生徒も多い。
毎年のことだが、本当に残念なことである。
ただ、本人にとっては、11月には学力は地に落ちているため、あたかも学力より上位の学校に行けたという満足はあるかもしれない。

このような意図でしたが。言葉足らずでしたので補足いたします。

指定校推薦枠は、多くの場合、3年で見直しをされる。つまり3年間利用実績がなければ、特に難関大学の場合、推薦がなくなることが考えられる。 すると高校側の教員は、指定校推薦枠を埋めるために、生徒にその大学の指定校推薦を勧める。もちろん枠を埋めないと困るなどとはいわない。
しかし、勧められた方は悪い気はせず、結果として自分のレベルより下の学校に進学する。まさか自分が穴埋めに使われたとは思わないであろう。
これには、学校側の4大進学率を上げたいという思惑ももれなくついてくる。
また、多くの高校での「こんな指定校推薦枠がありますよ」的な宣伝は、当然ながら入学者全員に適応されない。結局は評定平均上位の生徒だけの特典である。
入学前の宣伝に踊ろされ、結局は成績上位の一部の生徒だけが対象だった、ということも普通だ。
さらにおまけだが、そういった戦略のために、多くの高校では意図的に評定を高くつけるといった操作も日常だ。
ここまで書けばお分かり頂けるだろうか。 何度も言うが指定校推薦を利用し大学に進学する生徒・保護者が悪いわけではない。なかには自分の学力以上の大学に進学できるケースだってある。

問題なのは、こんな制度を作り上げた社会の大人と、この制度自体を利用する学校だ。
評定平均を得るためだって努力はもちろんいるが、それを逆手にとって推薦枠の存在を生徒指導の脅しに使ったり、指定校推薦枠を埋めるためだけの進路指導をしたり、究極的には学力を伸ばすところから逃げるような指導に繋がる・・・そこが一番の問題だ。
指定校推薦に対し、冷静に考えていただきたい。
大学生活、さらには就職にも時には不利になることも知っていただいたうえで、さらには学校の意図もよくお考えになり、利用すべき制度である。 少なくとも、指定校推薦を得て合格し、そのあとも合格前と同様に、しっかり学習に取り組んだケースなど、を自分はある一例を除いて知らない。もちろん確率的には1%にも満たない。

学力の維持によほどの覚悟がない限り、この指定校推薦とは著しく自己の学力の低下を招くことを、これだけは絶対に知っておいていただきたい。

なお、このデメリットは一般的に考えてということであり、あるA君のケースといった話ではないことご理解ください。
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