「おみやげ」 | のんの日々

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 先日も紹介しましたが、鴻上尚史さんの『孤独と不安のレッスン』より。

16 つらくなったら、誰かに何かをあげる 
(中略)
 つらくてたまらなくなったり、不安でいてもたってもいられなくなったりしたら、誰かに何かをあげることを考えましょう。
 なんでもいいのです。
 物でもいいし、お話でもいいし、僕はそれを「おみやげ」と呼んでいます。
 笑顔でも、おみやげになります。
 誰に何をあげようと考えるだけで、あなたは不安にフォーカスすることを自然にやめることができます。
 そして、この方法の素敵なことは、「おみやげ」をあげる関係ですから、やがて、「おみやげ」の「お返し」がくる可能性があることです。
 もちろん、お返しを期待しているわけではありません。
 ただ、不安に苦しむ人は、みんな、「自分の世界」だけで苦しみがちです。
「自分の世界」にフォーカスを当てて、ずっと苦しむと、その世界は広がりません。
 結果、自分の不安だけを見つめ続けることになるのです。そして、不安は成長するのです。


 僕の知り合いで、自分が不安に押しつぶされそうになると、必ず、人を部屋に招いて食事をごちそうする女性がいます。
 食事を作ることで気がまぎれるし、相手は喜ぶし、そこから人間関係は広がるし、一石二鳥もの方法です。
 この方法を取る前、彼女は、不安に押しつぶされそうになると、一人、部屋でワインを飲みながらうんうんと泣いていたのだそうです。
 彼女はお酒が強い人ですから、酔えば酔うほど、不安を見つめ続け、苦しみは増えたと言います。
 こんなことをしていてはいけない、と彼女は自分で決意して、人を招くようになったのです。


 と言って、彼女が聡明だったのは、食事を作ったことです。
 不安でたまらないから、友達に電話をする人がいます。深夜、何度も電話する人ですが、その場合は、相手になんの「おみやげ」も渡していません。片方だけが頼りきっている関係なのです。
 それは、とても不自然な関係で、長続きする関係ではありません。
 彼女が料理が好きで、料理がうまかったから、人は彼女の部屋を訪ねたのです。彼女は不安を忘れさせてもらう代わりに、おいしい料理という「おみやげ」をあげたのです。

(中略)

 料理なんかうまくないし、という場合は、小さな小物を誰かにあげるだけでもいいし、道路のゴミをひろうだけでもいいのです。
 とにかく、自分にこだわることを減らすのです。
 不安は、自分にこだわればこだわるほど、大きくなるのです。
本