問題は、「200字論述新研究26(問題11・12)」で確認してください。

解説は、「200字論述新研究27(問題11を考える➊)」をご覧ください。

 

問題11 解説

 

寺院の果たす役割

 

本問では、寺請制度のもつ「内容と意図」を記すとともに、「寺請制度……のもとで寺院が果たすことになった役割」についての説明が求められている。

 

まず思いだしてほしいのは、中世的仏教に対して織田信長がとった政策である。

 

天下統一をめざした信長は、延暦寺の焼打ちや、前後11年にわたった石山戦争に代表される一向一揆勢力との対決にみられるように、信長の支配にしたがわない仏教勢力を徹底的に弾圧した

 

こうした過程を経て、時代を動かす力をもっていた中世社会における仏教の多くは、その旺盛な生命力を減退させ、近世になると大多数の寺院には統一権力の支配がおよびやすい環境が生じることになった。

 

したがって、江戸幕府の整えた寺請制度とは、禁教の徹底・実現のために、権力による利用・統制が容易な寺院と、その地域の民衆とを結びつけるシステムだったということになる。

 

受験の際には、寺請制度のもとで寺院が有していた性格・役割として、以下の点を確認しておけばよいだろう。

 

寺院の性格・役割

 江戸時代の寺院は、個人の信仰の場ではなく、おもに家の葬儀・法要を営む場として機能した。

 

 布施を確実に確保できる寺請制度の制度化は寺院経営の安定を生みだすものであったため、各寺院は寺請制度の維持・強化に積極的な姿勢をみせた。

 

 宗門改帳の定期的作成や寺請証文の発給は、キリシタン根絶を名目とした民衆統制・宗教統制という性格をもち、同時に領民を把握して身分制を永続的なものにする戸籍制度の成立を意味していた。

 

 宗門改帳作成による寺請制度の制度化によって、寺院は、幕藩領主による民衆支配の末端機関と化した。

 

問題11 解答

寺請制度とは、特定の寺院が近在の民衆を檀家として宗門改帳に登録してキリシタン・日蓮宗不受不施派ではないことを証明する制度をいい、寺請制度を維持・強化することで幕藩領主は禁教政策の徹底を図った。こうして寺請証文発行の原簿となった宗門改帳は戸籍的な性格を強めることで身分制の永続を支える役割を果たし,同時に寺院は個人の信仰の場ではなく主に葬儀・法要を営む場として幕藩領主による民衆支配の末端機関と化した。

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