前置きのストーリーがあります!まだ読んでない人は、どうぞ♪

■スピンオフ前置き■もーやめてー!元遍路の友人が元遍路の私に押し付ける絶対に要らない物!

■遍路スピンオフ■Noisyの影響を受けて遍路に行こうとしているグローバルな二人1/5

 

 

■Noisyの連続3周自転車野宿遍路スピンオフ■
※登場人物名は全て仮名です。全5話

 

― Noisyの影響を受けて遍路へ行ってしまった人達のドラマ―

 

ここは、宿だ。

マイケルがチャックアウトしても、またすぐ次から次へと色んなお客さんがやって来る。

慌ただしくチェックインを対応していると、山形県出身のまるで高校生にでも見える22歳の青年がチェックインした。

純粋そうで目の可愛らしい、真面目そうな男の子だ。

とは言え、こちらは大勢を相手にしているので、特に印象の薄い人は、一々覚えてはいられない。

その晩も、いつものようにシェア飯として、宿のお客さんに私がご飯を作って、皆で宴会が始まる。

 

私「さあ!皆、食べて!」

 

お客さんが席に着き、いつものようにガヤガヤと楽しい宴会が始まるのかと思っていたら、何やら何時もと違って静かだ。

今日のお客さんは日本人が多く、外国人がほとんどいなかったので、周囲に気を使い合って出会いの壁があり過ぎる日本人ばかりだと言う事に気が付いた。

折角、皆が楽しくなるようにと思って作ったご飯も無駄になってしまうではないか!

私は、即座にビール片手にに乗り込んでいく。

 

私「おいおいおい!皆!葬式じゃあるまいし!乾杯乾杯!」

皆「ははは!」

 

そして、その22歳の青年が一言口を挟む。

 

青年「確かに。きょうび、お葬式でもこんなに暗くないですよ。ワイワイと飲んでますね。」

皆「ははは!乾杯!」

 

日本人のお客さんは、必ずと言っていい程、最初の壁をぶち破る所から始めなくてはいけないので、時々、子供の世話をしている気分になる。ただ、その壁さえ最初に取り除いてあげれば、大丈夫だ。

やっぱり、挨拶上手の欧米人とは、違う所だ。

 

私「私、Noisyだけど、あなたは?」

青年「あ、僕、りょうです。」

私「りょうちゃんは、なんでここに来たの?」

りょう「僕は、日本を今、ちょっと旅してて、あちこち行ってみようと思う所に数日ずつ行ってます。」

私「ふーん。期間は?」

りょう「全部で1年くらいかな。あと数か月で終わろうと思ってますけど。」

私「そうなんだね。これまでは何処に行ったの?」

りょう「沖縄とか、東京とか、広島は、一応2~3日いようかなと思って来てみました。」

私「そうなんだね!この後は、どっち方面行くの?」

りょう「う~ん。一応、四国の松山辺りに行ってみようかと思ってます。」

私「じゃあ、遍路したら?」

りょう「遍路?」

私「そう。歩きで。」

りょう「面白そうですね!」

 

りょうちゃんに、私のお遍路の話をあれこれと聞かせると、興味を持ったようだった。

当然、遍路で出会ったせっちゃんや、沢村さんの話なども聞かせる。

りょうちゃんは、そのせいか、2~3日の宿泊のはずが、しばらくずっと泊まっていることになる。

しばらく泊まっているので、他のお客さんを引き連れて、一緒に温泉へ行ったり、お酒を飲んだり、楽しい日々を送る中で、気が付いたことは、普通は一人日本人がポツンと外国人のお客さんに紛れて夕食になった場合、モジモジしている人が多いのだが、りょうちゃんは、ペラペラではないにせよ、英語で上手にコミュニケーションを取り、日本人とも外国人ともバランスよく遊んでいるようだ。

ただ、彼は邪魔にならない人と言った印象なので存在感があまりないと言えば、ない。

 

私は、宿でお客さんの相手をすることに忙しくしていると、きょうちゃんから電話があった。

 

きょうちゃん「あのさあ、私、思ったんだけどさあ、今、派遣で働いてて、冬休みとか春休みとかが長いんだよね。」

私「うん。」

きょうちゃん「それで、来年の春に遍路に行くって言ってたけど、通し打ちにこだわらなければ、別に私、休みを利用して区切りで行けるじゃん!って思ったんだよ!」

私「確かにね!」

きょうちゃん「だから、私、次の休みでもう行くから!」

 

やはり、行動力が半端ないきょうちゃんだ。

 

私「そう。それじゃあ、経本用意したら電話してよ!」

きょうちゃん「わかった!そのお願いをしたかったから電話したんだよね!」

 

そうか。

もうすぐ、きょうちゃんも歩き遍路の区切り打ちに出発か!

 

それにしても、山形出身のりょうちゃんは、いつ出発するのだろう?

かれこれこの宿に来てから1か月になる。

 

私「りょうちゃん、私、ちょっと買い物へ行かなきゃいけなくて、ホームセンター行くけど、行く?」

りょうちゃん「あ!僕も行きます!」

 

りょうちゃんは、嬉しそうにいつものように私について来る。

ただ、私は、少し心配になっていた。売り上げを考えれば、この青年に1日でも長く泊まっていてもらう方がいいのだが、彼の人生にとって、それでいいのだろうか?

 

私「ねえ、りょうちゃん。あんた、いつ帰るの?そろそろ出発しないといつまでもこんなとこにいても何にもならないよ?」

 

りょうちゃんは、しばらく口を固く結んで黙り込んでしまった。

 

私「あのねえ、お客さんだからあまり強い事は言えないと思ってたけど、あなたの事を考えるとここにずっといても仕方ないでしょ!早く、山形にでも帰って仕事でもみつけなよ!」

 

りょうちゃんは、辛そうな顔になりながら、重たい口を開く。

 

りょうちゃん「そうですよね。確かに。いつまでも旅をしているわけにはいかないですから。」

私「そうだよ。旅をするにしても、そろそろ次のポイントへ移動して、あれこれ見たら、とっとと山形へ帰りなよ!」

りょうちゃん「はい・・・。」

 

りょうちゃんは、この日、宿に帰って一人、こっそり泣いたようだ。

いや、実は私にはなんとなくわかっていたのだ。りょうちゃんの滞在が1日ずつ伸びているのは、私と少しでも長い間、居たいのではないのかと。

私は、38歳になっていて、22歳の火遊びに付き合っている暇は何処にもないと思っていたので、残念で可哀想だが、何処かで突き放さなければ、彼の中では泥沼だろうと察しての事だ。

ましてや、りょうちゃんは、とても純粋でいい子なのだが、私のタイプとは程遠かった。

 

私は、宿へ仕事に向かう前に自宅にいると、きょうちゃんから着信があった事に気が付かなかったようだ。

すぐに折り返すと、興奮した声できょうちゃんが言う。

 

きょうちゃん「Noisy!私、もう来ちゃったんだけどさ~!今、4番へ向かってるところなんだよね。Noisyは、出発前にお経を教えてあげるから電話しろって言ってたけど、なんかネットで1番の霊山寺で経本ももらえるしお経の読み方教えてくれるって書いてあったからさ、もう来たんだけどね。1番行って、すいません、経本下さいって行ったらくれたんだけど、それだけで教えてはくれなかったんだよ。

そしたら、お堂でいざ読もうと思ったら当然だけど全然できなくてさ~。なんか悔しくて涙出てきちゃってさ。さっきまで泣いてたんだよ。

2番に行ったって、同じじゃん。読めないのは。だから、ごめん!教えてもらっていい?」

 

 

なんと!電話があった時には既に四国で3番から4番へ向かうところだったのです…。

 

私「だから、言ったじゃん!教えてあげるって!とにかく、今教えてあげるから、経本出して!」

きょうちゃん「わかった!ありがとう!でも、ちょっと待って!荷物が重すぎるから、荷物おいて経本出したら、かけなおすから!」

 

しばらくすると、きょうちゃんから電話が鳴る。

 

私「じゃあ、大体こんな流れでやればいいと思うから、書きとって!○○を1編。○○を3編。○○を1編。・・・・・・・って流れだよ!」

きょうちゃん「今、書いたからさ!」

私「じゃあ、般若心経から行くよ!」

きょうちゃん「オッケー!」

私「ぶっせ(仏説)」

 

ツーツーツーツーツーツーツーツー・・・・・

 

なんと、きょうちゃんの電話の充電切れで、私がきょうちゃんにお経の読み方を教えてあげられることは2度となかった。

そして、きょうちゃんは、この後、無事に区切りでお遍路を結願している。

 

つづく・・・   

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