■3章:遍路3周目■深まる絆

             3. 一難去ってまた一難

 

DAY 78-2

 

お風呂から出てくると、沢村さんが待っていた。

 

沢村さん「Noisy、大分寒くなって来とるきん、インスタントのうどんをもっとるから、あれ食べる?」

私「え?それ沢村さんのでしょ?」

沢村さん「ええよ。作ってあげるきん。」

私「そうなの?でも、沢村さんのがなくなるから、私、パンとか持ってるから、あれ食べるよ。」

沢村さん「でも、温かいもんの方がいいきん!」

私「うん。じゃあ、作って!」

 

きっと、お風呂代を出したことへのせめてものお返しなのかもしれない。

私達は、神山温泉裏のパーキングへと戻り、沢村さんがインスタントのうどんを作ってくれた。

当然、いつ何時も沢村ラジオは鳴り続け、時々、目を閉じながら話に夢中になっている。

 

私「ちょっとー!沢村さん!ちゃんと、うどん、見てる!?」

沢村さん「見とるよー!」

 

そう言って、ふと目を開ける。

 

私「沢村さん用のうどんは、喋り過ぎで失敗してもいいけど、私のは失敗しないでよ!」

沢村さん「ははは!わかっとるきん!でも、Noisy。こんなインスタントのうどんを作るのなんか、なんちゃあないよ。目をつむっとってもできるんやきん!」

 

私は、沢村さんが作ってくれたうどんを鍋ごともらった。

 

私「沢村さんは?」

沢村さん「え?鍋が一つしかないきん、Noisyが食べ終わったら作るよ。」

私「え?じゃあ、皿とかないの?」

沢村さん「ないよ。」

私「え?歩き遍路じゃなくて、沢村さん、お節介軽トラなのに、この鍋1つだけ?」

沢村さん「家に忘れてきたんですよ。」

 

ずっと私に付きまとってウロウロしていた事を思うと、家に忘れてきたとは、一体、いつの事なのかと不思議に思いつつ、懐かしいやり取りを沢村さんとしながら夜は更けて行った。

久しぶりに沢村さんが張ってくれた5人用テントに手足を伸ばして寝る。

 

DAY79-1

 

翌朝、神山温泉裏のパーキングで目覚めてみると、生憎の雨だった。

しかも、かなり強く降っている。

これまで暑かった真夏なら、むしろ濡れながら、少しだけ快適に走れていたのだが、既に11月6日だ。

流石に雨に濡れれば、いくら自転車を漕いで体温が上がり、暑がりの私だとは言え、徳島県の山の中の気温は低い。

するとすかさず、沢村さんが入り込んでくる。

 

沢村さん「どうするん?Noisy、すっごい雨が降っとるよ?」

私「うん。そうなんだよねえ。雨の日は、別に先へ進まなくていいやとは思ってるんだけど、ただ、あんまり先延ばしにしていると、25日の高ちゃんの49日に間に合わなくなるといけないし・・・。」

沢村さん「あ、そしたら、今日は連れて行ってあげるよ。」

 

え!?

この人は!!

3周目も付いて来ようとしているのだろうか!?

あんなに3周目は付いて来てはいけないと言ったのに。

 

私「え?沢村さん!まさか、ずっと付いて来る気じゃないでしょうねえ!?」

沢村さん「いや!それは、着いて行かんきん!」

 

どうやら、本音は付いて来たそうなのだけど、私が怖いのか、ずっと付いて来てはいけない事はわかっているようだ。

 

私「ほんとに?」

沢村さん「ずっとは、着いて行かんけど、すっごい雨が降っとるし、どうするん?ここでじっとしとっても、49日に間に合わんことになるよ?」

私「うん。確かにね。ここにいても仕方ないし、土砂降りの中を自転車で走りたい訳でもないし。」

 

沢村さんは、嬉しそうに答える。

 

沢村さん「そしたら、軽トラで行ったらいいわなあ!」

私「そうね。じゃあ、今日は、軽トラで行くよ。」

 

沢村さんは、そうこなくっちゃと言った様子で、あっという間に軽トラに自転車と荷物を乗せた。

8時45分に沢村タクシーで神山温泉裏のパーキングを出発し、次の13番大日寺へ向かう。

沢村さんは、相変わらず、直ぐに鳴り止まない壊れた混線ラジオ放送を始める。

 

久しぶりに沢村さんとの旅も懐かしく、楽しいのだけど・・・。

それにしても・・・。

この人は、本当に付いてこないのだろうか?

確か、2周目の時もこの辺りで、ずっと私を探し続け、追いかけて来ていたけど・・・。

まさか、また沢村さんと主従関係な旅の再来か!?

 

 

きっと、沢村さんも付いて来たいことに変わりはないのだろうけど、あれだけきつく言われているので、わかってもいるようだし大丈夫だろうと思いつつ、目を光らせておかなければと気も引き締まる。

 

13番大日寺から順に、14番常楽寺、15番国分寺、16番観音寺と雨の中を打って行く。

観音寺を打ったところで沢村さんに指示を出す。

 

私「あ、ちょっと栄タクシーへ寄って!」

沢村さん「ええよ。でも、なんで?」

私「前、社長と一緒に撮った写真をあげるからって約束してあるから。」

 

沢村さんは、栄タクシーへと入って行った。

私は、沢村さんを待たせて社長の所へ行く。

 

私「社長!写真、持ってきたよ!」

社長「おお!あんたかいな!ありがとう!懐かしい写真やなあ!」

私「じゃあ、今日は行きます!」

社長「え?今日は、泊まって行かんのかいな?」

私「うん。時間もまだ早いし、今日は雨が降ってるけど、車のお接待を受けてるから、今度、遍路終わったら阿波踊りの時に泊まりにくるから!!」

社長「なんや。今日も楽しくなるなあ思ったのに。そしたらお遍路中に会うのはこれが最後か?」

私「そんな感じになると思います!でも、また来るんで!」

社長「なんか、寂しいなあ。まあ、そしたらまた来てや!」

私「ありがとう!また来まーっす!」

 

この後も社長さんは、ちょくちょく電話をくれた。

遍路をしている時には、「あんた、まだ四国におるの?あんたの住所は四国かいなあ!」と言ったり、遍路後、長野や東北をうろついていると、「あんたの住所は、四国やないなあ!日本やないかあ。」などと冗談を言って。

待っていた沢村タクシーに乗り込み、17番井戸寺を打つと、調度お昼時だった。

 

私「沢村さん、そこにラーメン、いっすんぼうしってのがあるから入って!」

沢村さん「僕は待っとくよ。」

私「いや。沢村さん、今日のお礼に一緒に食べよう!」

 

沢村さんと一緒にラーメン屋に入り、ラーメンを食べる。

食べ終わって18番恩山寺へ向かう道中も、相変わらずの沢村さんは、大混線ラジオ放送を始める。

 

沢村ラジオ「いや、それでね。僕の兄貴が大阪におるんですよ。それでね、僕はわかっとるんやけど、僕の事をね家族におらんことにしとるんですよ。で、なんちゃらかんちゃら、ピーチクパーチク。」

 

沢村ラジオには当然、相槌を打っていないのだけど、聞いてもいない話が延々と、沢村ラジオの口スピーカーから流れて来る。

すると電話がなったので、沢村さんを制止する。

 

私「ちょっと!沢村さん!電話!黙ってて!」

沢村さん「あー。はいはい!」

 

私「あ、せっちゃん!」

せっちゃん「あんなあ、今、広島へ向かってるとこやねん!」

 

せっちゃんの声は興奮している。

長野を出発して、私の家へ一旦、車を止めに行っているのだろう。

するとすかさず、沢村さんが割り込んでくる。

 

沢村さん「え!?せっちゃん!?」

 

沢村さんの事は気にせず、私は話を続ける。

 

私「あ!出発したんだ!」

せっちゃん「そやねん!だから、今日中には着くはずやから、Noisyの家に車を置かせてもらうで!」

私「うん。わかった!」

 

また沢村さんがどうでもいい事で入り込んでくる。

 

沢村さん「あー。せっちゃんもなあ!あの人も豪快なんですよ。それでね、なんちゃらかんちゃら、ピーチクパーチク。」

私「ちょっとー!沢村さん、うるっさいって!」

沢村さん「ああ、ごめんごめん!」

 

せっちゃん「ん?どないしたん?沢村さん、またおるん?」

私「うん。でも、この辺だけだと思うから。」

せっちゃん「ほんま、沢村さん。どないなってんの?ははは!それでなあ、明日には、自転車で四国に向かえると思うから。」

私「そうか!いよいよ、別格とお不動さん巡りが始まるんだね!」

せっちゃん「そやねん。だから、今回は、松山から始めようと思ってるから。」

私「そっかあ。それじゃあ、今、恩山寺へ向かってるとこだけど、多分、遍路の終わりごろには、何処かで合流出来そうだね!」

せっちゃん「そやな!何処かで合流しようや!」

私「わかった!それじゃあ、気を付けて!」

せっちゃん「ほな。」

 

私は電話を切って、沢村さんに釘を刺す。

 

私「ちょっとー!黙っとけって言ったでしょー!」

沢村さん「ひゃ~~!怖い怖い!ごめんごめん!」

 

もー。

沢村さんは、相変わらずだ。

 

つづく・・・   

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