■3章:遍路3周目■深まる絆

                           2. 嵐はやってくる​

 

DAY75-2

 

歩き遍路の男の子と私は、博士の車に乗り込み、おか泉へ行くと、既に行列ができていた。

時間は、まだ12時を回っていなかったので、長蛇の列になってしまう前に列に並んだものの、ここは一般店なので回転が遅く、3人で立ち話をしながら40分程待つと、ようやく順番がやって来た。

中へ入り、私は、このお店の売りである『ひや天おろしぶっかけ』を注文した。

回転の速いセルフのうどん屋さんとは違って、1品1品作り上げてから提供されるので、時間もかかる。

 

ようやくひや天おろしぶっかけがやって来た!

きゃ~~~!!

見た目にも美味しそうだ!

これまであちこち、香川でうどんを食べて、美味しかったけど、ここのうどんは、既に見た時からその美味しさが伝わって来る。サックサクにあがっている天ぷら。ツルツルでピカピカに光っているそのうどん。

 

一口うどんを口へ入れる。

うわ~~~!!

ツルツル、モチモチで程よい弾力とコシ。

口の粘膜に張り付くようなモチモチ感でありながら、つるんと滑るツルツルとした食感がたまらない。

讃岐うどんがあまりにも太くてネチネチか、腰が強すぎて顎が痛い太麺よりも、微妙に細めの讃岐うどんの方が好きだ。

ここのうどん麺の太さは、私にとって完璧だった。

天ぷらをかじる。

 

サクッ!

うおおおお!!

あのセルフに置いてある冷めた天ぷらでも、チェーン店の揚げたてだけど、何故か普通の天ぷらとは違う。

料亭で出されるような、繊細な食感。

美味い!!

 

そして、なんとなく何処かもの足りないと感じてしまいがちな讃岐の出汁なはずが・・・なんと!これは、美味しい!

麺を最後まで飽きないで食べられる味だ。

 

私の中で、とうとう、満点が付いた。

 

私「博士!私、ここのうどんが、今の所、一番好き!」

男の子「いや~~~!!なにこれ~~~!?美味すぎる~~~!!ひゃああ~~!!」

博士「Noisyは、これ系のうどんが好きなんや。そしたら他にもあるから、また連れて行ってあげるよ。」

私「え!そうなの?」

博士「うん。もっと安くて、同じタイプのあるよ。」

私「こう、麺が・・・。」

博士「麺がツルツル、モチモチしとって、ちょっとだけ細目やろ?」

私「そうそう!流石博士!あと、出汁も天ぷらも美味しい!ここのは。」

博士「うん。他にも、出汁もここのようなのがある。」

私「じゃあ、今度連れて行ってね!」

 

40分、列に並んだ甲斐があった。

いつも有名店に並んでまで食べて、結局、甲斐があったとまで思ったことがほとんどなかった。

 

私「この店は、ほんと、並ぶ価値あるね!並んだけど、次も並んででも食べたいもん!」

博士「Noisyが、お昼ご飯に食べたいって言ったから、この時間に来たけど、食事時じゃなかったら並ばんのや。」

私「えーーーー!!博士―――!!それを先に言ってよーーー!!」

博士「ははは!!」

私「じゃあ、今度は、食事時以外に来よう!」

博士「うん。」

 

大満足の私達は、ホームセンターへ寄り、天満屋でソフトクリームを食べてまったりとした時間を過ごしマントラへと戻って来ると、博士は、知らない人と長時間いて疲れたのか直ぐに帰って行った。

時間は、まだ3時。

午前中に降っていた雨も上がり、遍路小屋を出たり入ったりしていると、西川さんが例の1輪車を上手に押してマントラへ入って来るところだった。

 

私「あ!西川さん!それの事!?」

西川さん「そう!これや!」

 

顔のしわをくちゃくちゃにして、可愛らしい笑顔でニコニコしている。

 

私「西川さん、上手に押してるねえ!私、ちょっと押してみていい?」

西川さん「いいよー!」

 

私は、一輪車なのに押すところが1本しかないので注意して持ち上げたのだけど、左右のバランスがとりにくく、直ぐに倒しそうになってしまった。

 

私「ちょっとー!西川さん!これ、押すどころじゃないじゃん!バランスとるのが大変なんだけどー!」

西川さん「ははは!」

 

また、この小さな可愛らしいおじさんは、顔をくちゃくちゃにして、笑っている。

 

私「いやー!西川さん、凄いねー!」

 

そんなやり取りをしていると、1台のアメリカンバイクの旅人のお兄ちゃんが入って来た。

 

私「あ、今日、泊まるの?」

バイク「いや、僕、お遍路まがいのバイクなんで、泊まりはしないです。」

私「私もバイクに乗ってたよ!アメリカンも持ってたからそれで旅してたよ!」

バイク「そうなんですねえ!いやあ、お遍路休憩所って書いてあったので、ちょっと寄ってみました。」

私「ねえ、お遍路まがいって何?」

バイク「僕、東京から来てるんですけど、沖縄を目指して南下してるんですよ。無期限で。」

私「へ~。じゃあ、遍路じゃないじゃん。旅人じゃん。」

バイク「そうなんですけど、南下して、四国に入って、佐多岬から船に乗って九州へ向かうつもりで四国へ来てみたら、色んなお遍路さんたちに会って、楽しそうだなと思って。だから、僕も、途中からなんとなく回り始めた感じになってて。」

私「じゃあ、お遍路さんじゃん。」

バイク「いや。それが、まだ1周お遍路を全部行くか迷ってて。なんとなく通りかかったお寺へ寄っている程度の中途半端なお遍路まがいですね。まだ。」

私「ははは!!なるほどねー。私は、自転車で回ってるよ!調度2周目終わって、これから3周目に行こうとしてるとこだけどね!」

バイク「なんと!3周めに!?」

私「そうよ!そしたら、何処かでまた会うかもねって言いたいところだけど、バイクは早いからなー!私も乗ってたからわかるもんね。」

バイク「いや、僕の旅の速度は、かな~り遅いですよ。歩いてる人と同じくらいかな?」

私「はははは!!それにしても、その荷物。引っ越し?」

 

道具箱のように頑丈な深緑色のケースが後ろに積み上げられていた。

 

 

バイク「はい。引っ越しみたいなものです。」

私「え?冗談だったのに!」

バイク「まあ、そんな感じです。無期限で行き先のない引っ越しです。一応、沖縄まで南下ってのだけ決めてて。」

 

何か、深い事情でもあるのか、ただ単にただの旅好きかわからなかったので、それ以上深くは突っ込まなかった。

 

バイク「それじゃあ、僕はそろそろ行きます!また、何処かで会ったら!」

私「うん。また会ったらね!」

 

バイクのお兄ちゃんは、颯爽と出て行った。

この時は、この先、このバイクの青年と新たなドラマが生まれるとも知らず、彼を見送った。

 

私は、暇だったので歩き遍路の男の子とコンビニへ夕飯を一緒に買いに行き、遍路小屋で和気あいあいと食べていると、ゴンちゃんがやって来た。

 

ゴンちゃん「ちょっと。」

 

そう言って、私をその男の子には話し声の聞こえない位置へと呼ぶ。

心の中で警戒しながら行く。

 

私「何?」

ゴンちゃん「後で、今日、飲もな?」

私「うん。どこで?」

ゴンちゃん「そしたら俺の部屋へ来るか?」

 

つづく・・・   

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