■3章:遍路3周目■深まる絆
1. 2周目結願
DAY72-2
とうとう琴弾公園が見えてきた!
よっしゃーーーーーー!!
思わず、ガッツポーズだ!
ただ、日暮れが近いので、このまま真っすぐ琴弾回廊へ向かいお風呂と食事を済ませて来ることにした。
前、翔ちゃんや須田ちゃん達と公園に泊まって、琴弾回廊へ行った時、自転車を押して公園へ戻った時のように、後で寝る直前に寝るためだけに公園へ行くことにしたのだ。
今日は、8ケ寺お参りをしているので、それに時間をとられてはいるものの、なんとか日暮れまでに110キロを走り切った。
流石に身体が、もうここまでにしておけと言っている。
一日中、お寺を巡りながら走り切った達成感は半端ない。
折角、琴弾回廊へ来たので、その疲れた筋肉を湯船でほぐし、一日かいた汗をしっかりと流し、お風呂で至福の時を過ごす。
いつもなら、割と体をサッサと洗い、湯船で烏の行水をしたらお風呂を出るのだが、今日は、公園で他にすることもないし、ここでゆっくりすることにして、野天風呂へと出てみると、海に夕日が沈んでいく所だった。
普段、私は、人も多くて塩素臭の強い、スーパー銭湯や大きな施設のお風呂があまり好きではなく、どちらかと言うと人の来ない温泉宿の日帰り入浴の方が好きなのだが、ここの琴弾回廊の雰囲気は中々いい。
沈みゆく夕日を感じながら、野天風呂につかる。
ふ~~~~。
いや~~~、走ったわ~~~。
やっぱり、ただお風呂に入りに来るのと、一日、身体を動かして汗を流すのとでは、雲泥の差があるよね。
はあ~~。
気持ちいい・・・。
私は、野天風呂の湯に溶け込んでしまいそうな程、心も体もとろける。
一日中走り切った後の達成感に満たされたひと時だ。
そんな幸せな時間を過ごした私は、お風呂を出て、琴弾回廊の中にある食事処で夕飯を食べに行く。
翔ちゃんや須田ちゃんとここで飲んだなと懐かしく思いながら、釜揚げ天ぷらうどんを注文した。
食べていると、温まった身体と一日の体の心地よい疲れで、眠気さえ襲ってくる。
私は、ゴンちゃんに連絡を入れておいた。
私「ゴンちゃん、私だけど。」
ゴンちゃん「おお!皆、待ってんねん!そろそろ来る頃やろう言うて。」
私「うん。明日のお昼頃に到着できると思うよ。」
ゴンちゃん「そうかあ!わかった!そしたら、社長と奥さんにもそう伝えておくから。明日、待ってるで!」
私「うん。わかった!明日ね!」
私は、寝る時間までそこでゆっくりして、琴弾公園へと行き、あっという間にテントを張って寝た。
ああ。
いよいよ、明日はマントラだ!
DAY73-1
琴弾公園のテントの中で目覚めた私は、片付けをゆっくりとして散歩をすることにした。
ここからマントラまで、68番~70番、74番~76番の6ケ寺あるものの平坦地にある寺ばかりで、全部で30キロくらいしかないから、今日は余裕でマントラに到着できる。
公園の向こうに瀬戸内海も見える。
私は公園内を海に向かって散歩していると、散歩に来ていたおじさんと挨拶がてら、他愛もない話をしたりしてしばらくブラブラと時間を過ごした。
10時だ。
さあ、そろそろ行くか!
公園の直ぐ近くにある68番神恵院・69番観音寺へとお参りに行く。
ここのお寺もいい加減、変わっている。
建物もコンクリートでできているし、2ケ寺が同じ場所にあるのだから。
お参りを済ませて寺の外に止めていた自転車まで戻り、自転車のそばに腰を掛け、次の70番本山寺への道を確認していると、ふとお参りに来た人が通りかかったので顔を上げた。
するとその人と目があった瞬間、その女性が叫んだ!
女性「えーーーーー!!!あなたーーーーー!!」
昨日、愛媛県の今治辺りで会った、熊本から来ている車遍路の夫婦だ。
私「あ!おはおうございます!」
奥さん「おはようございます!って、あなた!!えーーーーー!!???なんでここにいるの?」
奥さんが驚いて大きな声を出した瞬間、近くを歩いていた旦那さんが振り向いて、明らかに顔が、ギョッとして驚いた様子だった。
私「え?何でって、いや、私もここまで来たので。」
奥さん「えーーーー!?自転車で、ずっと?」
私「はい。」
流石に私のペースが速すぎて驚いている旦那さんは、思わず私に話しかけたそうなそぶりは見せたものの、やはりそのままプイッと先に行ってしまった。
ただあまりにも驚いている奥さんは、どうしても話さずにはいられないようで、興奮したまま話を続ける。
奥さん「でも、昨日会ったのは、愛媛県よ!?しかも、すっごく離れてるし、私達だって車で回ってても、ようやくここまでこれたと言うのに、自転車で来れないでしょ!?」
私「いや、私は、途中、山のお寺を打ってあったので、基本、真っすぐに走って来ただけですから。」
奥さん「いやいやいや!!それにしても、仮にお寺に寄らないで真っすぐ走って来ただけだとしても、ここは、昨日の所からは遠いわよ!?信じられないんだけど!」
確かにそれは、驚くだろう。
昨日の今治辺りからお寺を全部打ってここまで来ていたら、距離的には200キロくらいはあるのだし、山の上のお寺もあるのだ。車で回っているのに、そんな離れた所で翌朝、自転車の人に会うのだから、驚くに違いなかった。
奥さん「へーーーー!!凄いわねえ!びっくりしたわあ!ははは!」
私「ははは!!意外に自転車は早いんですよ!」
流石にとっくの昔に寺へと行ってしまった旦那さんの事が気になるのか、私に別れを告げ、境内へと小走りに走り去った。
それにしても、あの旦那さん・・・。
確かに一瞬、あまりに驚いて、思わず話しかけそうになったのだ。
何故、話さないで行ってしまったのか・・・。
心の病でも抱えているからお遍路を回っているのなら仕方ないにしても、心の病さえ治せるのは自分自身しかいないのにとも思う。仮にそうでないとするなら、ただただなんと狭い世界を生きているのかと、私の反面教師として見届けただけだった。
私は、立ち上がって次の70番本山寺へ向けて自転車を漕ぎだし、淡々と走らせて本山寺でのお参りを済ませる。
71番~73番までのお寺は、既に打っている。三角寺や雲辺寺と言った山の上へ寄らなくてもいいので、そのまま平坦地を走り、74番甲山寺、75番善通寺、76番金倉寺へと順番に淡々と寺を打って行く。
最後76番金倉寺を打った地点で、2周目の88ヶ所も別格20ヶ所も全て打ち終わった。
これで2周目は、終わった。
ルートも運命も乱れに乱れた2周目。
感動で涙が出ると言うよりも、むしろ、やっと終わったと言う安堵感でしかなかった。
1周目で悔しい思いをした気持ちを晴らすために、そのまま出発した2周目のはずが、全く違う流れになり、ようやくそもそもの目的の悔しさを晴らす3周目に行けるのかとも感じた。
はあ~~~。
やっと、終わった~!
マントラで少し充電したら、いよいよ走り切る3周目だ!
直ぐに自転車に乗り、2周目を打ち終え結願した私は、マントラへと自転車を乗り入れた。
時間は、お昼過ぎの1時。
休憩に立ち寄るお遍路さんがいるとしても、新しく泊まりに来るお遍路さん達の時間には、まだ早い。
何日か泊まっているお遍路さん達が少しだけ残っている時間帯だ。
自転車を止め、私はとりあえず、社長と奥さんに挨拶をしに事務所の方へと歩いて行った。
事務所へ入ると、社長に奥さん、ゴンちゃんに従業員がいたので挨拶をする。
私「Noisyです!今日もお世話になります!」
皆、一斉に顔を上げて、寄って来た。
皆「おお~~!!Noisy!待ってたで!」
ゴンちゃん「今日、到着するって皆に伝えとったから、まだかなあ言いながら待っとってん!」
奥さん「そうよ!やっと来たわね!」
社長さん「そうや。じゃあ、温泉のことなんやけど、そしたら明日行こうか。」
奥さん「それでNoisyは、大丈夫?」
私「大丈夫ですよ!」
奥さん「そうよ!高ちゃんの時に、本当にお世話になったから。あれは、あなたが全部仕切ってしてくれたようなものよ!だから、どうしてもお礼をしないとって。」
社長さん「そうそう。ほんま助かったわあ!ただなあ、明日、ゴンちゃんに自宅の植木の整理するのを手伝ってもらうように約束してて。ちょっと、午前中、待ってもらうことになるけどいい?午後からで。」
私「あ、全然、大丈夫ですよー!って言うか、私にできる事かわかりませんけど、一緒に手伝いましょうか?」
社長さん「え?やってくれんの?まあ、別に大した力仕事ってわけやないから、できるのはできるんやけど・・・。」
私「いや、むしろ力仕事だったら、大歓迎なんですけどねえ。」
社長さん「ははは!!たのもしいなあ!Noisyは!」
ゴンちゃんは、私がいた方が楽しいと思ったのか即座に口を挟んだ。
ゴンちゃん「そやそや!一緒に行こうや!その方が、早く終わるやろうしなあ!」
奥さん「それでNoisyがいいんやったら。」
私「いいですよ!だって、ここにブラブラいてもやることもないでしょ。明日手伝いますよ!」
社長さん「そしたらありがとう!明日の朝、迎えに来るわあ。」
奥さん「それでNoisyが10月末頃に来るとは聞いてたから、そろそろ来るでしょとは思ってたけど、今日ねえ、実は、あなたが来るから、そろそろ沢村さんも、シレーッとやって来るんちゃうか~言って、皆で笑ってたのよ。」
皆で笑った瞬間に外で車が入って来て止まる音がした。
え!?
まさか?
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