■2章:遍路2周目■映画のような話は実際起こる

                1. 付き人との遍路珍道中

 

DAY68-1

 

朝、堂山大師堂で目覚め、小沢君に出発の挨拶をする。

 

私「じゃあ、そろそろ行くよ!」

小沢君「すっごい楽しかったよ!」

私「明後日には広島へ一旦帰ってしまうけど、松山の杖の淵公園で人と会ったりしてるから、お互い自転車だし、きっとまたあの辺で会うね!」

小沢君「会えるでしょ!じゃあ、気を付けて!」

 

私と沢村さんは、小沢君に見送られながら、朝7時には堂山大師堂を出発した。

軽トラに深呼吸をいっぱいしてから乗り込んだら・・・。

案の定、臭い。

タオルで顔を押さえ、呼吸が苦しくなると、タオルと顔の合間に少しだけ隙間を作って微かな呼吸を試みる。

 

オエ~~~~ッ!!

もはや、昨日の比ではない!

喉を差すような臭い!

 

涙目になりながら、えずくのを必死でこらえる。

 

44番大宝寺へ到着してお参りをしている間が、救いだった。

更に、45番岩屋寺も歩いて上っている最中は、正に天国以外の何物でもない。

1周目に階段や歩く道もそれなりにきつくて大変だったはずなのだが、この臭いから逃れられている安堵感の方が大きく、むしろあの軽トラに閉じ込められているくらいなら、きつい道でも外を歩いている方が嬉しい。

 

岩屋寺を出て、三坂峠を上り、1周目で自転車での最高時速を記録した下りへと入る。

当然、沢村ラジオは鳴り止まず、延々と何かを放送しているのだが、私は、もう何も聞いていない。

周囲の景色さえ目に入ってこない。

とにかくこの苦痛から逃れるために、完全なる無の境地に達したかった。

 

沢村さん「そこに観音堂があるんですよ。長五郎さんって人がいて、なんたらかんたら。」

私「え!?なんて!?観音堂?」

沢村さん「あ、観音堂があって、休憩もできるし。」

 

私は、助かった!と思った。

 

私「沢村さん!観音堂へ寄って!」

 

軽トラで観音堂へ到着して、直ぐに軽トラから逃げるように飛び降りて、地球の空気のありがたさを感じながら、何度も呼吸をする。

 

はあああ~~~~!!

ひ~~~~~~~~~!!!!

 

そうこうしていると、長五郎さんと言う方が出てこられて、ご飯を食べなさいと言って、親切にもご飯をくれた。

長五郎さんも沢村さんの事を知っているようで、何やら二人で話している。

この後の軽トラ内での不自由な呼吸の事を思うと、心配で長五郎さんとの話にも身が入らなかった。

 

ああ~~~~!

もうすぐ、松山だ!

 

長五郎さんにお礼をいって、自分にカツを入れ、深く吸い込み、止めてからタオルを顔に押し当て、覚悟して軽トラに乗り込む。

 

く、く、く、苦し~~~い!!

苦しすぎる・・・。

でも、沢村さんとも、もうちょっとだから!

頑張れ!

 

とにかく意識を無に近づける努力を必死にし、呆然とした状態で、46番浄瑠璃寺、47番八坂寺を打った。

 

沢村さん「で、ここまで降りて来たけど、この後どうするん?」

 

う~ん・・・。

明日の夕方までか・・・。

ブラブラしていても仕方ないし・・・。

 

この後、広島へ一旦帰り、荷物を入れ替えて、四国へ戻って来た時のことを考えていた。

香川方面の難所は打ち終わっている。

とすると、松山からマントラへ戻る時に残されている難所は、仙遊寺と横峰寺と別格10番、興隆寺くらいだ。

それさえ終わっていれば、戻って来た時に難所へは寄らずにひたすらマントラへと自転車で走り抜けることができる。

そうか・・・。

なんとしても、その辺りを終わっておくに越したことはない。

 

私「沢村さん、仙遊寺と横峰寺の難所は終わっておきたいから、松山市内へ向かわないで、そっち方面へ向かって。」

沢村さん「そしたら、別格の興隆寺も行っといた方がええよ。あそこも仙遊寺に近いきん。」

 

私は、覚悟を決めて軽トラに乗り込み、別格9番文殊院へと沢村タクシーで向かう。

 

ひえ~~~!!

沢村さんに、「あんた、臭すぎるよ!」って言おうかな・・・。

でも、流石に「臭い。」って言われるのは、傷つくよね・・・。

いや~~~~~!!

でもーーーーーー!!

臭いーーーーー!!

明日まで、耐えれるかな?

いやいやいや、もう死にそうだから・・・。

 

そんな事とは、つゆ知らない沢村さんは、いつものように沢村ラジオ放送に余念がない。

もはや、意識さえモウロウとしてくる。

それはそうだ。

ほとんど息を止めているようなものなのだから。

一体、何なのかわからない内に次々と寺を打つ。

 

別格9番文殊院、別格11番生木地蔵、別格10番興隆寺の順に打って行った。

各寺へ到着することが、今の私にとっての呼吸のオアシスだったから、お寺に着くと助かった気持ちでいっぱいだった。

 

沢村さん「ここから今治方向の仙遊寺方面と横峰寺方面で、行き先が別れてしまうけど、どっち行くん?横峰が近いきんそっち行くん?」

私「うん。」

 

もはや、頭など動かない。

とにかく横峰の参道入り口まで軽トラでたどり着いて、軽トラを飛び降り、呼吸をしてからようやく冷静に考えた。

これから横峰を上れば、5時までには横峰を打って降りてこられるだろう。そして、今日は打ち止め。

明日の朝一に仙遊寺とその周辺。

沢村さんと私は、横峰寺に上れるよう、軽トラから降りて準備していると、何故か不思議にも私の気が変わってしまった。

せっかくここまで来ていると言うのに、どうしたことか?

遍路をしていたら、「絶対に1mたりとも後ろへ戻りたくない」と言うのに。

 

私「あ、沢村さん!やっぱり、ここは明日の朝一に上ることにするよ。今は上らない。」

沢村さん「えー!?ここまで来とるのに!?」

私「うん。ここまで来てるから、行きたいとこなんだけど、何故かわからないけど、突然、「ここは明日の朝に上れ!」って何かが訴えてるんだよね。」

沢村さん「でも、そしたらどうするん?」

私「これからまた下へ降りて、今日は仙遊寺を打つことにするよ。」

沢村さん「なんで?もう、ここにおるのに。」

私「うん。そうなんだけど、なんだかわからないけど、ここは明日の朝一にしろ!って私の中の何かがそう言うから。」

沢村さん「あー。せっかくここまで来とるのに。まあ、今から仙遊寺に行ってもギリギリ間に合うやろうけどね。時間があったら栄福寺と国分寺も打てるよ。」

 

私は再度覚悟を決め、呼吸を止めて軽トラに乗る。

 

また私の苦しみは始まる。

 

あ~、明日の朝、横峰寺を上がって、その後桜三里の峠の頂上まで連れて行ってもらったら、沢村さんともお別れなのだ。

なんとか、そこまで耐えられるか!

本当にガスマスクに酸素ボンベを担いで酸素を吸いながら沢村タクシーに乗っていたかった。

 

 

なんとか、お寺での深呼吸タイムに救われながら、59番国分寺、58番仙遊寺を打って、仙遊寺の坂道を下りながら今日最後の57番永福寺へと向かう。

 

あ~・・・。

栄福寺の後、どうしよう?

う~む・・・。

それにしても、沢村さんに「臭い」と言わなければ、この場は沢村さんを傷つけないで終わるかもしれないけど、ただ、これ程臭いなのだから、いつか誰かに言われるだろうし、私のように我慢している人達の方がきっと圧倒的に多いだろう。

その我慢する人達に「沢村さんは、臭い」と思われてしまうのだ。

それだったら、教えてあげた方がいいのか・・・。

参った・・・。

でも、結局、知らない内に沢山の人にそう思われている方が、嫌じゃないのか?

そうか・・・。

なんとか、伝えてあげた方が、沢村さんのためかもしれない・・・。

そう、思った時、今日、最後のお寺57番栄福寺に到着してお参りを済ませた。

はっきり言って、昨日に引き続き、今日は特に、意識が朦朧とするほど呼吸も苦しく、できれば無になりたかったので、今日一日のお寺の事は、深刻な健忘症でも起こしてしまったのと言うくらい、既に思い出せない。

 

つづく・・・   

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