■2章:遍路2周目■映画のような話は実際起こる

                1. 付き人との遍路珍道中

 

DAY67-3

 

別格8番十夜ケ橋へ向かう軽トラの中で、勝手に鳴り響く沢村ラジオを聞く余裕はなくなっていた。

とにかく、この苦痛な時間を耐えて耐えて耐え抜いていた。

 

沢村さんが・・・。

臭すぎるのだ!

まるでうんこの臭いだ。

 

実は、ここに来るまでに沢村さんは、たまに私が洗濯をする時についでに沢村さんの洗濯物も洗濯していたものの、沢村さんは毎日洗濯なんかしていない。ましてや、お風呂へも私を連れては行くものの、一度も入っていなかった。

お蔭で、沢村さんは、なんとなく臭かったのだが、もう今日は、耐えられるレベルを超えていた。

 

ああ~!

苦しい!!

 

あまりの臭さに時々えずいて反吐を吐きそうになるのを必死にこらえる。

普段、臭いに敏感な私は、この狭い軽トラの空間の中で吐き気をもよおす程の臭いに苦しみ続けた。

時々、息を止めてみたり、持っているタオルで鼻や口を覆ってみたりするものの、呼吸が苦しくて、時々タオルを外すと、また臭いが襲撃してきて、嘔吐いて吐きそうになるのを必死でこらえると、また涙目になりと言うのを繰り返していた。

 

早く、着いてくれ~~~!!十夜ケ橋!!

 

別格8番、十夜ケ橋に到着して、直ぐに軽トラを飛び降りる。

 

ふ~~~~!!

は~~~~!!!

 

この地球の空気を全て吸ってしまうのかという程、呼吸をした。

助かった!

 

別格の十夜ケ橋をお参りして、お大師さんが橋の下で野宿をしたと言う、像を見に行くと、また沢村ラジオがなんだかんだと解説をしているものの、私はそれどころではなかった。

もはや、お大師さんが、橋の下で野宿修行だったのなら、私は、狭い軽トラの中で臭い修行だ。

そんな像のことよりも、正直、次の呼吸ポイントである別格7番出石寺までの距離と時間の方が気になった。

 

私「沢村さん、次の出石寺までどれくらい?」

沢村さん「山の中に入るきん、1時間くらいよ。」

 

ひゃ~~~!!!

1時間!!!

耐えられるか!!??

 

軽トラへ戻り、乗り込む前に、これ以上吸い込めないとこまで目いっぱい吸ってから軽トラに乗り、タオルで顔を抑えた。

 

頼む!

早く、出石寺に到着してくれ!

苦しい~~~!!!

 

あまりの息苦しさに、タオルを少し外して呼吸をする。

 

「オッエ!」

 

はーはーはー・・・。

 

涙目になる。

 

沢村さんは、この私の苦しみをよそに延々と沢村ラジオ放送に余念がない。

話が白熱すると、時速が落ちる。

40キロ・・・30キロ・・・28キロ・・・。

 

お~~~い!!

次の呼吸ポイントまで、もっと時間がかかるではないか!!

頼む!

早く行ってくれ!

 

私「沢村さん!!ちょっと、話してないでスピードあげて!」

沢村さん「わかっとるきん!」

 

こんなやり取りを何度も繰り返す。

 

ああ・・・。

沢村さんに言おうか・・・。

臭いから風呂にはいれと・・・。

でも、明日にはお別れだと言うのに、明日までなんとか我慢できないのか・・・。

やっぱり、「臭い。」って言われるのは傷つくだろうし・・・。

でも、本当に、臭い。

沢村さんに「お風呂にはいれ。」と言ってみたところで、お金を持ち合わせていないのだろうから、絶対に入らないだろうし・・・。

ああ・・・。

困った・・・。

なんとか!なんとか!明日の夕方まで、耐えるのだ~~~!!

 

沢村タクシーは、山道へと入って行く。

もはや、景色などどうでもいいのだ。とにかく、早く、呼吸をしたい。

ああ~~~!!苦しい!!

早く、到着してくれ!!

 

なんとか耐え抜いた!

別格7番出石寺に着いたようだ!

 

私は、軽トラから飛び降りて深呼吸を繰り返す。

 

は~~~~~~!!!

ふ~~~~~~~~!!!!

ひ~~~~~~~~~!!!!

 

しばし、解放された私は、山の空気を楽しみながらお参りを済ませた。

 

 

私「沢村さん。今日はここまでだけど、次の44番大宝寺へ明日、朝一でお参りできるように近場へ行っておきたいけど、どこかある?」

沢村さん「それやったら、堂山大師堂があるきん。あそこならお堂の中の畳の部屋で寝れるし、大宝寺に近いよ。」

私「そう。そこは良さそうだね。じゃあ、そこにしよう。で、そこまでどれくらいかかるの?」

沢村さん「2時間くらい。」

 

私は、思わず叫んでしまった。

「ひえ~~~~~!!!マジか~~~~~~~!!!!」

 

沢村さん「どうしたん?遠い?それが嫌やったら、もっと近くのにする?」

 

今日、ここから近くにしたら、いずれにしても明日の朝、同じ距離、同じ時間を苦しまなければいけないのは、全く変わらない。それに明日、大宝寺に遠いなら、その方が困るので、いずれにしても苦しむ時間が同じことなら、便利な方を取ることにした。

 

私「いや。堂山大師堂でいいよ。」

沢村さん「どしたん?でも、近くにもあるよ?遠いのが嫌なんやったら。」

私「いや・・・。いいよ。そっちで。」

 

遠いとか近いとかじゃなくて、沢村さんが臭すぎる事を言えないだけだと思った。

軽トラに乗り込む前に気休めに深呼吸を深くして、大きく吸い込んでから、息を止めるように軽トラに乗り込んだ。

時々涙目になりながら、ひたすら耐える。

この苦しみも、明日の夕方までだ!

なんとか!

耐え抜くのだ!

 

必死に耐えて耐えて耐え抜いて、内子町にある堂山大師堂へと到着した途端、私は軽トラを飛び出た。

 

ふはーーーーーーーーー!はあはあはあはあ!!

ふーーーーーーーーー!!!!

 

沢村さん「どしたん?Noisy。大丈夫?」

私「え?ああ、大丈夫!」

 

軽トラを降りて狭い空間での臭さから解放されたからなあ!と心で突っ込んだ。

 

堂山大師堂へ入ってみると、所狭しと物が積み上げられており、奥へ行くとこたつやキッチンなどもある。

元々誰かが住んでいたのか、生活用品もあれこれと並んでいる。

沢村さんは、それでも臭いものの、軽トラの狭い空間とは違い、近くに寄らなければ、我慢できる程度だったことにホッとする。

直ぐに、青森から来たと言う歩きの青年遍路がやって来た。

 

青年「あ、僕も泊まります!」

私「おお!よろしく!私、Noisy!」

青年「あ、僕、小沢です!」

 

この小沢君も私と同じくマウンテンバイクだった。

私達は、奥のこたつに座り、和気あいあいと話をするのだが、私は、沢村さんの臭いがこの青年を苦しめないかと気になっていた。

そうこうしていると、電話がなる。

 

直ちゃん「Noisy!」

私「直ちゃん!明日の夕方だね!今、堂山大師堂だよ。」

直ちゃん「そしたら、明日、絶対松山に着くなあ。」

私「うん。そうだよ!直ちゃん達は?」

直ちゃん「いや、それがな。西条市のお祭りに来てて、泊めてもらってお世話になってるんやけど、そのお祭りがすっごく面白くてな。」

私「へ~!そうなんだ!いいねえ!」

直ちゃん「それで、明日Noisyに会うから出発する言うて、ここの家の人に伝えたんやけど、お祭りは明日も面白いのになんで行くんか!言うて。で、明日もどうしても泊まって行け言われてな。」

私「って事は、松山に来れるのは明後日になるって事?」

直ちゃん「そやねん。なんとか、待ってもらえんやろか?もう1日。」

 

直ちゃん達に会わないなら、私は元々明日の朝一には広島へ戻る予定でいた。

ただ、明日の夜会うことになったので、夕方まで、沢村さんと寺を打ちながら待つことにしたのだ。

それを更に伸ばすと言う事は、明後日も丸一日夕方まで時間が出来ることになってしまう。

ただ、ブラブラしていたい訳でもないし、何と言っても・・・。

沢村さんの臭さにもう1日耐えなければいけないことが、あまりに苦痛だったのだ。

 

私「いや。それだったら、直ちゃん達は、楽しんでよ!お祭り。私は、ちょっと早く帰りたいし、高ちゃんの49日の時にまた会うだろうから、今回は諦めて、私は明日の朝一で広島へ帰ることにするよ。」

直ちゃん「まあ、それは仕方ないよなあ。会いたかってんけど。」

 

と、とんちゃんが電話を奪うように電話口に出た。

 

とんちゃん「なに~~~!!??Noisy!!ちょっとーーー!!会わんと帰らんとってよって、あれだけ言うたでしょーー!!こうやって何日もお遍路しとって、たったの1日のことやん!頼むよ!会いたいから、なんとか待っとってえやあ!ほんまに、頼むわあ!」

 

心の底からお願いしているとんちゃんの言葉に動かされて返事をした。

 

私「そうだね。たった1日の事だよね。考えてみたら。わかった!そしたら、もう1日打てる寺を打てるだけ打って、待ってるから明後日、松山の杖ノ淵公園で会おう!」

とんちゃん「おおお!!そうこなくっちゃ!!そしたら、楽しみにしてるから!!明後日!ありがとう!」

 

直ちゃんに電話を変わった。

 

直ちゃん「申し訳ないなあ。ありがとう!そしたら、楽しみにしてるから!」

 

そう言って、電話を切ると、沢村さんが、あともう1日いられる時間が伸びた事を察しているのか、嬉しそうに輝いた眼で聞いて来る。

沢村さん「え!?もう一日伸びたん!?」

私「そう。」

沢村さんは、今にも喜びだしてしまいそうだ。

 

沢村さん「そしたら、もっと寺を周るん?」

私「まあ、ブラブラしてても仕方ないからねえ。」

 

とにかく嬉しそうな沢村さんとは反対に、私の心が叫んでいた。

 

オーノーーーー!!

明日も耐えられるか、心配だったのに、もう1日もこの臭さと付き合うのは、はっきり言って拷問なんだよーーーー!!!

助けてくれーーーーー!!!

 

ただ、この運命のいたずらは、奇跡へとつながっている事をこの時は、知らなかった。

 

つづく・・・   

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