■2章:遍路2周目■映画のような話は実際起こる
1. 付き人との遍路珍道中
DAY66-2
足摺岬へと向かう途中、お昼になったので弁当屋に寄ってもらうと、沢村さんは自分が持っているうどんを食べると言うので、私のお弁当だけ買って沢村さんと途中で止まってお昼も済ませた。
直ぐに出発して、足摺岬にある38番金剛福寺へと到着し、お参りを済ませ、以布利第一トンネルを抜けたところで指示を出す。
私「沢村さん、ここで降ろして。ここから水車まで17キロくらいだから、40分程で到着すると思うから。」
そう言うと、沢村さんは、サッサと自転車を降ろし、軽トラで走り去って行った。
水車とは、ドライブイン水車のことで、広い駐車場にドライブイン水車があり、自動販売機が立ち並んでいて公衆トイレもある、ちょっとした道の駅のようになっている。
私は、初めの10分程度ダラダラとこぎ、直ぐに自分のトップスピードにのせて、秋の風を切りながら走りこんだ。
やはり、走っている時は、一人だ。
頭の中が、一人トークで忙しくなる。
2周目は、色んな事があり過ぎて考える暇もなかったけど、お願い事がないままここまでやって来た。
そろそろ考えておきたかったのだが、思いつかない。
ふと、遍路旅を終わった後、どうしようかなどと考え始めた。
まだ、3周目があるとはいえ、2周目も香川県の主要な所は打ち終わっているし、もう足摺岬まで来てしまっている。
3周目は、走り抜けたいから思ったよりも早く終わるだろうし。
私は、決めていたことがあった。
長野県で仕事をしていた時の尊敬する親分。
それは、冬限定の仕事で、親分は厳しいけど、これまでに味わったことがない程、楽しい仕事だった。
楽しいものの、アルバイトでしかない。
楽しいだけなら、他にも楽しい事は沢山あるので、前に進みたかった私は、その職場へ自ら戻ることは、あえてしないと決めていた。
ただ。
人生でお父さん以外にこれ程尊敬する人にも中々出会えないと言う程、親分を尊敬していたので、固く固く誓っていることがあった。「万が一、親分が困っているから助けてくれ。それが、私じゃないといけないと言う状況が起こらないだろうけど、もし、起こるとしたら、人生で1度くらいのことなら、あの親分のためなら、その時の自分の事を投げ打ってでも行ってやる!」と。
ただし、自らは戻らない。
まあ、どう考えてもそんな状況は起こりようもないし、親分が困ってもほしくはない。それに仮に困ったとしても、私じゃなくても変わりは他にいるはずだから。
ふと、そんな事を思い出していた。
ああ・・・。
親分、どうしてるかなあ?
そうかあ。
考えてもお願い事を思いつかないし、2周目もこんなとこまで来てしまっているから、ここから3周の終わりまでは、「遍路の後の私の行き先を教えて下さい。」で、いいんじゃないかと閃いた。
そうだ!
これだ!
「遍路の後の私の行き先を教えてくれ!」だ!
そして次の瞬間!
あ!
般若心経の本当の意味は・・・。
私は、その答えがまた私の頭をかすめ、ふわりと私の手の届かないところへと消えて行った。
水車に到着してみると沢村さんが、トイレで誰かと話している。
いや、むしろ沢村さんが一人話し続けているのにうんざりしながら付き合わされていると言った方が正しいだろう。
行ってみると、そのトイレの素晴らしさに驚いてしまった!
そのトイレは、建てられたばかりか新しく、トイレを出た所の軒先が随分と広くて、その下に備え付けのベンチがいくつかあるのだが、どう見ても、お遍路さんに「ここで寝てください」と言わんばかりのしっかりとしたベッドのようなベンチだった。
私「うわあ!このトイレ、凄いね!中も綺麗で広いし、ベンチがベッドみたいで!」
沢村さん「うん。ここのトイレにもお遍路さん、泊まれるきんね。」
私は、また四国の旅人への優しい建物に感心していた。
まあ、お遍路さんが寝ることを前提として建てたかどうかは別にしても、明らかに考慮されているような構造だった。
直ぐに沢村さんが、自転車を軽トラに積み込んでくれ、私達は、39番延光寺へと向かった。
延光寺を打ち終わると4時過ぎだったので、そろそろ戸田君との約束のアサヒ健康ランドへと向かう。
アサヒ健康ランドに到着して、必要な荷物だけ軽トラから降ろし、沢村さんに告げる。
私「じゃあ、沢村さん。明日の8時半にここへ。」
沢村さんは、「はいはい。」と言って、とっとと軽トラで走り去って行った。
アサヒ健康ランドは、これで2回目だ。
前回は、ここで寝ようとしたら寝られなくて、翌日、キャンプ場のベンチで1日中寝てしまう事になった時に泊まった所だ。
チェックインを済ませると直ぐにとんちゃんと直ちゃんカップルから電話があった。
直ちゃん「Noisy!」
私「ああ!直ちゃん!そろそろ松山だよ!」
直ちゃん「そうやろな思って電話してん。」
私「多分、明日久万高原へ上がって、明後日には松山の方へ出れるから明後日の朝一に広島へ一旦、帰ろうと思ってるけど。」
直ちゃん「そしたら、調度、明日から西条市のお祭りに呼ばれてて。途中で知り合った人が、お祭りにおいでって言ってくれてるからな、行くんよ。そしたら、その後、松山までは歩けそうやから、じゃあ明後日の夕方になるけど、松山に行けるから会おうよ。」
私「うん。そしたら、それくらいなら明後日は朝一に広島へは帰らず、その辺の寺を打って待ってるから、杖の淵公園で会おうよ!」
直ちゃん「それ、ええなあ!待ってくれてありがとう!」
とんちゃんが電話に出る。
とんちゃん「Noisy!明日、祭りに行くから明後日、会おう!会わずに広島へ帰るんじゃないよ!!」
私「大丈夫!とにかく明後日会おう!楽しみにしてるわ!」
電話を切ると直ぐ、健康ランドに戸田君が到着した。
戸田君「おお!沢村さんは?」
私「沢村さんは、どこかへ消えたよ。」
戸田君「何処へ行ったんや?」
私「さあ?」
戸田君「とりあえず、風呂入ろうや。」
私達は、とりあえずゆっくりできるよう、お風呂で汗を流し、さっぱりした状態でロビーの端にある喫茶「イスカンダル」で夕食を兼ねて飲むことにした。
それにしても、このザ・昭和な雰囲気の健康ランドにある、喫茶の名前は、何故に「イスカンダル」なのか?その名付けかたも、ザ・昭和を彷彿とさせる。
イスカンダルのカウンターに隣り合わせで座り、食べ物とビールを注文して乾杯した。
また大きな声で冗談を羅列し、時々、私を傷つけ、ブルドーザーの様に箸ですくいながらガサツに隣で食べるのかと思うと、少しぞっとしたものの、意外にも私の話を聞いてくれるところもあった。
食べ方は、相変わらずだったのだが、サッサと食べ終わって飲んでいるだけになったので、気にならなくなる。
私「これで、3周目でしょ?今回は、順打ちの後、続けて逆打ちで。」
戸田君「そうよ。前に順打ちで1回やったことあったけえのお。」
私「あ、じゃあ、しゅんちゃんも何回目だかって言ってたけど、しゅんちゃんには、その1周目の時に会ったの?なんだか二人、元々知ってるっぽかったから。」
戸田君「元々知っとったんは、遍路じゃないんよ。」
私「え~?じゃあ、元々友達だったんだ。」
戸田君「いや、違うんよ。遍路をする何年か前に、世に言うバックパッカーしてアジアを回りよった時に、しゅんちゃんもバックパッカーしとっての。カンボジアで偶然会ったんよ。」
私「へ~!それじゃあ、お遍路じゃなくて、その前から知ってたんだ。しかもカンボジアで初めて会って。」
戸田君「そうそう。」
私「それじゃあ、その後、遍路行こうって話になって、また会ったの?」
戸田君「いや、違うんよ。あの頃のしゅんちゃんはのお、ワシ好きじゃなかったんよ。」
私「え?しゅんちゃん、優しくていい感じの人なのに、なんで?」
戸田君「優しくていい感じだったのは、あの頃もそうだったんじゃけどの。どう言ったらいいか・・・。」
戸田君は、あまり悪口のようになるのが嫌なのか、言葉をかなり選んでいる様子でもあった。
戸田君「おるじゃん!なんか、こう旅先で沈没してから、ブラブラしよる仲間とダラダラしよるのが。」
私は、戸田君が意味することが理解できた。
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