■2章:遍路2周目■映画のような話は実際起こる

                1. 付き人との遍路珍道中

 

DAY65

 

朝、三谷大師堂で起きだして、青年も出発の準備をする。

そうこうしていると沢村さんが軽トラを乗り付けて来る音がした。

青年に別れを告げて沢村タクシーで、ようやく元々いたはずの高知市内へと戻る。

当然、朝から沢村ラジオも調子がいい。

 

沢村さん「今日は、お昼に高知大へ行くんなら、それまでどうするん?高知市内は終わっとるきん打つ寺もないし。」

私「そうなんだよね。まあ、3~4時間だろうけど、折角時間があるからお風呂にでも入って洗濯物をしておこうかなあ。」

沢村さん「それなら、高知大へも直ぐに行けるきん、高知ぽかぽか温泉がええよ。そこにコインランドリーもあるんですよ。それに朝8時から開いとるきん。」

 

とにかく沢村情報は、コンピューターかってほどインプットされていて、まるでドラえもんのポケットのように、聞けばなんでも引き出せるのが驚きだ。

高知へ向かいながら32号線を鳴り止まない沢村ラジオを聞きつつ、ノロノロ運転の沢村タクシーで向かう。

高ちゃんの危篤の知らせを聞いた時とは違い、今は特に急ぐ用もないので沢村さんの遅い運転にもイライラすることもなかった。

香川県から高知市内へ抜けるこの32号線は、過去に何度も通っているのだけど、四国には険しい道が多い中、舗装されている2車線の走りやすい道で、途中、かずら橋付近の大歩危小歩危(おおぼけこぼけ)と呼ばれる吉野川中流域の渓谷も走り抜けるドライブには楽しい道だ。

川の景色を楽しみながら沢村ラジオをなんとなく聞いていると、88ヶ所の遍路道から外れていることもあり、お堂がどうのとか善根宿がどうのとかと言ったお遍路情報ではなく、沢村さんの過去の話から全くもってどうでもいいような近所の人の話にまで至っていた。終いには、歌舞伎の何代目がどうのこうのとか、漫画家の○○さんがどうのこうのとか、政治家の話などにも話題が及んでいる。

 

沢村さん「それでね、僕は今までお袋が世界で一番怖い!思っとったんですよ。いや~~~!!怖い怖い!ほんとに怖いんですよ~!そしたらね、Noisyに会って、お袋より怖いきん、びっくりしたわあ~~~!!お袋のは、女の人が怖いって感じやけど、Noisyのは、まるで男やきんね~。いや~、お袋のより何百倍も怖いきん、もう、これは世界一怖いわあ~!あ~、怖い怖い!うちのオヤジより、男みたいやきん、ひゃ~怖いわあ~~!それでね、なんちゃらかんちゃら、ピーチクパーチク。」

私「ちょっと、ちょっと、ちょっとー!黙って聞いてたら、世界一怖いって!じゃあ、怖いくせになんで付いて来るの?怖きゃあ、こなければいいじゃん。ははは。」

沢村さん「ん?いやあ、怖いんやけど、どこの誰よりも優しいんですよ。おりゃ~!とりゃ~~!言うて、男みたいに怖いけど。中々おらん優しい人なんですよ。それでね、ピーチクパーチク、あーたらこーたら、なんちゃらかんちゃら。」

 

また一人、沢村ワールドへと入って行った。

そうこうしている内に高知ぽかぽか温泉に到着する。

コインランドリーもその駐車場にあった。

 

沢村さん「それじゃあ、僕はここで待っとくきん。」

私「わかった。じゃあ、40分くらいかな。」

沢村さん「あ、お願いがあるんやけど。」

私「何?」

沢村さん「Noisyが洗濯する時に僕のも入れてほしいんやけど。」

私「ああ。いいよ。」

 

そう言って、私は一人お風呂へ行く。

毎度毎度の事だけど、沢村さんは、お風呂に入らなければ、臭くなるけど?と思っていた。

今日は、遍路小屋ではなくムロムロのアパートに泊めてもらうことになっているので、お遍路の垢は落としておきたかったのだ。それに、制服のような遍路服を着ていると心が疲れるのだ。今日は、遍路服を脱ぎ捨てておもいっきり気を抜きたかったので、持ち合わせの普段着に着替えた。

沢村さんの洗濯物と言っても、今着ているジャージとTシャツ以外に、短パンともう一枚Tシャツを持っている程度のようなので、タオルと合わせて沢村さんのものは数枚しかない。

お風呂から出て、沢村さんの洗濯物も一緒に入れ、洗濯待ちをしている間、沢村ラジオと付き合う。

何気に私も沢村ラジオとの付き合い方も上手くなってきた。

洗濯物も終わり、そろそろ時間になるので沢村タクシーで高知大へと向かい、軽トラを下りながら沢村さんに言う。

 

私「沢村さん。あそこにコンビニのサンクスがあるから、明日、朝8時に来て。」

沢村さん「わかった。」

私「沢村さん!もう一回言うよ。明日、朝8時にあそこのサンクスに来てよ。」

沢村さん「わかっとるきん!」

私「沢村さんは、携帯電話を持ってないから、いなかったら連絡の取りようがないから、絶対に8時にいてよ。」

沢村さん「絶対に、8時におるきん!」

私「よし。」

 

軽トラは直ぐに走り去って行った。

しばらくするとムロムロがやって来た。

 

ムロムロ「お~~~!!Noisy久しぶり~~!」

私「おお!足摺岬の金剛福寺以来だね!」

 

とりあえず、立ち話もなんなので、近くのどんどん亭へ移動してお昼ご飯を食べた。

 

ムロムロ「いや~!今日がすっごい楽しみで待ちきれなかったよ~!」

私「そう!それは、嬉しい。」

ムロムロ「でも、大変だったね。友達が亡くなるなんて。」

 

私は、高ちゃんの話の一部始終を聞かせた。

 

ムロムロ「ひゃああ~~!それは、切ない。せっちゃんもこれがトラウマにならないといいね。」

私「うん。そうなんだよね。私が心配しているのはそれなんだよ。」

 

ムロムロは、足摺岬で会った時の印象そのままで、とても優しく、私の冗談もかわせるフレンドリーな人だ。

これで会うのはまだ2回目だと言うのに、昔からの友達かのようだった。

延々と話していると、いい時間になって来たので、居酒屋へ向かう前に、ムロムロが高知大のキャンパスを案内してくれると言い二人で散歩に出た。

それでも私達は話やまない。

 

ムロムロ「どこか行きたいお店ある?」

私「いや、この辺の事はわからないし、ただ飲んで話したいだけだから、近場の何処でもいいよ。」

ムロムロ「それだったら、帰りが楽なように僕のアパートの近くの居酒屋に行こう!」

 

居酒屋でとりあえずビールをたのみ乾杯をする。

遍路服を脱ぎ捨てているので、誰からも「お遍路さん」と声をかけられることもない。

広島の家を出てから今日で調度60日だ。

流石に2か月間、「お遍路さん」でいることにも疲れ果てる。

これをずっとグルグルしている永久遍路の人達は、疲れないのだろうか?

まあ、モリモリは、「遍路をずっとしとったら疲れるけえ、時々、広島の家へ寝に帰りよるんよ。」とは言っていたけど、あの「疲れる」とは、「体」がと言うよりも「精神的に」ではないだろうか。

 

私「ムロムロは、あの足摺岬の後、無事に帰れたの?」

ムロムロ「あ、無事に帰れたよ!Noisyのように、面白い珍道中を話して聞かせたいけど、はっきり言って僕の話は、何もないよ。本当に普通にただ単に帰り着いた感じ。」

私「ははは!普通って!まあ、何もなく普通なのが一番いいんだろうけどね!」

ムロムロ「だって、Noisyのお遍路は、色々あり過ぎでしょ~!」

私「うん。私もそう思う!毎日事件よ!本かけるよね!」

ムロムロ「あ~~~!絶対、書ける~~!書いてほしい!書いたら買うよ~!」

私「じゃあ、ムロムロは、最低10冊買ってね!はははは!!」

ムロムロ「買う買う!100冊買う~!」

私「買うんかい!」

 

 

突然、私の電話がなった。

 

私「あ、ごめん!電話!」

 

電話に出てみると戸田君だった。

 

戸田君「お前、今何処へおるんや?そろそろ高知じゃろ?」

私「うん。高知市内よ。」

戸田君「なんか騒がしいけど何しよるんや?」

私「あ、1周目に足摺で会った人が高知に住んでるから泊めてもらって、居酒屋にいるよ。」

戸田君「えらい、楽しそうじゃのお!で、明日は何処まで行くんや?」

私「多分、39番の延光寺くらいまでかな。」

戸田君「おお、そうか・・・。ほいじゃあ、明日、ワシもそこら辺まで行けるけえ、アサヒ健康ランドで会おうや。」

 

戸田君は、歩きで逆打ち遍路をしているので、どこかで出会うはずなのだ。

 

私「わかった!じゃあ、5時頃には行くよ。」

戸田君「ほいじゃあ、明日、健康ランドで飲もうや。」

私「オッケー。じゃあ、明日。」

 

そう言って電話を切った。

つづく・・・   

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