■2章:遍路2周目■映画のような話は実際起こる

            1. 秋なのに儚い春の訪れ

 

DAY62-2

 

海岸寺奥の院へ到着して直ぐに思い出の通夜堂へと上がって行った。

 

せっちゃん「ああ。やっぱり、ここはいい所やなあ。」

私「ほんとに。」

 

そう言いながら、ここでのせっちゃんとの思い出が蘇っていた。

 

せっちゃん「なんか、この前の事なのに懐かしいなあ。」

私「うん。そうだね。一昔前の様に感じるわ。」

せっちゃん「ほんまやで。二人で大きな声でお経をハモったら、お坊さん来たしな。焦ったわ。ははは。」

私「ははは。ほんとに。ただのお参りの人かと思ったら、「住職です。」言われたよね。」

 

せっちゃんも色んな話をしながら、時々思いにふけっているのか、話が止まる。

私もここで高ちゃんの恋バナを延々とせっちゃんに聞かされたり、高ちゃんと博士がうどんへ行こうと誘いに来てくれた時の事など思い出していた。ただ、せっちゃんが言い出さない限り、反って寂しくなってはいけないと思い、私も時々思いにふけるだけで口には出さないでいた。

 

私「ねえ、せっちゃん。」

せっちゃん「ん?なんや?」

私「今、こんな事聞いても、答えがまだないかもしれないけど、1か月後にバイト終わったら、高ちゃんと歩くはずだったお遍路は、どうするの?」

せっちゃん「うん。それは、行くで。」

私「あ、88ヶ所回るの?」

せっちゃん「いや。それも考えててんけどな、やっぱり自転車で周るわ。それでな、88ヶ所やなくって、高ちゃんが好きやったから、お不動さん周ろう思ってんねん。それと別格とな。」

私「え?お不動さん巡り出来るコースがあるの?」

せっちゃん「うん。四国三十六不動霊場があって、36か所回るねん。それでな、別格と合わせて56ヶ所行こうかな思ってて。」

私「そうか~。それ素敵だね!」

せっちゃん「うん。高ちゃんが好きやったお不動さん周って、高ちゃんの供養したいなと思ってな。」

 

 

私「それじゃあ、出発は予定通り11月入ったら直ぐになるの?」

せっちゃん「そんな感じや。お不動さんは、高知市内にちょろっとあるだけでほとんどは、瀬戸内海側にあんねん。」

私「え?それじゃあ、私が周ってても、会わないかもしれないってことか・・・。」

せっちゃん「いや。別格も回るから、大体四国1周って感じにどっちにしてもなるで。」

私「ああ!そうか。そう言えば、別格もあるもんね。わかった!それじゃあ、いずれにしてもまたせっちゃんがお不動さん巡りで戻ってきたら、何処かで会うね!」

せっちゃん「そやな。また会うわあ!」

 

本当に二人きりでゆっくりと思い出にふけり、高ちゃんを密かに思いながら心地のいい海岸寺の通夜堂での密会だった。

今日は、高ちゃんの仮通夜もあるし一旦マントラへ戻っておこうって事でせっちゃんの車でマントラへと戻った。

まだ時間は、お昼過ぎだ。

戻ってみると、皆特にすることもなく、話をしたりしながらゆっくりと戯れていた。

当然、戸田君の声は何処からでも聞こえている。

 

私「勝さんは、調度私のお父さんくらいかなあ?」

勝さん「うん。そうだな。それくらいだ。」

私「ねえ、勝さんは、ずっとお遍路さんしてるんでしょ?疲れない?」

勝さん「確かに疲れる日もあるけど、俺は、ちゃんと周りてえんだよ。中にはよお、ずっとやってるお遍路さんでも山の上の寺は行かねえで、托鉢だけやって周ってるのもいるからなあ。」

私「え?山の上の寺には行かないって・・・。それ、どうよ?」

とんちゃん「え~~!Noisy。いっぱいいるよ~!」

私「そうなの?ちょっと、それってどうよ?」

とんちゃん「だから、時々、前を歩いてる乞食遍路のような人がいると、俺、見てるよ~~!!ちゃんと遍路道を次の寺の方向へ曲がるか。そしたら、曲がらないもんね。そっち、真っすぐに平坦地ですけど~!右曲がれよ~!って思うもんね。」

私「ははは。見てるって!ウケル~!とんちゃん!」

勝さん「俺はよお、俺なりの遍路道(へんろどう)ってのが、あるのよ。」

私「へ~。永久遍路さんやってても人それぞれだね~。」

 

また沢村さんがハエの様にたかってくる。

沢村さんが、突然サッと背後に回って、頼みもしないのに恐る恐る私の肩を2~3回揉みながら、怒られることがわかっているのに聞いて来る。

 

沢村さん「肩もみ揉みましょか?」

私「うるっさい!今は、いらん!ったく!」

沢村さん「ひゃあああ~~~!!怖い怖い!Noisyは怖い!」

 

そう言いながら、飛び跳ねてあちらへと逃げて行ったかと思うと、また戻って来てハエの様にうろついている。

 

とんちゃん「俺ね、この前岩屋寺の参道を歩いて、直ちゃんと降りて行ってたら、モリモリが托鉢してるのが見えてね。」

私「おお!モリモリ!」

とんちゃん「それでしばらく立ち止まってモリモリに気づかれないように様子を見てたら、モリモリは面白いよ~!」

私「モリモリが面白いのはわかるけど、どうだったの?」

とんちゃん「人が来たら、突然真っ直ぐ立ってお経を読み始めて、通り過ぎたら行ってしまったか確認して、お経も止めて1メートルくらいの範囲を行ったり来たり、ウロウロしてて、また人が来たら慌てて真っ直ぐ立ってお経を読み始めてを繰り返してて、おかしかったよ。」

私「もー。モリモリらしい。ウケル。」

 

こうやって皆それぞれが話したい事を話したいようにブラブラしながら時を過ごしていると、時間が2時になっているのに気付いた私は、そろそろ準備をしておかなければと思い沢村さんをこっそり呼んだ。

 

私「沢村さん!」

沢村さん「はい!」

私「ちょっと、皆に気づかれないようにサッサとここを出るよ!」

沢村さん「何処へ行くん?」

私「うどん屋へ連れて行って。これから仮通夜が始まるし、腹が減っていては戦にはならないからそれまでにサッと腹ごしらえしておきたいから。でも、気を付けて!サッサと静かに出て行ってよ!」

 

沢村さんと私はサッと軽トラに乗り込みマントラの敷地を後にした。

 

私「今日は、何処でもいいんだけど、近い所でサッと済ませたいから、何処かある?」

沢村さん「あるよ。近くにすっごい美味しい所が。」

私「じゃあ、そこへ。」

 

直ぐに到着して私を降ろすと沢村さんは軽トラで待機していると言う。

サッサとうどん屋へ入ってかけうどんを注文した。

出てきたうどんは、香川へ来て初めて驚くほど不味いうどんだった。

麺は、讃岐の様にコシはなく、まるでスーパーで買って来たふにゃふひゃ麺で、出汁は関東風の真っ黒で醤油の味しかほとんどしないものだった。

不味いにしても今日は時間がないのでこれで我慢して食べようと思ったものの、ふと、沢村さんは、今日は何を食べるのかと不思議になった。今夜の宴会にしても、これまでの流れを考えれば、当然沢村さんは、仲間には入っては来ないのか来られないのか一緒に食べるわけではないはずだ。

そうか・・・。

私は即座にうどん屋を出て、軽トラで待機している沢村さんの所へ行った。

 

私「おい!沢村さん!ここ香川県で一番不味いうどん屋だよ!」

沢村さん「え?ここは美味しかったはずやけど。」

私「じゃあ、あんたが味見に来たらいいでしょ!ちょっと来い!」

 

私は沢村さんを引っ張って連れて来て私のうどんを食べさせた。

 

沢村さん「あら?おかしいな?あら?不味いなあ?」

そう言いながら、うどんを食べている。

私「とにかく、それ全部食べて!」

沢村さん「え?Noisyは?」

私「私は、すぐそこのうどん屋へ連れて行って。」

沢村さん「でも・・・。折角Noisyが頼んだのに・・・。」

私「いいから!不味いから責任を取って食えと言ってるでしょ!」

沢村さん「あ・・・。ええん?ありがとう・・・。」

 

沢村さんは、あっと言う間に食べ終わり、二人でうどん屋を出て、直ぐ近くの別のうどん屋へと向かった。

直ぐに私は飛び降りて、サッサとうどんを食べて出てくると沢村さんが軽トラで待機している。

また軽トラに飛び乗ってマントラへと戻った。

戻って来てみると、まだ皆ブラブラしているところだった。

つづく・・・   

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