■2章:遍路2周目■映画のような話は実際起こる

            1. 秋なのに儚い春の訪れ

 

DAY61-4

 

せっちゃんも気丈に振る舞いつつ、自分の気持ちを一生懸命整理しようとしている風でもある。

せっちゃんは、いつも持ち歩いているのか、私が撮ってあげた高ちゃんの写真をテーブルの上に飾った。

 

 

せっちゃん「今夜は、高ちゃんも一緒に飲むねん。」

私「そうだね。高ちゃん、面白かったもんね。」

せっちゃん「そうや。」

 

せっちゃんは、ビールをテーブルに置いて、声を殺して泣き始めてしまった。

それを静かに見守りながらせっちゃんが落ち着くのを待つ。

 

せっちゃん「でもなあ、Noisy。ワシ、泣いてるけどな、皆死ぬんやしな。高ちゃんは、ちょっと早かっただけや。それにな、高ちゃんが死んだからって、ワシの中では、死んでへんから。」

 

涙を拭きながら笑顔を見せる。

 

せっちゃん「そやそや!高ちゃんは、死んでへん!ワシの中におんねん!ずっとおんねん!」

 

自分に言い聞かせるかのように言葉を繰り返し、笑顔のまま涙が流れる。

 

せっちゃん「それになあ、こんな事になったからって、別に高ちゃんに会ったことを後悔もしてへんしな。楽しい時間をくれたから、出会えてよかったなって思ってんで!」

私「うん。そうだね。高杉晋作は、とっくの昔に死んだけど、あの格好いい男は、私の中ではまだまだ生きてるからね。あの人、長生きだわ。亡くなったのは、江戸時代だけど。」

せっちゃん「高杉晋作は、大昔に死んでるやん!それでもまだ生きてんねんから。って、何の話や!ははは!」

 

せっちゃんは、涙を拭きながら笑顔で笑っている。

 

せっちゃん「もー。Noisyが、わけのわからん話始めるから、突然、お腹空いてきたわー!」

私「そりゃそうだよ。今日、夕方に病院へ行って、この時間まで何にも食べてないんだから。」

せっちゃん「ほんまやなあ。なんか、色々あったから全然お腹すけへんかったわあ。」

私「うん。私も忘れてたわあ。」

せっちゃん「いやあーーー。今日は、ほんまに、長い一日やったわあ!」

 

私は、少しほっとした。

 

私「あ、せっちゃん。今ね、博士とゴンちゃんと高ちゃんの3人で個展をやってるらしくてね。行きたいんだよね。」

せっちゃん「え!?そうなん!?行きたいー!ほんなら明日行こうや。」

私「うん。いいね!行こう!」

 

落ち着きを少し取り戻したせっちゃんと、高ちゃんとの楽しかった思い出などを語り合って、夜中の1時半にはファミレスを後にした。

 

DAY62-1

 

朝、マントラで目覚めると、皆それぞれに起きだしてきて、朝の挨拶をしたりコーヒーを飲んだり話したりしながらまったりとした時間が流れる。

せっちゃんも、皆とワイワイするほどの元気はないものの、穏やかな気持ちでいるようだ。

沢村さんはと言うと、軽トラで寝たので軽トラから降りて来て、また私の周りをハエの様にウロウロしている。

 

ゴンちゃんが遍路小屋にやって来て、皆に声をかけた。

 

ゴンちゃん「今日なあ、高ちゃんの遺体はこっちへは、来おへんけど、ご両親が三重県の方からやってこられんねん。それで、元々お遍路さんだった人でお坊さんになった徳厳(とくげん)さんって人がおって、その人をお坊さんとして迎えて、今日はここで4時から高ちゃんの仮通夜をするから。その後に高ちゃんを送る会として宴会があるから、皆、4時までにはここに集まっとって。」

 

そうか。

今日、ここで仮通夜か。

そうなると、今夜は忙しくなる。

せっちゃんの精神的な状態を考えてみても、とても手伝っていられるような状態ではないだろうし、他にもゴンちゃんがいるけど、特にしきれそうな人もいない。それぞれそれなりにお手伝いはするだろうけど。

そうか・・・。

それまでに備えておかなければ。

 

私「せっちゃん、それじゃあ今のうちにゴンちゃんと高ちゃんと博士の個展へ行っとく?博士は、個展の方にいるみたいだし。」

せっちゃん「うん。ほな、行っとこか。」

そう言って、せっちゃんの車で出かけようとしていたら、案の定この男が大きな声で声かけて来る。

 

戸田君「おい!お前ら、何処行くんや!?」

 

出た・・・。

私は、心静かにせっちゃんと個展に行きたいと言うのに。

 

私「え?個展だけど。」

戸田君「おお!博士とゴンちゃんと高ちゃんのか?」

私「そうそう。」

戸田君「ほいじゃあ、勝さん、ワシらも一緒に行きましょうや!」

勝さん「ああ。いいなあ。」

 

結局、個展へは4人で行くことになってしまった。

きっと内心、せっちゃんは相当嫌だろうなと思いつつ、せっちゃんの車で4人乗って個展へと向かった。

到着して、会場の中へと入って行ってみると、博士が出てきた。

 

博士「あ、Noisy。来てくれたんや。」

私「うん。」

戸田君「ワシらも来ましたよ~!お邪魔しまっす!」

博士「ああ、皆もおるんや。」

私「ねえねえ、博士。博士の作品は何処?」

博士「ここに・・・並んどる置物や。」

 

私は博士が指を指した棚を見た。

調度プラスチックのライターを二つほど組み合わせた程度の大きさの可愛らしい置物が沢山並んでいて、一瞬で笑顔になった。

 

私「うわ~!博士!超~可愛いんですけど~~!!」

せっちゃん「うわあ!ほんまや!可愛いなあ!」

 

博士の小さな置物は、猫やヤモリや馬など、生き物が可愛い小さなサイズで作られていて、そのどれも愛らしい目がとても印象的で、お世辞抜きでどれも欲しくなるような物だった。

 

私「え~~~!博士、凄い~~~!!ってか、マジで可愛いんですけど~!全部ほしい!」

せっちゃん「ほんまやなあ!博士、こんな可愛いのを作ってたん?」

 

博士は、少し照れた様子でとても嬉しそうにしていた。

 

私「うわ~!博士、私にも一つ作ってほしいわあ~~!」

博士「え?ほんまに?」

私「え?本当だけど?」

博士「うん。じゃあ、考えとくわ。」

せっちゃん「え~~~!!??なんで、Noisyだけやね~ん!?」

 

これまで私は博士を気に入っていたけど、せっちゃんはこれまで特に興味も示さなかったものの、この瞬間明らかにちょっとしたせっちゃんの女の嫉妬を感じた。

 

私「で、博士。高ちゃんのは何処にあるの?」

博士「あ・・・。高ちゃんのはこっちや。」

 

私達は、博士に促されて着いて行く。

 

博士「この辺に飾ってあるグラフィックデザインの絵が高ちゃんのや。」

戸田君「ああ。高ちゃん、こんな事しよったんじゃあ。」

 

皆、それぞれに高ちゃんへの思いがこみ上げたのか、絵を眺めながらしばらく沈黙してしまった。

高ちゃんの絵は、イルカやお不動さんなどが、コンピューターで綺麗に描かれたものだった。

 

私「そうか・・・。高ちゃん・・・。」

博士「うん・・・。高ちゃんのや・・・。」

 

せっちゃんもしばらく思いにふけりながら真剣な目で高ちゃんの絵を眺めている。

 

私「で、ゴンちゃんのは?」

博士「ゴンちゃんのは・・・。」

私「あ!あの辺だ!」

博士「そうそう。」

私「ああ。なんかゴンちゃんらしくて、直ぐにわかるわ~!」

 

ゴンちゃんの絵は、何処か大阪人の血が流れているようなユーモアのある絵が並んでいた。

 

私「ねえ、博士。今日は4時から高ちゃんの仮通夜がマントラであるけど、来るでしょ?」

博士「うん。それが・・・。ゴンちゃんと高ちゃんと3人で交代でここにいる予定やったんや。でも、高ちゃんがおらんし、それでゴンちゃんが手をとられとるから、今日は俺がここにおらんといかんのや。やから・・・。ちょっと遅れるかもしれんけど、終わったら急いで行くよ。」

私「うん。わかった。それじゃあ、後でね。」

 

私達は、個展を後にしてせっちゃんの車でマントラへと戻った。

車を降りて直ぐにせっちゃんが私に言う。

 

せっちゃん「なあ、Noisy。ちょっと海岸寺へ行けへん?」

 

きっと、二人きりになりたいのだろう。

私「うん。行こう。」

 

せっちゃんもまた戸田君達に声をかけられたくないのか、あっという間にせっちゃんの車に乗って、さっさと海岸寺奥の院へと向かう。

つづく・・・   

いいね!と思ったら、1日に1回のポチッもよろしく~!

     ↓

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村

面白かったり何かを感じたら、いいね!やランキングにポチッしてくれるとテンション上がって明日からも張り切る励みになります~♪ありがとう!

お遍路 ブログランキングへ

 

あ、今、Noisyのブログランキング消えたけど?とお思いの方は、こちらへどうぞ!


神社・お寺巡り ブログランキングへ


国内旅行 ブログランキングへ

 

読者登録してね