■2章:遍路2周目■映画のような話は実際起こる

            1. 秋なのに儚い春の訪れ

 

DAY60-4

 

そうこう直ちゃんやとんちゃんと遍路小屋の前で話しているとタオルをクルクル回しながらプラリと入って来た20代後半くらいの歩き遍路がいた。

あ!

これが、あの恩田さんか!

 

私「恩田さんですか?」

恩田さん「そう!」

私「おお!タオルだけ持って遍路してる人がいるって聞いてて。」

恩田さん「うん!俺!」

私「へ~!寝る時は、どうやって寝るの?寒かったりしないの?」

恩田さん「うん!大丈夫!」

私「食べ物は、何を食べるの?」

恩田さん「お供え物とか!」

 

ああ、やっぱりお供え物か。

すると、おじさん遍路がママチャリで入って来た。

振り向いてみると、広島出身で時々何故か帰る家があるのに遍路をずっとしている、私がモリモリと名付けた森山さんだ。

前に会った時には、歩き遍路だったのに、今度はママチャリに乗っていたのだが、少しぷくりと出たお腹と垂直の姿勢で運転している姿が、あまりにも滑稽で可笑し過ぎた。

 

キコキコキコーとこいで中まで入って来ると、ママチャリを止めてモリモリが遍路小屋へとやって来た。

 

私「モリモリーー!!」

モリモリ「おお!Noisyか。あんたも来たか!高ちゃんがって聞いてワシも来たんよ。」

私「ってか、モリモリ。前は、自転車じゃなかったでしょ?」

モリモリ「うん。前は歩きじゃったよ。」

私「なんで、自転車にしたの?」

モリモリ「あんたの自転車見て、ええの~思って、ワシも自転車にしてみたんよ。」

私「ははは!モリモリ、ウケル~!ってか、モリモリ、その自転車、全然似合ってないよ!」

モリモリ「え!?似合っとらんか?ワシは、かっこええじゃろう思っとるのに。」

私「え?かっこええの?それ?もー!モリモリは、やっぱり、最高!」

モリモリ「ほいで、連絡があるまでここで待機しとかんにゃあいけんって聞いとるんよ。」

私「うん。そうみたいよ。」

モリモリ「まあ、ほいじゃあ、ぎゃあぎゃあ言いよってもしょうがないけえ、ここで皆でブラブラしとくしかないのお。」

私「うん。そんな感じ。」

 

モリモリも遍路小屋へと入って行ったので、私は、いつも履いている厚底サンダルを洗って干しておくことにした。

マントラにとりあえず、貸してもらえるスリッパのようなものがあったからだ。

サンダルを洗っていると、近くで直ちゃんと沢村さんの話し声が聞こえる。

 

直ちゃん「沢村さん、今、Noisyの付き人さんしてんの?」

沢村さん「そうなんですよ~!いや~~!参ったきん!Noisyは、怖い怖い!」

直ちゃん「そんなん言うて、沢村さん、めっちゃ嬉しそうやで?」

沢村さん「いやあ、Noisyは、ほんまに怖いんですよ~。突然、「ごるぁああ~~!」言うて。あ~!怖い怖い!」

直ちゃん「ははは。でも、沢村さん、Noisyの世話しかしてないやん。そんな言うて、めっちゃ嬉しそうやん!」

沢村さん「まあ、Noisyは、お袋より怖いんですよ。今までね、お袋が一番怖い思っとたら、Noisyの方が、男みたいに怖いきん。でもねえ、Noisyは、怖いけど、めちゃくちゃ優しいんですよ。」

直ちゃん「ほら。沢村さん。嬉しそうやん!」

 

私は、遍路小屋の出入り口付近の日の当たる所へサンダルを乾かそうと置いたりしていると、大きな声がマントラの入り口から聞こえてきた。

 

声「おおーーー!!皆、来とるのーーー!!」

 

振り向くと、戸田君が歩いて入って来るところだった。

 

戸田君「高ちゃんが危篤っちゅうて聞いて来たんじゃけどー。」

私「そうよ。皆、待機中だから。」

戸田君「おお!また会ったのー!南光坊以来か!」

 

戸田君は、体もデカいけど、その声は、町内放送かと言う程やっぱりデカい。

 

戸田君「まさか、こう言う形で再会するとは思っとらんかったんじゃけどのお!」

 

続々と高ちゃんの仲間が到着して来ている。

私達は、特にすることもなく、遍路小屋の前に椅子を持って来て数人で座り円になって、入れ代わり立ち代わり話をする。

きっと皆高ちゃんの事が心配なのだが、それを口に出せば、余計に皆が心配になる空気に誰もしたくないのか、高ちゃんの事は用件のみで今のところ誰も語らない。ただひたすら、ともすれば暗くなってしまいそうな空気をかき消したいかの様に、たわいもない楽しい話を続けていた。

沢村さんは、とにかく私の周りをウロウロしている。

私のお世話を焼きたいのだろうが、特にこの状況では、お世話を焼く用事もない。

皆と座って話をしていると、まるで私の体の周りをブンブン飛び回るハエのようにうっとうしいだけで、話している人達もその度、沢村さんに意識が流れる。

 

私「こらー!沢村さん、あっちへいっとけ!」

沢村さん「ひゃ~!怖い怖い!」

 

そう言って、一旦は、離れて行くが、また戻って来て周りをうろついている。

 

戸田君「あののお、もうちょっとしたら来る思うんじゃけど、勝さんちゅう、東京出身のおじさんが永久遍路で周りよるんよ。での、永久遍路っちゅうてもの勝さんは元々板前さんで、江戸っ子のような切れのある人での、凄いかっこええ人なんよ。」

私「ふ~ん。そんな人が来るんだね。」

戸田君「ほいで、沢村さんもおるじゃん。沢村さんが付いて来て困っとる言いよったけど、あれどうなったんや?」

私「長い話を短くすると、結局沢村さんは、私の付き人になってるのよ。この2周目は。」

戸田君「はははははは~~~!!」

 

戸田君の笑い声は、四国中に鳴り響いたに違いない。

 

戸田君「そーなんじゃ!あー、じゃけー、沢村さんもここにおるんじゃ!」

直ちゃん「で、Noisy、ははは!ちょっと、沢村さん見て~!」

 

振り向いて沢村さんを見ると、私の干しておいたサンダルが日が傾いて日陰になってしまったので、20センチ程度、動かして日向に置くところだった。

 

直ちゃん「ほんま。沢村さん、嬉しそうにNoisyのお世話してるなあ!」

 

ふと自分に視線が向けられたことに気づいた沢村さんは、すかさず私に寄って来た。

 

沢村さん「Noisy、肩でも揉みましょか?」

私「うるっさい!!今は、いらん!あっちへいっとけ!」

沢村さん「ひゃ~!はいはいはいはい!邪魔しませんて!あ~怖い怖い!」

 

そう言って肩をすぼめてあちらへ行くでもなく周りをウロツイテいる。

 

直ちゃん「いやあ、ほんま沢村さん、楽しそうやなあ!あの人、今までの人生で今が一番輝いてるんちゃうか?」

戸田君「ほんま、沢村さんなんか楽しそうで、こんなんじゃったかいの?」

とんちゃん「沢村さんの青春、今頃全部まとまって一度にやって来ましたって感じやん。ほんと。」

 

 

ふと私が遍路小屋へ入って行くと、テーブルで一人静かに眼鏡をかけて本を読んでいる人がいた。

モリモリだ。

見た目は気難しそうだけど、実際はお茶目な不思議な永久遍路まがいのこのおじさんは、一体どんな本を読んでいるのか気になって、ふと題名に目が行く。

題名は、「経済にまつわる非常に小難しい一般人はあまり読まない」ようなタイトルだった。

やっぱりモリモリは、元々会社の社長か何かだったのかもしれない。

 

私「ねえ!モリモリー!何それ!?すっごーーーーい難しそうな本を真剣な顔をして読んでるけど!?」

 

モリモリがふと本から目を離し私を見て、眼鏡を下げた。

 

モリモリ「おお。これか?」

私「モリモリ、凄いじゃん!そんな難しそうな本を読んで!」

モリモリ「おお、難しそうな本じゃろ?」

私「うん。普通読まないような本だよね!モリモリ凄い!」

モリモリ「おお。ワシがこれを読みよる思いよるじゃろう?」

私「うん。」

モリモリ「ワシは、読みよらんのんよ。」

私「え?」

モリモリ「漢字が何文字あるか数えよるんよ。」

私「ひゃああああ~~~!!モリモリ、やっぱりウケル~~~!!!」

 

私は、このモリモリとのたわいもない会話が、やっぱり大好きだと思った。

 

しばらくすると、外で戸田君の大きな声が聞こえた。

 

つづく・・・   

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