■2章:遍路2周目■映画のような話は実際起こる
            3.親分と子分関係な旅の始まり

 

沢村さんが出て行ってから電話がなった。

 

ゴンちゃん「今日は、高知やろ?どこにおるんや?」

私「清滝寺の通夜堂。」

ゴンちゃん「え!?高知に入ったら、32号線で香川まで戻ってこなあかん言うたやんか。ちょっとだけ通り過ぎてるなあ。明日、岩本寺へ向かってしまったら高知市内から離れてしまうから、戻っといで!」

私「うん。でも、ちょっと色々あって、明日、先へ進めないんだよね。それに29番国分寺から31番の竹林寺をまだ打ってないから、明日、戻ってそっちへ行かなきゃいけないんだよ。それで明日は終わり。岩本寺は明後日以降だね。」

ゴンちゃん「ほんなら、調度ええやん!!こっちへ帰ってこいって事なんちゃうか?」

私「だからー、諸事情で明日竹林寺方面へ戻らなきゃいけないし、明日、岩本寺へ向かうわけにはいかないのは確かなんだけど、だからと言って、香川のマントラへ戻るってのはないわあ。何回も言ってるけど。」

ゴンちゃん「いやあ、それは戻ってこい!って事やろ!ちょっと待って!高ちゃんが話したいって。」

 

高ちゃん「なんてー?明日、竹林寺までなら、32号線が近いやん。戻っておいで!沢村さんもおるんやろ?」

私「うん。いるよー。なんか、今日もそっちは楽しそうだね。」

高ちゃん「そやねん。今なあ、ここで手伝ってる事があるから、色々デザインせなあかんくて、大変やけどなあ、それもあと半月もしたら終わるしな。でも、楽しいで!今日もお遍路さんが何人か泊まってて、ここで飲んでんねん。」

私「そっかー。高ちゃんも手伝い終わったら、またせっちゃんと歩き遍路行くしね。」

高ちゃん「そやねん!やから、まあ、それまでに終わらせとかなあかんけどな。とにかく高知から戻って来るんやで!待ってるわー!」

 

と言い終わらないうちにゴンちゃんに電話を変わっていた。

 

ゴンちゃん「それになあ、今、沢村さんとおるんやろ?それやったら、別に自転車でこっちまでこんでも乗せてもらって、一旦帰って来て、で、また乗せてもらって高知まで帰って続きをやったらええやん!」

私「いやいやいや~~!!ゴンちゃん。そうはいかないよ!とにかく、1周したら帰るから。」

ゴンちゃん「とにかくなあ、俺は、お前の顔が早う見たいねんって!待ってるから!好きやで。」

 

そう言って電話は切れた。

 

DAY59

 

朝、清滝寺の通夜堂で目覚めると、沢村さんがコーヒーを入れてくれた。

今日は、高知市内で打ち残している31番竹林寺から29番国分寺までを逆の順で打って行った後、明日まで、その先に進めない。

私は清滝寺を9時に出発し、沢村タクシーで31番竹林寺へ行った。

 

境内へと入って行きながら、控えるように私の斜め後ろをサーッと付いて来ている沢村さんに話しかける。

 

私「沢村さん。今日、ここの寺で、沢村さんがももちゃんとうまくいくようにお祈りをしてあげるよ。」

沢村さん「いや~ん!恥ずかしいきん!」

 

沢村さんは、どことなく嬉しそうだった。

 

お参りをしている間、いつものように斜め後ろの方に控えているのだが、今日はいつもにまして、ももちゃんのお願いをしてあげているからなのか、神妙そうに真面目な顔をして頭を下げ立っている。

お参りを済ませると、沢村さんが何故か缶コーヒーを手渡した。

 

沢村さん「お接待です。」

私「ん?ありがとう。」

 

昨日、お風呂に行った時、沢村さんを待たせている間に、あげた缶コーヒーのお返しだろうか?

それとも、ももちゃんの事をお祈りしてあげた事への気持ちだろうか?

気持ちは嬉しかったものの、私に缶コーヒーを買うくらいなら、お風呂代を払ってお風呂に入ってくれと思った。

そして、ふと沢村さんのお願い事をした事で、この2周目は自分のお願い事をしていないことに気が付いた。

1周目は、「健康」をお祈りしていたけど、2周目は決めていない。

そうか。

2周目のお願い事も考えたいなと思いながら、沢村タクシーであっという間に30番善楽寺、29番国分寺を打ち終わると、まだお昼時だった。

沢村さんの持っている袋めんのうどんがあるからそれを食べようと言うので、今日は、自転車で走る予定がないしインスタント麺でもいいだろうと判断して沢村さんに作ってもらって食べた。

食べ終わっても、まだ1時頃だ。

岩本寺へ向かうわけにもいかず、ただ時間を持て余した。

 

私「沢村さん、こうなったらドリンクバー行こう!沢村さんのも出すから。」

沢村さん「ええよ。僕のは。待っとくきん。」

私「いや、行くよ!」

少し厳しい口調で言うと、沢村さんは「はい!」といい、一緒にファミレスcoco’sへ入り、ドリンクバーをしながら、ただ時間を潰した。

まるで、運命の時間をここであえて待っているかのように。

 

夕方になり、沢村情報で千松公園に泊まることにしたのでその前に「ほか弁」をみつけて、寄ってもらった。

当然、お金を全く使わない沢村さんはお店の中へも入っては来ない。

今日のお昼はインスタント麺だったし、ちゃんとしたものを食べたかった。

バランスの良さそうな「幕の内弁当」などをメニューで見ていたのだが、ふと、沢村さんが何も食べないか、インスタント麺を食べている前で私だけ「幕の内弁当」を食べるのかと思うと気が引けた・・・。

ただ、私は赤貧旅行に来たつもりはないものの、旅は、托鉢でもしない限り消費でしかないのだ。

しかも遍路は、1週間の旅行ではなく、長い長い旅なのだ。当然、出費もそれなりに考えなければならない。

普段の私なら、迷わず「幕の内弁当」を沢村さん用と私用に2つ買っていたはずだ。

幕の内弁当は、1つ600円だった。2つ買えば1200円と消費税。

たったの1食弁当に1300円近く使うわけにもいかない。

私が、一瞬迷っているそばで店員さんが、私をせかす。

 

店員「ご注文は?」

 

私の心が激しく揺れ動く・・・。

あああ!!食べたい!幕の内弁当!

でも、沢村さんとこの先長いことを思えば・・・。

ひとり目の前で食べるわけにもいかず・・・。

 

店員「お決まりですか?」

 

あああああ!!!

仕方ない!

 

私「すいません。のり弁2つ下さい!」

 

 

ああ・・・。のり弁か・・・。

2つで714円。

確かに安いけど、栄養のバランスなんて・・・。

 

う~ん・・・。

なんとしても、この2周目は、自転車に乗ることよりも、沢村さんとの旅を沢村タクシーを駆使して終わらせなければ・・・と改めて思った。この沢村さんとの旅が長引けば、食費が倍になるか、食べることを少し我慢するかが長引くだけだ。自転車には乗りたいと言うよりも、身体を鍛えたいから多少なりとも乗りたいのだけど、もはや、そんな事はどうでもよかった。

1日も早く、全部沢村タクシーに乗ってでも、終わらせなければ・・・。

 

また沢村タクシーに乗り込み千松公園に着くといつものように沢村さんは、テントを張ってくれた。

そこで沢村さんにも買って来たのり弁を渡した。

 

私「沢村さん。これ!」

沢村さん「え?あ・・・。ありがとう・・・。」

 

二人でお弁当を食べた後、寝るまで沢村ラジオと付き合っていると、沢村さんが、1600円を私に手渡してきた。

 

私「何?これ?」

沢村さん「お接待です。」

私「え!?いいよ。こんなの。」

沢村さん「いや。お接待やきん。お接待は、断ったらいかんきん!」

私「ああ・・・。ありがとう。じゃあ、お接待されとくわ。」

 

沢村さんには、私の心の奥の叫びが届いているのかもしれないと思った。

 

私「そうだ。沢村さん。こんな風に高知市内に足止め食らって無駄にブラブラいるくらいなら、ちょっと知り合いの高知にいる人のところへ行ってこようかな。明日。電話してみないとわからないけど、明日、その人の所へ泊まって、沢村さんと朝一に合流して岩本寺方面へ向かおうかな?」

沢村さん「あ。別にそれでもええよ。」

私「じゃあ、ちょっと電話してみる!」

 

そう。1周目に足摺岬にある最御崎寺前で出会った愛媛出身高知在住の学生ムロムロだ。

ムロムロは、私の大量殺人事件の話を聞かされた高知で就職すると言っていたバイク遍路をしていたお兄ちゃんだ。

 

私「もしもし。」

ムロムロ「もしもし!あ!!Noisy!!もう、広島へ帰りました?」

私「いや、それが諸事情により2周目を周ってて、今、丁度高知市内にいるんだよね!」

ムロムロ「きゃあああ!!そうなんですね!!それじゃあ、あの時の言葉通りお接待するので、ぜひ!僕の所を宿代わりに使ってもらっていいですよ!」

私「おお。ムロムロ、流石の記憶力!いいねえ!じゃあ、明日行く!飲みに行こうよ!」

ムロムロ「いいですよ~!明日、僕、バイトさえ終われば空いてるんで!」

私「わかった!それじゃあ、今は諸事情で車移動できるから、場所は何処を指定してくれてもいいよ!そこへその時間に行くわ!」

ムロムロ「わかりました!それじゃあ、時間は、5時過ぎ頃に高知大学付近に来れるようにしておいてください!詳しい事は、また明日連絡します!」

私「了解!久々だから楽しみだね!」

ムロムロ「いや~!ほんとに!明日を楽しみにしてますね!」

私「じゃあ、明日!」

 

ムロムロは、心の底から喜んでくれているような弾んだ明るい声で、とても楽しみにしてくれているのが伝わり、嬉しかった。

 

私「沢村さん。そういう事だから、明日の夜は一旦解散ね。」

沢村さん「うん。ええよ。そしたら明日、そこまで連れて行くきん。」

つづく・・・   

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