■2章:遍路2周目■映画のような話は実際起こる
          1.方向の定まらない再出発


DAY48-2

沢村さんは、せっちゃんをひとまず駅まで送りに行って来て、私の自転車を軽トラに乗せた。
それから私をインターネットカフェで降ろした。

私「じゃあ、沢村さん。12:30に迎えに来て!それまでは、ここにいるから。」

そう告げて私はネットカフェで時間を過ごした。
時間になり、ネットカフェの外へ出てみると沢村さんが軽トラで待機していた。

沢村さん「お待ちしてました。」

ん?
この人は、なりきっている・・・。

まだまだ充電を必要としていた私は、今日沢村さんがいる間に、山を全部終了することにした。

そりゃあ、充電だって必要だ。
広島の家をせっちゃんと自転車で一緒に出発してから今日で48日目。
考えてもみてほしい。
ずっと暑い中を重い荷物と共に自転車で山の傾斜と闘い、遍路服と言う制服のような気の抜けない中で走り続けてきたのだ。この先、2周目を走り抜けるにしても、一旦は遍路服を脱ぎ捨て、すっかり解放された状態で気を抜きたい。次へと前向きに進むためにも。
ましてや、最後に高野山でおもいっきり気を抜いて楽しむはずが、私にとっては、最悪の修行状態以外の何物でもなかったのだ。
1周目を終わってから今日この日もまだまだ充電を必要としていた。

人生でもそうなのだと思う。
ずっとずっと真面目に走り続けて頑張り続ければ、いつかバテて、次で結局頑張れないことにもなりかねない。やっぱり、リラックスしたり、無駄に遊ぶ事だって大切なのだ。
私は、特に遊びを大切にしている。
楽しく遊んでいる時こそ、脳みそが活性化されて、次のアイデアを閃くことが多い。
後は、その閃いたアイデアに従って、また頑張り通せばいい。

だから私は、時々人に言われることがあった。
「Noisyは、何故、人よりもふざけて遊んでいるようにしか見えないのに、いざ物事の蓋を開けてみたら、既に手の届かない位置にいて、いつの間にやっていたのかと驚かされて、むしろ嫉妬すら覚える。俺は、私は、あなた以上に真面目にやっているのに。」と。

でも、私から言わせれば、「遊び」も「物事」も、申し訳ないが私は必死にやっているのだ。
きっと、そういう風に思える人達は、「物事」のみを必死にやり、閃いたり次へとつなげる大切な「遊び」を必死にやっていないだけじゃないかと。

私「じゃあ、沢村さん、81番の白峰、82番根香寺まで軽トラで行って、代わりに屋島と八栗は、歩いて登ろうと思うよ。とりあえず、腹減ったから、うどん!」
沢村さん「じゃあ、白峰の途中にいいとこあるんですよ。そこのうどん屋さんへ。」

沢村さんは、とても浮かれていて嬉しそうだ。
そんなにサポートできることが嬉しいのかと言うほど。
そして、当然車の中でも沢村さんのトークは延々と止まらない。
もはや私も相槌を打ちながらも半分以上聞いてなかった。

うどん屋に着いたので沢村さんは私を降ろして、軽トラで待機しようとしている。

私「沢村さん!今日、サポートしてくれるからおごるよ。一緒に食べよう。」

そう言って、二人でうどんを食べた。
沢村さんは、いつも持ち歩いているカセットコンロで袋に入ったインスタントラーメンかうどんを作って、1日に1回程度食べているのを見かけていた。
それ以外は、何を食べているのかいつも不思議だ。

1時半には白峰に着いてお参りをしている間、ずっと後ろに控えるように付いて来る。
お参りをしている間、沢村さんは、その辺のお遍路さんを捕まえては、話し続けていた。

沢村さん「いやあ~。今日ね、このお遍路さんのサポートをすることになって、ピーチクパーチク。いやあ、参ったな~思って、もうまるで僕は付き人みたいで、なんちゃらかんちゃら。」

沢村さんは、相手に聞かれてもいないのに、嬉しそうに自分は付き人のようだと話し続けていた。
話しかけられたお遍路さん達もポカンとした様子で苦笑いだ。その内、喋りやまない沢村さんに迷惑そうな顔をしながら我慢して離れる隙を伺っているように見える。

私「こら!沢村さん!次、行くよ!早く!」
沢村さん「あ!はいはい!」

沢村さんは、話していたお遍路さん達に、嬉しそうに参ったわあと言う格好をして走り出した。
軽トラへ戻って次の根香寺へと向かう。
車の中でも沢村さんは、延々話し続けた。

沢村さん「いやあ~。参ったなあ!ほんとに付き人みたいで。ははは。なんちゃらかんちゃら、ピーチクパーチク。」

私は、沢村さんがあまりにも嬉しそうにしているので捨て置いた。
82番根香寺へ到着し、雨も上がったので、沢村さんに伝えた。

私「沢村さん。私、やっぱりちょっとでも自転車で走りたいから、とりあえずここから下までは自転車で降りるよ。先に行っておいて。」
沢村さん「はいはい!」
そう言って、自転車を軽トラから降ろし始めた。
私「沢村さん、言っておくよ!私は、確実にここの下りは、沢村さんより早いから、今から下っておいて!お参りをして自転車で降りても同じ時間くらいになるから!わかった?今すぐ下って!」
沢村さん「え!?でもNoisyは自転車やきん。」
私「あのねえ。もう一回言うよ!ここの下りは、沢村さんの車より、自転車の私の方が早いから!」

沢村さんは、「はいはい!」とは、返事をしたものの、信じていないようだ。
なので、再度念押しをした。

私「沢村さん、もう一回言うよ!ここは絶対に私の方が早いから、今から下っておいてよ!わかった?」
沢村さん「わかっとるきん!」

とにかく私はお参りへ行った。
戻って来てみると、案の定、沢村さんは、その辺で捕まえたお遍路さん達に話をしていた。
同じ話だ。
自分が付き人みたいで参ったと言う話を嬉しそうに繰り返していた。

私「おい!こら!沢村さん!」
沢村さんは、ハッとして、こちらを振り向いて慌てている。
私「先に行けって言ったでしょ!何やってんの?」
沢村さんは、「ひゃーーー!!」と言いながら、慌てて軽トラに飛び乗って出発した。

私は、すぐに準備を整え、自転車で山道を下り始めた。
直ぐに沢村さんの軽トラに追いつき、抜かして行く。
山の下へ降りて、沢村さんの軽トラが来るのを10分程待つ。

怒られることを覚悟して小さくなって到着した沢村さんが軽トラから降りてきた。

私「こら~!沢村さん!だから言ったでしょ!先に直ぐに降りとけって。どっち向いて何を聞いとんのじゃ~!ごるあ~!」
沢村さん「いやあ!僕も、まさか自転車があんなに早いと思わんきん!」

沢村さんは、相当ビビッて焦っているのだが、どうやら理解している様子だったので直ぐに切り替える。

私「もう、いいから!次行こう。」

沢村さんの軽トラで84番屋島寺へ向かった。
前回は、ケーブルカーで上がって、上でレンタル自転車をして借り物競争かのように打ったお寺だ。

私「沢村さん、今度は、ここを歩いて上ろうかと思うんだけど。」
沢村さん「ええよ。歩くんやったら僕も行くよ。」

私は、沢村さんと一緒に遍路道を屋島寺へと向かって歩き始めた。
往復3キロだ。
例のごとく沢村さんは、ずっと話し続けている。
歩いて上っている時に沢村さんが話し続けてくれるのはありがたい。
相槌だけでいいから、息も切れなくて済む。
それにしても沢村さんは、元気だ。
46歳にして、この体力。
身軽だし、延々と上りで話し続けても息も切らさない。
きついとたまに、「あーーーー!!きついわーーー!」と叫ぶものの、それさえ息を余計に切らせるはずなのに。

屋島寺を打って、山を下り、直ぐに85番八栗寺麓のケーブルカーの駅へ向かった。
沢村さんは、ここで待っていると言うので、私は上りだけケーブルカーで行き、下りは歩いて降りてくることにした。
時間も5時までに歩いて上るには、ちょっと遅かった。
一人、八栗寺へ到着し、お参りを済ませて沢村さんの待つ、麓までほとんど走って降りてきた。

沢村さんと千手観音堂まで戻って来てみると、せっちゃんも戻って来ていた。

せっちゃん「なあなあ。流石に今日は、お風呂入りに行きたない?」
私「そうだね。」

すかさず沢村さんが入り込む。

沢村さん「あ、そしたらぽかぽか温泉があるきん、連れて行ってあげるよ。」

またこうやって沢村さんは、私達に必要とされて、帰れと言われないように次から次へと入り込む。
とは言え、こちらも助かるので沢村さんの軽トラでぽかぽか温泉へと行く。
当然、沢村さんは入らない。

せっちゃんが、帰ったら飲もうと言うので、お風呂上りに缶ビールを買い込んだ。

せっちゃん「なあ。Noisy。今日、帰ったらちょっと話あんねんけど。」
私「ああ、いいよ。でも、沢村さんとかいるけど?」
せっちゃん「そやねん。でもな、ちょっと二人きりで話したい大事なことやねん。」
私「わかった。そしたら、どこか違うところへ行くしかないね。」
せっちゃん「あ、近くに神社があったやろ。あそこに行って飲もか?そしたら。」

耳打ち

つづく・・・   

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