■2章:遍路2周目■映画のような話は実際起こる
          1.方向の定まらない再出発


DAY43-3

高ちゃん、ゴンちゃん、せっちゃんと私で乾杯した。
「乾杯!」

マントラを出発してから高野山へ行き、ここへ戻ってくるまでの話などを聞いてくれて、更に色んなお遍路さんの噂話などで盛り上がる。

ゴンちゃん「あんなあ、直ちゃん(なおちゃん)、とんちゃんって言うなあ、カップルのお遍路さんがおんねん。直ちゃんはなあ、大阪出身の子やねんけど、なんか優しそうな可愛らしい子でな、とんちゃんは、鹿児島出身やねん。
で、二人とも別々にお遍路してて出会ってん。で、今はカップルになって一緒に歩いてるわあ。」
私「そうなんだ!お遍路中にカップルになる人もいるんだね。」
高ちゃん「そやで!直ちゃんはなあ、太ってるって意味じゃなくて、性格がコロンとした感じの可愛らしい子や。ほんまに。で、とんちゃんは、とぼけたおもろい奴や。二人とも20代中盤から後半くらいで若いねん。」
私「へ~。お遍路で一緒に歩いて喧嘩になるパターンもあるじゃん。普段の生活では気づかなくても、遍路はお互いに体力的にも限界になるから、お互いに悪いところが目いっぱい出てしまって、別れるパターンもあるのにね。逆にお遍路で出会って、一緒に歩けるなんて、余程二人はあってるとも言えるよね。」
高ちゃん「ほんまやで。遍路しとったら、ほんまに素にならなやっていかれへんからなあ。」
ゴンちゃん「で、お前らがもうちょっとここにおるなら、直ちゃん、とんちゃんカップルにここで会えるはずやねん。もうそろそろマントラに着くって連絡あったから。」
私「そっかあ。会いたいなあ!それは!」

楽しい話は続きながら、せっちゃんも楽しそうにうなずいたり、可愛らしく返事をしたりしている。
時々、嬉しそうに高ちゃんと顔を見合わせているのも印象的だ。

ゴンちゃん「あ!そう言えば、アメリカ人のダニエルって人も回ってんねんけどな。その人、野宿やのに手ぶらで山谷袋だけぶら下げて、どこのお坊さんスタイルか知らんけど、布を一枚だけ巻いて裸足で歩いてる遍路がおんねん。」
私「えーー!!布一枚で裸足!?野宿なのに何も持ってないって!」
高ちゃん「そやねん。俺らもな、ここに来たからびっくりしてん!」
私「ほんと、色んな人がいるね!ダニエル、会いたいわー!」

私は、ふと今日マントラに到着した時にここの奥さんが言っていた恩田さんの話を思い出して聞いてみた。

私「そう言えば、今日奥さんが、「Noisyとすれ違いでタオルを一枚クルクル回しながら恩田さんが今、今、出て行ったわよ!」って言ってたけど、恩田さんって何?」
高ちゃん「ああ、あの人なあ、変わってんでー。白い遍路服以外は、タオル一枚しか持ってへんねん。山谷袋も何にも。それでお遍路してんねん。野宿やのに。」
私「え?テントも、せめて寝袋も?」
ゴンちゃん「そやで。何にも持ってへんで。タオル1枚しか。それをクルクル回しながら、ブラブラ歩いてんねん。」
高ちゃん「しかも、あの人は、ビニール紐で編んだ草履はいてんねん。」
私「へー。何食べてるんだろ?」
ゴンちゃん「さあ。お供えもんちゃうか?」

遍路界には本当に色んな人がいる。

ゴンちゃん「それでなあ、西川さんって永久遍路さんが時々ここにもくんねんけどな、あの人は、手押し車に1本だけ持ち手が付いてて、それをうまい事バランスを取りながら押していくねん。で、もんすっごい早いねん。でもなあ、あの人は皆と群れたくないから、自分であっちの倉庫の中にテント張ってて、こっちには絶対出てけーへんわ。」
私「そんな人もいるんだ。」
ゴンちゃん「でもなあ、あのおじさんも笑かすで。ある日な、惣菜を持っててな。俺が「これは、何処で買って来たん?」って聞いたらなあ、「え?買ってないよ。落ちてたのを拾って来た。」って言うから、「こんなの何処に落ちてたん?」って聞いたら、普通の顔して「え?あそこのスーパーや。」言うねん。」
私「え!?それって、落ちてないじゃん!」
ゴンちゃん「そやねん!ほんま、あの人なあ!」

正直、お遍路はただ楽しいだけでは済まされないと思った。

高ちゃん「あ、しゅんちゃんって香川の子でな逆打ちで周ってる27歳の可愛い男の子がおんねん。」
ゴンちゃん「そやそや。しゅんちゃんなあ、背が低くてなかなかのイケメンで可愛い顔してんねん。しゅんちゃんはなあ、今、頭がモヒカンやねん。」
私「え?可愛いけど、モヒカン?」
高ちゃん「言うてもな、奇抜なモヒカンちゃうねん。」
ゴンちゃん「頭の前の方にちょこんとモヒカンのせてますって感じやから、なんか可愛いモヒカンや。これから、また周ってたら、どっかで会うわあ!」

動物園


こうやってお遍路の世界では、面白い人達の噂が広がっていくのだと思った。
私のビキニ姿の噂が広まったように。
もはや、「会いたい」と言うより、動物園の様に「見たい」と思った。

そしてお酒も入り、どんどんゴンちゃんの声も大きくなっていく。
そろそろゴンちゃんの声は、香川県中に響き渡っているくらいだろう。

ゴンちゃん「で、密教はやなあ!うんぬんかんぬんで、どうやらこうやらやねん!」

あ、出た。
ゴンちゃんの密教論。
一度話すには面白かったけど、何度も話し込む気はなかった。
すると、高ちゃんが違う話を始めたので助かった。

高ちゃん「あ、そう言えば、遍路してて何処の寺が一番いい意味で印象的やった?」
私「あ、考えたことないね。そう言えばどこだろう?」
せっちゃん「ほんまや!どこやろな?」
私「う~ん。上ってみたら景色も庭も綺麗だったし、杉の大木もよかったから、太龍寺かなあ?」
せっちゃん「そやなあ。太龍寺かなあ?どこやろ?」
私「でも、他にもいい所あったしな。一番、悪い意味でなら驚いた寺はあるけど。」
高ちゃん「それ、何処や?」
私「61番の香園寺。だって、他の寺は、お寺って雰囲気だったけど、あそこだけ何の新興宗教?みたいな感じで、靴脱いでスリッパはいて講堂でお参りしたし。なんか、気分がなえたというか。」
せっちゃん「ああ!そうやそうや!香園寺!ワシもなんやねん、ここ!?思ったで!」
ゴンちゃん「ほんま、あそこ何やろな?歩いて行っても甲斐のないとこやったなあ。雰囲気的に。」
高ちゃん「そやろ!?実はなあ、俺はあそこが一番好きやねん!」
全員「え!?なんで!?」
高ちゃん「俺も初めてあそこに着いたときは、皆と同じこと思ってん。だって、異様やろ?あそこだけ。で、考えててん。なんで他の寺みたいにせえへんかったんかなって。そしたら、あそこだけ、スッゴイ何にも囚われんと、自由な発想で好きにしたわけやんか。誰かに何か言われても。って言うか、大半の人に、あれ何?言われてるわけやし。
そしたら、なんか香園寺だけ、自由な気がしてん。確かに雰囲気はよくはないけど、その自由な感じがええなあ思ってきて。やから、俺は今はあそこが一番すきやねん。」
全員「なるほどね~。」

確かに面白い発想だと思った。
むしろ普段の生活を考え直してみると、私はどちらかと言うと、日本の世界からはかけ離れた考え方をしていて、高ちゃんが言ったとおりの発想をよくすることがある。
だから、むしろ普段の私は、香園寺かあと思った。
私が、「何?ここ?残念!」と思ったところは、むしろ私だった。

香園寺は私


昔からの親友でアメリカ人のトミーがいる。
私の性格上、ついつい親分肌なので日本人だと女の子にしても男の子にしても、私についてくると言う関係性の構図ができてしまいやすい。
なのでこのトミーは、完全なるフィフティーフィフティーなので私にとっては珍しい関係性の友達だ。
頼ってももらえる代わりに、私も完全に信用して頼り切れる。そんな友達。
ギブ&ギブ&ギブ&ギブ&たま~にテイクの関係は疲れてしまうけど、トミーとはギブ&テイクが成り立っている。
せっちゃんとの関係にしても、ギブ&テイクな部分もあるものの完全にその関係が成り立っているとは言えない。
トミーはかれこれ日本に20年住んだ。私が彼に初めて会ったのは、彼が日本にきたばかりで右も左もわからない頃だ。その友達が、時々印象的な言葉を過去に残している。

トミー「Noisyは、他の日本人と全然違う!全然日本人じゃないみたい。」
私「あ、それよく言われるよ!」
トミー「だと思う!全然日本人じゃないみたいで、もっとなんて言うか、アメリカ人みたいって言うか・・・。」
私「え!?私、アメリカ人みたいなの?」
トミー「うーん・・・。それも違う。って言うか、こんなアメリカ人、アメリカでも見たことないわあ!」
私「えええ!!??じゃあ、私は何人なんだよ!?」
トミー「Noisy人?」

------------実際の二人の会話はこちら(興味のある方だけどうぞ。)-----------
Tommy:Hey, Noisy! You are completely different from other Japanese people. You are NOT like Japanese at all!
Noisy:Nope!! I know! I am often told so.
Tommy:Yeah, I agree. Uh, what should I say? You are more like American…? Uh… very much like American…?
Noisy:Oh yeah? Am I?
Tommy:Hmm…. HELL NO! I actually have NEVER seen an American like you in the States before in my life!!
Noisy:Hey man! Come on! What the hell is my nationality, then?
Tommy:You are “NOISY” by nationality.
------------会話終わり------------

トミーがしてくれたそんな話などを思い出していた。
そうかあ。そう言われると香園寺が気になってきた。
嫌だと思っていたことも視点を変えるだけで全く別物に見えてしまう。
もっともっと頭を柔らかくして、視点を変えるだけで全く違う世界が見えてくるのだ。
高ちゃんが私の脳みそをマッサージでもしてくれた気分だった。

高ちゃん「あ、それでなあ、俺はお不動さんが一番好きやねん。」
私「お不動さんを好きだって人は結構聞くけどなんで?」
高ちゃん「お不動さんは、見た目が怖いやろ?でもなあ、中身は優しいっていうギャップが好きやねん。やから今なあ、ここでグラフィックデザインの手伝いをしてんねんけど、お不動さんを描くことも多いんや。」
私「へえ~!そうなんだ!絵をみたいなあ!今度見せてよ!」
つづく・・・   

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