ロンドン五輪が始まり、一週間がたとうとしています。

サッカーの予選に始まり、

競泳競技も9個のメダル獲得に沸いています。

バドミントン女子も決勝進出。

ワイドショーでの有名人たちの一喜一憂ぶりも含めて、

相当ににぎわっていますね。

しかし、柔道は男子が未だ金ゼロだったり、

バレーも苦戦したりと、

なかなか一筋縄では上手くいきません。

だからこそ、それもまたスポーツなんでしょうけど・・・。

 

さて、今回は少し肩の力を抜いて、

実際にどうやって放送がお茶の間に届くのか?というのを、

2004年のアテネ直後に、

本学で行われた衛星授業(8学部同時に行われた教養科目)で講義した内容をもとに、

皆さまに紹介したいと思います。

 

ちょっと聞いてみよう (野口智博公式ブログ・毎週月曜更新)-放送席

ちょっと聞いてみよう (野口智博公式ブログ・毎週月曜更新)-新聞・通信記者の記者席
上の写真は、実際の放送席です。

モニターは2~3台あり、写真のモニターはネットで競技結果を示すものです。

予選から、各組のコース順、ラップタイム、順位などが表示されます。

会場があまりにも大きく、電光掲示が見辛い(8と6が解らないとかよくありますので)ので、

こういったモニターが設置されています。

ここでは、その種目の予選の組が全て終了すると、

瞬時に順位表が出てきて、準決勝進出者が分かるようになっています。

私たちはコーチング経験者ですので、スタートリストに記録を記入して16名数えて、

日本選手や注目海外選手の準決勝進出を判断していましたが、

こういった機器は大変楽にその作業をしてくれますし、大概間違いがないので、

かなり頼っていますね。

手元にあるのは、ストップウオッチ(2台)と資料です。

ウオッチは、ペース計測とストローク情報計測用に、常に2台を持ちます。

資料は、施設内にあるパソコンからダウンロードした公式の選手プロフィールや、

コース順や競技歴が記入されたシートのコピーで、

コース順のシートはアナウンサー、解説者が共有します。

このシート作成の仕事、かなり大変なので、

時折解説者とアナウンサーで手分けして作成したり、

数名のアナウンサーが助け合って作成していたりします。

ちなみに、当時日本テレビのコース表はA4縦で、

NHKのコース表はB4横になっているのが特徴でした(笑)。

 

その下の写真は、通信や新聞記者用の記者席です。

プッシュボタン式の電話と、もうひとつちょっと古い形の電話が確認できます。

ここは共同通信のブースですが、この旧式の電話機は、

実は日本の共同通信社の運動部デスクと直通(!)になっているのです。

予選から、一組終了するたびに、記録情報をここから日本のデスクに伝えています。

選手のインタビユー談話なども、ここから日本のデスクに伝えられるので、

いち早く文字にして、ニュースにすることができるわけです。

 


ちょっと聞いてみよう (野口智博公式ブログ・毎週月曜更新)-プール内プレスセンターの作業場2
ちょっと聞いてみよう (野口智博公式ブログ・毎週月曜更新)-プール内プレスセンターの作業場1
ちょっと聞いてみよう (野口智博公式ブログ・毎週月曜更新)-たまに緊急記者会見がある

この段の上の写真は、プール施設内にあるプレスルームです。

各机にLANがついていて、ネット環境としては快適な環境です。

各国の記者は自分の社のネームのある机で作業をします。

真ん中の写真は私が共同通信社から借りたデスクですが、

横の席はSwimnews. comの記者たちでした(笑)。

「いつもランキング情報ありがと」と伝えると、向こうの記者たちも喜んでいました。

下の写真は、緊急記者会見の模様です。

会見場はプレスルームの下階にあるのですが、

会見が終わっても質問が続く場合は、

こうやって階段下に沢山の記者が集まります。

この時は、男子100m背泳ぎ決勝で、

レース直後、電光掲示にアーロン・ピアソル選手のターンに違反があったと伝えられたのに対し、

アメリカのチームディレクターが抗議し、それが覆ったことを公式発表した後、

アメリカのディレクターを記者が囲み取材したときのものです。

ものすごい剣幕で話をしていましたが、

五輪の場でもこういったトラブルがあるんだな…と驚かされました。

今回、判定に関するトラブルがいつも以上に多いように思えますが、

各会場では、きっとこんな風に混乱していることだろうな…などと想像しています(笑)。


ちょっと聞いてみよう (野口智博公式ブログ・毎週月曜更新)-IBC1

ちょっと聞いてみよう (野口智博公式ブログ・毎週月曜更新)-IBCメールボックス

この段の上の写真は、IBC(インターナショナル・ブロードキャスティング・センター)内の様子です。

IBCは、映像関係のメディアのセンターで、

新聞・雑誌等は「MPC」(メディア・プレス・センター)という場所が別途作られています。

見てわかる通り、凄く人気がないですよね(笑)。

各部屋の中には映像機材が多く、冷房が凄く効いていて、女性は長袖でないと結構寒いところで、

且つ、こんな感じで各部屋の防音がなされているため、廊下は本当に人気がありません。

時折トイレに行く途中で、有名人と遭遇したりしますが・・・。

 

廊下の横にいろいろなドアがありますが、これが各国のテレビ放送センターとなります。

日本は「JC」(ジャパン・コンソーシアム:民法・NHK連合)と表示された部屋がありますが、

その他にも日テレ、テレ朝など、民法各部屋が設置されています。

よくメダリストが朝のワイドショーなどでたらいまわしにされていますが(笑)、

実際には隣の部屋に移る程度なので、選手には睡魔以外の負担はありません。

また、各部屋(局)はメダリスト大歓迎モードなので、

「弁当ありますよ」「ジュース何にします?」といった形で、凄い歓待を受けたり、

アイドルや芸人などと話ができるわけで、

そんなことから、メダリストになったことを実感するわけです(笑)。

下の写真は、MPC、IBC、各会場に設置されたメールボックスです。

重要な記者会見の案内(リリース)や、各競技の公式競技結果がここに入ってきます。

ネットでももちろん確認できますが、紙ベースでもきちんと配布されます。

北島選手の、あの有名な「超気持ちいい!」も、

ここではちゃんと英語化されて配布されていました(笑)。

また、IOCからの公式会見のリリースから、ArenaやSpeedoなど、

業者のプレスカンファレンス(次年度の新商品案内や契約選手情報など)のリリースもここで流れます。

 


ちょっと聞いてみよう (野口智博公式ブログ・毎週月曜更新)-各局との交信

ちょっと聞いてみよう (野口智博公式ブログ・毎週月曜更新)-IBC2

これはIBC内の映像センターですが、

ここでは実際の放送で流されている映像が集められています。

各テレビは別々の会場の国際映像を受信していますので、

このエリアに来れば、どの競技でも見ることができるわけです。

休憩中の通訳の方や、運転手、ボランティアの人たちが、

お茶を飲みながら観たい競技を見て、歓声を上げていました。

我々も、昼寝の時などに利用していました(笑)。

下の写真は、各部屋に貼られているメダル獲得状況です。

ポストイットを用いて、メダル獲得する度に更新されていきます。

スタッフもみんな日本のメダル数を数え、励みにしながら放送を出しているのです。

 


ちょっと聞いてみよう (野口智博公式ブログ・毎週月曜更新)-映像チェック室

ちょっと聞いてみよう (野口智博公式ブログ・毎週月曜更新)-映像切り替え

取得された画像は、ニュース編集(上)や放送の編集(下)に回っていきます。

特に大変なのは、ここには出てきませんが、

会場近くの放送センターと日本の放送局との交信です。

NHKは、CMが入らないため、そのまま流せるのですが、

民法はCMが入るタイミングがなければならないので、

それに合わせて画像の切り替えなどが必要になります。

したがって、日本との綿密なリレーションシップがなければ、

綺麗に放送を出すことはできません。

また、一つの競技放送中に、別の競技の決勝がスタートするときなど、

急なスイッチに対応しなければならないことがあり、

ここでの仕事は本当にタフさを求められることがわかります。

加えて、注目競技は日本から独自のカメラを会場内に入れています。

(日本選手がアップで映る際の多くは、

国際映像でなく、持ちこみカメラによるものです)

その持ちこみカメラの挿入タイミングを計るのも、大変な作業ですよね。

 

ですので、日本でテレビを見ていて、

時折変な切り替えがあった…と気づいても、

私は一切の文句を言いません(笑)。

民法さんはCMでの広告料で放送を作っている事情がありますので、

CMにかぶるような切り替えには抗議が厳しいのです。

その狭間に立って編集に入るプロデューサーたちは、

本当に尊敬に値する仕事人ではないかと思います。

 

ざっと放送が日本に入るまでの仕組みも含めて紹介しましたが、

これから後半に入るオリンピック中継、

我々も様々な感動シーンを期待します。

しかし、放送を出している側も、沢山の苦難を乗り越え、

我々に放送を供給してくださっていることを頭の片隅に置いて、

少々の間違いや切り替えミスには寛大に心を持ち、

放送制作者の皆さまの睡眠不足を心配したりしながら、

私自身は、放送を楽しみたいと思っています。

まぁバラエティの騒ぎには少々飽きてきましたが(笑)、

リアルに戦っている選手や、放送を出す現地の関係者の仕事には、

一定以上の理解をもって観戦したいと思います。

後半戦、やる方は頑張っていますから、見る方も頑張って行きましょう!