『ガンが自然に治る生き方』(3) | 松野哲也の「がんは誰が治すのか」

松野哲也の「がんは誰が治すのか」

治癒のしくみと 脳の働き

『ガンが自然に治る生き方』(3)


 キャベツを多量に摂ってがんを治した等、第1章「根本的に食事を変える」では、乳製品の摂取をやめるとか、断食して乳癌の問題がなくなった例も挙げられています。
 しかし、私には、食物そのものではなく、食べることを介して、生き方や考え方が根本的に変ったことが、治癒に繋がったように思えてならないのです。

 食べることに楽しみを見つけ、歓びを感じたこともよかったのではないでしょうか。
 断食してから、少しずつ「正しい」食べ物を摂り始めた女性は、新しく食べはじめたものがとてもおいしく感じられたと言っています。
 

 私もがんの確定診断をうけてから、しばらく寝込み、和風の、私にとってはあまりおいしくない食事を嫌々摂っていました。しかし、外出するようになって、レストランで久しぶりに食べたステーキをこよなくおいしく感じたことは忘れることができません。



 私は、「玄米菜食にしたらよいでしょうか」といったような質問を受けることがよくあります。日本ではこのような食事療法の本が出回っているからでしょう。しかし、著者によって何を食べたらよいのか悪いのか、見解が異なる点に問題があるようです。
 
 「ゲルソン療法」が結核の治療に威力を発揮したことは確かです。しかし、私は高校1年生のときの同級生が肉腫の術後に、日本人向けに一部改変された同療法を続け、再発がない例を実際には知るのみです。人参ジュースを毎日8杯飲むとか、コーヒー浣腸をするそうです。もうそろそろやめたいと彼は言っていましたが。
 イギリスの調査団がメキシコのティファナにあるゲルソン・クリニックを訪れ、同療法のがんに対する有効性に関する報告を行ったことがあります。私はこれが実情に近いのではないかと思っています。
 菜食中心の食事療法により、細胞内外の電解質・イオン濃度のバランスを整えることは、免疫力を亢進するという面で有効かもしれません。しかし、進行したがんを消滅させるほど強力な抗腫瘍免疫態勢を誘導することができがるのでしょうか。


 要は、どのような食事療法にしても、「これがよい」と信じ、積極的にとりいれること自体に意味があると私は思っています。
 その根底にあるのは、「変わる」ことです。

 例えば、玄米は良く噛んで食べなければなりません。それによって「生かされている」ことに気づき、「今この一瞬を生きること」を意識するようになるのです。感謝の念が伴うこともあるでしょう。「意識が変わり」、「生き方が変わる」と言い換えてもよいかと思います。
 ですから、米を主食としない欧米人の方がマクロビオティックスには向いているのではないかと思います。
 実際に、同療法によって自らのがんを治したフィラデルフィア在住の医師の体験談を思い出しました。彼も食事療法をとり入れるだけでなく、折に触れて、人のいない閑散として静謐な教会を訪れ、自己と対峙し、瞑想状態で「生の実相」を感じとっています。
 もっとも玄米をよく噛んで食べることは迷走神経(副交感神経)の活性化につながりますので、放出された神経伝達物質のアセチルコリンがキラーT細胞を活性化するというシナリオも考えられます。


 バクテリアの遺伝子の変異、すなわち突然変異を目安に発ガン性があるかどうかを簡便に判定できるエームス・テストという検査法があります。
 これによると、野菜や果物にも発がん性物質が含まれているのがわかります。無農薬や有機栽培であっても例外ではありません。
 「食物を摂って生きることは健康に悪い」のです。



 アメリカに来たときから通っていたカイロプラクターの治療室には”We are what we eat”(身体は食べたものからできる)という標語の額が壁に掛けられていました。
 私は、いつも”We are what we think”(意識が身体に影響を与える)に変えた方がよいのではないかと思ったものです。
 彼は、プロテイン・パウダーやサプリメント類を摂取し、通常の食事には全く関心を示さないユダヤ系リトアニア人でした。
 
 予兆だったのでしょうか。朝から体調がすぐれず、研究室に「今日は休む」と電話してから、彼の施術を受けに行ったときのことを思い出します。
 家に戻る途中、急に気持ちが悪くなり、車をユダヤ人コミュニティ・センターの庭に入れました。そして、芝生の上に少し嘔吐したのです。横についていた妻は、「頭はおかしいと思っていたけれど、身体まで悪くなるなんて!」と嘆きました。不慣れで勝手がわからない異国の地なので、不安も一入だったのでしょう。
 がんの診断が確定すると、彼は「代替医療」に関するビデオを貸してくれると言いました。しかし、私は関心を示しませんでした。それに関しては、以前から米国連邦議会技術評価局が、「通常医療の研究に莫大な予算をかけたわりには、見るべき進歩が殆どなかったのだから、駄目もとで代替療法も研究すべきだ」と提出したOTAレポート等を読んで知っていたからでした。その中に自分によいと思えるものはないと直感的に感じました。そして、彼の所へ行くのもやめてしまったのです。



 食事療法に話を戻しましょう。 
 繰り返しますが、自分が納得できる療法を取り入れることもよいでしょう。しかし、何を食べたらよいかではなく、食べたいおいしいものを食べ、心から楽しむことが何よりも重要ではないかと私は思っています。
 歓ぶことは、いわゆる「ゼロ・フィールド」の一環につながることでもあり、自己治癒力の誘導に極めて重要なことなのですから。
 菜食の方が身体に良く、おいしいと実感する人も多いでしょう。それでよいのではないでしょうか。

 私自身が、治療を拒否し、がんの治癒を模索していた頃、日本に行って良く食べたのは、カツ、天ぷら、焼き肉、それにインドカレーでした。日本のインドカレーはナンも窯で焼きたてで、どこの国よりもおいしいと思っています。



 昨年、がんコンベンションで話をするよう要請されました。演者には身体に良いお弁当が用意されていました。私は、壇上に上がると、ステーキを食べ、ワインをいっぱい飲んできたと前置きしてから、スピーチを始めたのです。
 同コンベンションでは、アメリカで開発された代替療法の効果を検証することも重要な課題となっています。その中には食事療法も含まれます。主催者がアメリカで学んだ栄養学の専門家であるだけに、食事等による血中ミネラル濃度バランスも興味の焦点の一つとなります。
 そのためでしょうか。今年は演者になるよう声がかかりませんでした。



 第2章は「治療法は自分で決める」です。

 同書に登場するがんから劇的な寛解を遂げた人たちは、皆、医師のいいなりにはなりませんでした。治療法は自分で決める - それが何より重要だと考えていたからです。

 韓国出身、二児の母であるスンヒ・リーの話です。彼女はステージⅣの卵巣がんだと診断されました。医師の宣告は余命6か月。彼女は意を決して積極的に自分で治療法を選び、劇的な寛解に至ったのでした。
 彼女にとっての治療法はゲルソン療法やマクロビオティックスなど、食事による代替療法でした。
 私も、患者自身が心の底から納得した方法でなければ、真の治癒は起こりえないと考えます。

 ハワイの祈祷師、サージ・カワリ・キングは言っています。
 「治癒の力は、すべてその人の中にあります。身体は自らの力で治るのです。治療者の役目は、患者の無意識や心身のあり方に働きかけて、緊張をほぐし患者が本来持つ治癒の力を解放つことです」

 まさに現代医療にはこのような考え方が完全に欠落しています。医師は、がんがあれば、それを除去するか、殺すことだけが治療だと思って(思い込まされて)、毒薬の抗癌剤をやみくもに使い、殺人ビジネスに加担しているのです。



 生き方を変えることはとても重要なことです。
 エリン・ジェイコブスは44歳のときステージⅠの乳がんと診断され、摘出手術を受けました。抗がん剤治療の末に同じ乳がんで死んでいった母親と同じ道を歩みたくないと、彼女は再発防止のために、生き方を変えなければと思い、手当たり次第、むさぼるように資料を読み漁りました。そして、食事を変え、免疫力を高めるサプリメントを摂りはじめたのです。更に、ストレスに満ちた債権トレーダーの仕事を思いきってやめ、家族との団らんの時間をなるべく多く持てるようにしたのでした。7年経った今も、がんの再発はありません。


 父親の勧めで嫌々なった弁護士を辞め、長年の夢だったオーケストラ楽員になることで、脳腫瘍が治った例も、以前読んだことがあります。


 上海で中国伝統医学的治療家として活躍するアメリカ人のブライアン・マクマホンも言っています。
 「がんの寛解や、難病が好転するといった現象は、医師にひき起こせるものではありません。患者が自分の力で起こすしかないのです。・・・・・体内の気の流れをつねによくしておくためには、まず自分の内側に意識を向ける訓練が欠かせません」
 つまり、「気」のバランスを整えるために、自分を内側から変えていく必要がある。だから病を治すには、生き方を変え、気の流れをよくすることがとても重要だと言うのです。

 まさにそのとおりだと私も思います。



S字結腸(大腸)癌を発症した私は、治療を拒否し、自らを実験台にして治癒を模索しました。果物はよく食べますが、肉類や脂っこい食物を好み、食い意地が張っていましたので、玄米や菜食を主とするような食事療法をとり入れる気にはならなかったのでしょう。最初のときだけ、断食に近い状態だったとはいえますが。

私が行っていたのは、自分で調製したプロポリス抽出液を飲み、カウントダウン呼吸法や身体の動きに注意を向けることでした。しかし、これが縁となり、私のものの考え方は180度転換しました。
今まで実験のことしか頭になかった生活から一転して、「宇宙の成り立ち」に興味を持ち、読書を始めました。また、がんの特効薬をつくらなくても、意識の方向づけを介してがんを治せればよいと思うようになったのです。全く新しい世界が眼前に広がりました。そして「意識」に関する勉強を始めたのです。それは、今までにない歓びを私に与えてくれました。更に、「生命の実相」に触れるヴィジョンが何度も突如私を襲い、私の生き方、考え方を変えたのでした。まさに「実存的転換」と言ってもよいほどに。

一方、先ほど述べたカイロプラクターの奥さんは日本人でした。彼女は私のことを心配され、小山美佳さんというヒーラーを紹介して下さったのです。
彼女は私にレフレクソロジ―を施し、<気>を送ってくれました。


私の場合は、自分で治療法を選択するというよりは、<縁>に導かれて<運>が変わったと言えましょう。この場合、<気>も関与したと思われますが。


 これが「がんを治すのによい」と思えるものを見つけられることは、とても幸せな<縁>に恵まれていると言えましょう。それは各人によって異なるでしょう。私たちが「幻想」の世界に生きているからです。
 ともかく、自分にとってよいと思われるものをとりいれ、これに没頭して、症状のことを忘れることは、<気>の流れをよくすることを介してがんが良好な経過を辿る「場」を与えてくれるものと、私は理解しています。