複雑な思いで見た紅葉 | 村上信夫 オフィシャルブログ ことばの種まき

村上信夫 オフィシャルブログ ことばの種まき

元NHKエグゼクティブアナウンサー、村上信夫のオフィシャルブログです。

ことしは、いろんな場所で紅葉を楽しめた。

一か月前は、北海道で紅葉が盛りだったが、いま関西が盛りを迎えている。

ことしは、ひときわ鮮やかなようだ。

丹波市にも紅葉の名所は数々あるが、

隠れスポットとして教えてもらった市島の石像寺に行ってきた。

それはそれは見事な紅葉だった。

石像寺は、かつて、文人墨客が頻繁に訪れた名刹古刹だ。

斉明天皇の元年(655年)に創建された。

明智光秀の丹波攻めで焼失し、本堂は1645年に再建された。

寺の背後の山腹にある巨石群は、磐座(いわくら)と呼ばれ、

崇拝の対象とされてきた。寺の名の由来にもなった。

昭和47年、庭園設計の名人・重森三玲さんによって、

本堂正面に石庭「四神相応の庭」が作庭された。

青龍、白虎、朱雀、玄武の四神をイメージした石庭は、

日本庭園史に特筆されるものとして高い評価を受けている。













ところがである。

名園名刹の石像寺は、今年8月の豪雨災害で、

裏手の山が崩れ、 土石流が本堂や庭園を襲った。

本堂や庭園などに土砂がうず高く積もり、 最大で2㍍ほどの高さに達した。

本堂は、屋台骨が無残な姿をさらしている。

「四神相応の庭」 も見る影もなくなった。

東日本大震災の直後にも、誰にも観てもらえなくても桜は咲いた。

いまだに、花見が出来ない場所もある。

丹波の名刹名園の地にも、紅葉の季節は訪れた。

例年より鮮やかな紅葉が儚げだ。

素晴らしい紅葉を愛でながらも、豪雨の爪痕に後ろ髪をひかれ、

複雑な紅葉狩りとなった。