ひふみんの敗北の極意 | 村上信夫 オフィシャルブログ ことばの種まき

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元NHKエグゼクティブアナウンサー、村上信夫のオフィシャルブログです。







この対局姿から、おおよそ人柄がわかろうというものだ。

独特のふるまい、愛嬌のあるしぐさから「ひふみん」と呼ばれる人気者だ。

将棋の加藤一二三九段。

千二百三十九段とも読める。こんな高段者は、加藤さんだけだ(笑)

74歳だが、バリバリの現役棋士だ。

加藤さんは、いちばん負けている。きょう現在1127敗。

こんなに負けている棋士は、加藤さん以外にいない。

ただし、加藤さんは、1316勝もしている。

こんなに勝っている棋士は、加藤さん以外にいない。

羽生さんもまだ及ばない。

つまりこれだけ負けが多いということは、裏返せば強い証拠だ。

加藤さんは、著書の中で、「負けは誇るべき金字塔だ」と言い切る。


以下は、ひふみんの敗北哲学である。

敗北がもたらす収穫は枚挙にいとまがない。

一時的な負けを引きずりあきらめたら、それこそが真の敗北だ。

敗北を糧として立ち上がるべきだ。

負けて強くなる。負けた直後に自信が湧く。これぞ敗北の極意。

勝ったあとに自信は湧かない。


将棋は「最善手」を求めて指し続ける。

将棋とは偶然に勝利するものではない。

「最善手」を積み重ねていけば必ず勝利出来る。

将棋と同様、人生にも「確かなもの」があるはずだ。

自分の「魂」を失わない限り、人生に絶望はない。


本には、ポジティブなひふみんが満ち溢れている。

負けても腐らない。負けても自己肯定が出来る。

むしろ負けから得られる教訓を重んじる。

だから、これだけ負けられるのだろう。

そして、勝つことも負けることも、自分の意志を離れたところにあると

会得しているから、泰然自若としていられるのだろう。

いやはや、ひふみんはすごい。