岩瀬昇のエネルギーブログ #230.9月末の産油国協議は成功する!? | 岩瀬昇のエネルギーブログ

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  811日(木)、原油市場は大幅上昇で終えた。WTIが+1.78ドルの43.49ドル、ブレントが+1.99ドルの46.04ドルである。

 朝方は「IEA8月月報」が、2016年の需要は140BD増で前月と同じだが、2017年の見通しを130BD増から120BD増に下方修正したことから下落していたのだが、9月末の産油国協議に関するサウジ・ファーリハ・エネルギー相の発言が伝えられたことから大幅上昇に転じたようだ。

 FT ”Saudi minister says Kingdom could help rebalance oil market” というタイトルの記事がまとまっているので紹介しておこう

 

Saudi Press Agencyへのメールが間違ってジャーナリストに送られたもの。本来はインタビュー記事の原稿の一部。

・ファーリハ・エネルギー相は「もし市場がバランスするために行動する必要があるなら、サウジはOPECおよび非OPEC主要産油国と協力して対応する」と発言。

・予想外の熱波により暑い夏を迎えたが、効率化策が功を奏しサウジの国内需要増は昨年より少なかった。

7月の記録的な増産は、旺盛な夏季の国内需要のみならず世界中にサウジ原油への需要があるから、と指摘。主要市場であるアジア向けの価格を大幅に引き下げ、イラン、イラク、ロシア等との市場シェアー競争には対抗する意思を示している。

6月に、市場に原油を溢れさせる意図はないと発言しているファーリハは、リバランスは順調に進行しているが、大量の在庫があるので「時間がかかるだろう」としている。

・アナリストたちは、4月に失敗していることもあり、9月の協議でいかなる生産量に関する合意も難しいだろう、と見ている。

・また「現状の低価格は持続しえない」、最近の下落はヘッジファンドの動きが主因、「投資と生産の減少傾向を逆転するためには価格が上昇しなければならない」としている。

 

 ううむ。

 一読して筆者は「今回は成功するのでは」との感を持った。なぜなら、サウジ以外の産油国は、現状ほぼ生産能力に近い生産をしているからだ。

 各国の最近の生産実態を、810日(水)に発表された「OPEC月報8月号」から見てみよう。

イランは、次のように昨年実績から80BDほど増産し、経済制裁以前の水準に戻っている(参考までにサウジの生産量も併記しておく)。(単位:百万BD

     2015  1Q16  216     5    6      7

 イラン  2.840    3.096    3.595    3.560   3.617    3.629

 サウジ 10.123  10.147  10.294   10.242  10.407  10.477

 

 ロシアについては次のように、現状がほぼピークとしている。すなわち201616月平均は1,104BDだが、712月は13BD減の1,091BDとなり、2016年通年が1,098BD2017年平均は4BD減の1,094BDと予測している。

 

 このように各国とも9月末の協議で、最近の生産水準で「Freeze=据置」することに合意しても、失うものはほぼ無いが、市場が好感して価格が上昇すれば収入増というメリットがある、と筆者は判断するが如何なものであろうか。

 

そう言えば、最近動向が報道されていないが、サウジの副皇太子はこの「協議」にも反対するのだろうか?