岩瀬昇のエネルギーブログ 139.シェル、BG買収成立に大きく前進 | 岩瀬昇のエネルギーブログ

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今日、1月27日(水)、シェルの経営陣はオランダのヘーグで開催された株主との会合で、BG買収にグリーンライトを勝ち取った。83%の株主の承認を得たので、残るは明日のBG株主の承認取得だけになった。よほどのことが無い限り、215日には買収が正式に完了する見込みだ。

 FT ”Royal Dutch Shell shareholders vote for BG takeover” と題する1月2712:52pmの記事を参照されたい。

 我々の関心の高い原油価格についてシェルのCFOは、中長期的に原油価格がバレルあたり4050ドルに留まることはありえないと言明している。かねてより同社CEOが言っているように、60ドルくらいになる、と見ているのだろう。CFOは加えて、買収するBG保有の生産案件はほとんどが生産コスト20ドル以下だ、と発言している。

 また、株主の中にはCOP21合意からくるCO2削減目標を達成できるかどうかということに、より関心が強い者もあり、買収反対株主の中には、再生可能エネルギーにもっと金を使うべきだ、という意見もあったとのことだ。これは非常に興味深い。

 さて、これが意味することは何だろうか?

 筆者はこう考える。

 昨秋、BPのグループ・チーフ・エコノミスト(BP統計集の作成責任者でもある)のSpencer Daleが行ったスピーチ “New Economics of oil” で指摘しているように

・シェール革命により石油が枯渇することはほぼ無くなった

・だから石油価格は必ず上昇するとは言えなくなった

・技術革新の影響が大きいが、価格変動と生産量の連関性が強くなった

・価格のボラティリティは金融との連動性が高まった



これらはすべて事実だが、現在の技術水準では、現行消費量に見合った9400万バレル/日水準の生産を維持するためには70ドル程度の価格が必要なのも事実だ。50ドル以下で推移すると、世界全体の現在の石油消費量の半分以下しか供給できないことになる。

先進国を中心に効率的利用技術の促進が進むのも事実だが、向こう数十年間、現在の半分以下の供給量で世界経済が維持できる絵はどうやっても描けない。従って、需給ギャップの推移により価格の上下動はあるだろうが、BG買収の効果を考える場合、中長期的に60ドル程度を前提としてもおかしくない、というシェルCEOの見方に筆者は納得できるのである。

もし仮に、価格が50ドル以下でしばらく推移すると石油会社経営陣の間にコンセンサスが出来上がるならば、90年代末に起こったようなメガM&Aが業界生き残りの唯一の解決策になるはずである。その意味では、石油開発業界における大会社間のM&Aの動きを注視することも、将来の価格動向を分析するために重要だろう。