岩瀬昇のエネルギーブログ

エネルギー関連のトピックス等の解説を通じ、エネルギー問題の理解に役立つ情報を提供します。


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 若い友人が憂えていたのはこういうことだったのか。

昨日(613日)の朝日新聞社説「資源と安保 自衛隊より調達努力」を読んで、筆者は大きくため息をついている。あまりにも多くの誤解に満ちているからだ。

世論への影響力が強いマスメディアは、もう少しエネルギーリテラシーを持って欲しい。

朝日の誤解を端的に指摘すれば、次の通りである。

1.「BP統計集2015」が「生産量でアメリカがサウジアラビアを抜いて第一位になった」と伝えているのは、「石油(Oil)」であって「原油(Crude Oil)」ではない。これは5.につながる。

2.シェールオイル・ガスの生産は長い間「技術的」にではなく、「経済的」に出来なかった。

3.残念ながら現在の日本では「エネルギー安全保障論議」はほとんどされていない。

4.「中東」にリビアを含めるのは妥当ではない。

5.アメリカが「輸出国に転じる」可能性は、ほぼない。

6.中国は「石油消費国」として日本との共通性は持っていない。

7.「国会論議のような対中脅威で原油市場は染まらない」という文章はまったく意味不明。

ひとつずつ解説しよう。

1. 弊ブログの前号(71.「BP統計集2015」をどう読むか)で指摘したように、「石油Oil)」は「原油(Crude Oil)」とは異なる概念である。石油とは、原油以外のコンデンセートとかNGLNatural Gas Liquid)等を含む広義の概念だ。アメリカの石油生産量が伸びているのは主にNGLの生産量増加に因っている。NGLとは、EIA(米エネルギー情報局)が統計上「Natural gas plant liquids」としているように、天然ガスに含まれる液体分のことである。なおアメリカには、BP統計に含まれていない「Bio Fuel」という液体炭化水素の生産が別途100万バレル/日ほどあることも見落としてはいけない。

2.シェール革命は、アメリカのワイルドキャッターであるジョージ・ミッチェルの執念によって1998年に突破口が切り開かれ、始まった。シェール層からの生産は、それまで技術的には可能だったが、経済性を確保する方法が見つかっていなかったのだ。利用されている水圧破砕は1940年代後半から、水平掘削に至っては1929年に使用されている。詳細を知りたい方はぜひ弊著『石油の埋蔵量は誰が決めるのか?』をお読みください。

3.残念ながら、我が国においてエネルギー安全保障論議はまったく行われていない。社説が指摘している「国会論議」は、安全保障関連法案討議の中で「ホルムズ海峡が閉鎖された場合の機雷除去」という非論理的な政府説明に対する議論のみであって、とてもエネルギー安全保障論議とは言い難い。昨年4月に発表された「エネルギー基本計画」が電源燃料論議に終始しているのも同様である。

4.「中東」にリビアを入れるのは普遍的なのだろうか。経済産業省の「資源エネルギー統計」でも、リビアは「北アフリカ」に入れており、「中東」ではない。英字紙では「MENA」として、中東(Middle East)と北アフリカ(North Africa)を意味することが多々あるが、「Middle East」にリビア等の北アフリカを入れるケースは寡聞にして知らない。

5.「BP統計集2015」によると、2014年のアメリカの石油生産量は1164万バレル/日で、消費量は1904万バレル/日である。Bio Fuelが約100万バレル/日あるので、640万バレル/日ほどを輸入に頼っていることになる。今後のシェールオイルおよびNGLの増産は輸入依存率の軽減にはなるが、輸入が完全にゼロとなり、純輸出国になるという予測は、筆者の知る限り誰もしていない。アメリカが目指しているのは、国産に加え、自らの影響力が有効に働く(とアメリカが思っている)米州内からの輸入だけで賄えるようにしたい、というものだ。

 また、取引従事者なら誰もが知っていることだが、原油取引においては「品質保証」という概念はない。生産物をそのまま(as is)引き取ることになっている。アメリカ産シェールオイルあるいはNGLは、生産地が特定出来ないためどのような品質のものが供給されるのか分からないという不安感が残る。昨年秋にテストカーゴが輸入されたが後続がない、ということは、この不安感の証左だろう。

6.中国との対話を各方面で活発化すべきだ、という意味でなら理解出来るが、「石油消費国」として共通の利害が存在する、とはとても思えない。「BP統計集2015」によると、中国の一次エネルギー消費量は日本の6倍以上だ。石油に限っても、中国は1106万バレル/日消費しており、生産量も425万バレル/日と日本の消費量430万バレル/日に匹敵する。このように中国は大産油国であり、大消費国である。残念ながら我が国との「共通性」はほぼない。

7.「原油市場が染まらない」とは何か。残念ながら浅学非才の筆者には理解不能で、解説のしようがない。なぜここだけ「文学的」なのだろうか? どなたか解説して下さい。

 日本の多くの人にエネルギーを理解して貰おうという弊ブログの趣旨は当分のあいだ有効のようだな。

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