「望む声」と「阻む環境」 | 会計事務所応援 ブログ

「望む声」と「阻む環境」

みなさん、こんにちは。


ネットバンキング情報やカード情報から
仕訳を自動作成するシステム。


領収書など原始資料をデータ化し、
そこから仕訳を自動作成するシステム。


各社で精度の良し悪しの差はあれ、
今後標準機能として財務システムに
搭載される日が近づいているということは、
どなたでも想像できることではないでしょうか。


その流れを象徴するように、
ITの進化によって、一番仕事を
減らすことが予想されているのが会計業務
という話題がいくつかの記事に載っていました。


日本でもかつて熟練工の手作業によって
行われてきた工場の仕事が、
オートメーション化の波で
一気に機械化されていったという歴史がありますが、


税理士業界にとってそこまで
ドラスチックには進まないものの、
オフィスオートメーション(OA)という
言葉にもあるように、
事務業務はより精度の高いレベルで、
自動化、効率化が進むことは間違いありません。


事実、仕訳自動作成に関する
企業様、会計事務所様からの要望は多く、


経験者の人材不足や、人件費の高騰、
業務効率化などが主な要因として挙げられますが、
経営サイドとしてそのような要望になるのは、
当然の動きなのかもしれません。


ところが、
現場サイドとしてはどうでしょうか。


税理士業務の一端という建前こそあれ、
事実上記帳関連業務に関する時間的拘束は
かなりのシェアを占め、
逆にいうとその部分が
儲けの源泉になっているような事務所にとって、


人件費の削減などには効果を発揮するものの、
顧問先様からの収入そのものが
減少してしまう要因にもなる
もろ刃の剣のような財務システムの機能アップは、

はたして心の底からウェルカムなのでしょうか。


とはいえ顧問先様にとっては、
メリットしか考えられないこの仕組み、
使わない手はありません。


今後、どんなに会計事務所が後ろ向きな

行動に終始したところで、
ITの進化に前向きな事務所に
顧客が移動していくだけなのは容易に想像がつきます。


そこで、
「ウチの事務所は、仕訳の自動化
 システムを積極的に導入していこう!」

と所長先生は宣言したとしましょう。


ところが、
老舗の事務所になればなるほど、
優良顧客はベテラン職員が握っています。


ITリテラシーの高いベテランさんばかりなら
問題はありませんが、
実際にはなかなかそうなっていないのが実状。


所長先生もそのあたりの知識に疎いとなれば、


「別に慌てて今始めなくても、

 システムよりも手作業の方が
 早くて正確だし、
 もっと世間に浸透してから進めても...」


という先送りの雰囲気が事務所を支配します。


PC、スマホ世代の若手職員から「???」
という反応があったところで、
その雰囲気のなかに小さな声は
大抵かき消されてしまうもの。


仕訳の自動化だけでなく、
このような環境によって新しい技術の採用が
先送りになって行くさまを、
これまでに何度となくこの目で見てきました。



システムの進化は、
誰でもそのパフォーマンスを

より簡単に使いこなせるように
改良がくわえられていることは間違いないのですが、


裏を返せば、進化するシステムを
いかに従来の業務を変革しつつ取り入れていくか、
判断、導入、整備する役割を担う
方にとっては、
これまで以上にその能力を

問われると言っても過言ではありません。



残念ながら、ITにまつわる判断の根拠は、
学校の勉強や資格試験から得る
知識などから来るものとはことなり、

どちらかといえば、習慣や感覚といったものが
大きくそこに影響している気がします。


要するに理屈だけではないこと。


某財務メーカーがクラウド財務システムを
最初にリリースしてから、
おそらく7~8年以上は
経過しているにもかかわらず、
業界への浸透スピードはとてもゆっくりとしたものです。


このような調子で、
税理士業界は本当に大丈夫か
という不安や焦りのような感覚が
私にないと言ったらうそになりますが、


仮にこのスピードが変らないとしたら、

税務という側面だけでなく、
IT活用という新しい尺度によって、
事務所の格差が明確になっていくような気がしますね。


「望む声」と「阻む環境」

一体どちらが税理士業界にとって、
真の姿なのでしょうか。




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