北海道の小麦生産者を支えるために 外国産小麦を食べる | No Bread No Life

北海道の小麦生産者を支えるために 外国産小麦を食べる

北海道産小麦を積極的に使うことは、北海道産小麦(以下、道産小麦)の利用拡大を進める上では非常に大切なことです。

 

これまでは、うどん用品種しかありませんでしたが、品種改良と栽培方法の改良が進んだお陰で(30年前のハルユタカの誕生を契機に)現在ではパン用品種(強力品種)の栽培が広く普及することとなりました。

こうした世の中の発展のお陰で、現在では道産小麦のパンを気軽に食べられるようになりました。

 

北海道で生活する僕にとって小麦畑はとても近い場所にあり、小麦生産者は身近な存在です。

そして

道産小麦を選んで食べることは、北海道の小麦生産者を支えることになる  と信じてきました。

 

 

ただ、これは一面的な理解に過ぎず、もう少し勉強を進めると、実は違った側面が見えてくることに気がつきました。

これから書くことは、これまで僕自身が抱いて来た間違った認識を改めるために書きます。

 

これを読むと

輸入小麦と道産小麦(2者の関係)に対する認識が少し変わって来るかもしれません。

では

国内最大の小麦産地北海道の生産現場支えて行くにはどうすれば良いか?

について考えていきます。

 

「なーんだ そんなの簡単だべ

北海道産小麦を買って食べることでしょ?」

 

と言う方も多いと思います。あなたはどうですか?

 

ちなみに

上記の返答では、 50点です。

 

表面の一面は捉えていますが、裏側のもう半分を理解していません。

では、どういうことかをこれから述べます。

 

 

 

■はじめに

「 外国産小麦のパンを買ったら、道産小麦の生産者は困るんじゃないの? 」

「 道産小麦を食べることが生産者を支持することじゃないの? 」

 

と思われている方も多いかと思います。

たしかに一理あります。

間違ってはいませんが、これから述べることを読んで、ちょっとだけ小麦のしくみを知ったら

見方が変わって来ると思います。

 

 

■補助金制度の上に成り立っている小麦

農家の経営安定には、補助金が使われていることはご存知でしょうか?

小麦の生産においては「麦作経営安定資金」があります。

(これ以外にも農業に関係する補助金制度は色々あって、農機具の購入や土地の拡大や活用方法を助成するものなどがあります。)

この「麦作経営安定資金」制度は

生産者が継続的に小麦の生産が出来るように国が支えてくれるしくみです。

 

生産された小麦の量や品質によって補助金額が変動し、良品質の小麦を沢山作った生産者はそれだけ金額も増えるようなしくみで、頑張れば頑張った分だけ報われるような設定(加算措置)が取り入れられています。

 

(農林水産省 麦の需給に関する見通し H28/3月から引用)

 

また、生産者が良品質の小麦を継続的に生産出来るということは

市場に対して「道産小麦を安定的に供給する」責任を果たしていると言えますので、安定して小麦を作り続けられる環境(補助金制度)があるお陰で、市場に小麦が届けられているわけです。

 

この補助金制度の上に北海道産小麦の生産基盤が成り立ち、その恩恵としてのパンを私たち消費者が食べている

ということが理解できるかと思います。

 

 

では次に、この補助金制度の財源についてみてみましょう。

 

 

■麦作安定資金の財源とは・・・

国内の生産者に対して支払われる「麦作経営安定資金」の財源は

マークアップからきています。

マークアップとは

政府が外国産小麦を一括して(商社を通して)買い入れた後、国内の製粉会社へ売り渡しますが

この時、政府の利益を上乗せしてから売り渡します。

この上乗せ分の利益がマークアップと呼ばれるもので、総額974億円(H26年度)が経営安定資金に使われます。

 

そうです。

政府が外国産小麦を製粉会社へ売ることで得ている利益(マークアップ)が補助金の財源なのです。

 

POINT! マークアップ = 麦作経営安定資金の財源

 

ちなみに

国内大手製粉会社4社が外国産小麦の7~8割を政府から買っています。

 

この事実が何を示すかというと

 

麦作経営安定資金の財源(マークアップ)の7~8割を大手製粉会社4社が支払っている と言い換えることが出来ます。

 

(農林水産省 生産者に有利な流通・加工構造の確立に向けてH28/9月から引用)

つまり

国内の製粉会社が小麦生産者のための補助金を支払っている。ということです。

しかも大手4社が多額のマークアップを政府に支払っています。

総額894億円です。

この財源によって「麦作経営安定資金」が国内の生産者へと支給されています。

 

(農林水産省 生産者に有利な流通・加工構造の確立に向けてH28/9月から引用)

どうでしょう? そろそろお分かりかと思いますが

 

国産小麦の生産者を支える補助金の財源が、外国産小麦が売れることで捻出されていようとは一般人には知る由もありませんが

製粉会社が支払うマークアップによって、国産小麦生産者を支える補助金が生まれているのです。

 

このしくみで言えば

現在はほぼ550万tくらいで外国産小麦の輸入量が安定していますが

外国産小麦の消費が拡大し、かつ輸入量が増えれば、それに比例して経営安定資金の財源が増えるということです。

 

 

 

■まとめると

政府は

国内製粉会社に向けて外国産小麦を販売した利益によって補助金を捻出し、これを国内生産者へ支給し、国産小麦の安定生産に寄与しています。

 

生産者は

政府からの補助金によって小麦生産の安定化を進めています。

 

製粉会社は

政府にマークアップを支払うことでこれらのしくみを支えています。

 

では、

僕たち消費者はどうすれば良いでしょう?

 

 

■では、今一度考えよう

以上のような小麦を取り巻く制度やしくみについて知っているのと知らないのとでは

見方が変わって来ると思います。

 

僕はこの事実を知るまでは

道産小麦を食べること「小麦の地産地消」が生産者を支える唯一の方法 と思っていました。

 

もちろん道産小麦を食べることは有効な方法です。

小麦の地産地消からは副産物も多く生まれます。

 

ただ、政府の補助金制度上から見ると

外国産小麦を食べることも生産者の経営を支える ” 大いなる一助 ” になっているのです。

先程も述べましたが

現在、外国産小麦の輸入量は550万tくらいありますが

もし外国産小麦の消費が拡大し、かつ輸入量が増えれば、それに比例して経営安定資金の財源が増えるということです。

 

ここでちょっと次の数字を見て下さい。

 

マークアップによって得られる財源が約900億円。

国産小麦を全部消費して生産者に支払われる金額が280億円

 

(生産者が小麦を売った金額より補助金額の方が多いのですが)

外国産小麦がこれほど生産現場に対して多額の補助金を支払っているとは知りませんでしたので、ちょっとショッキングな数字です。

 

消費者がしっかりと国産小麦を食べきって生産現場に280億円支払うことも絶対的に必要です。

加えて

生産者を支えるには、外国産小麦を消費して900億円の補助金財源を確保することも同時に必要なのです。

 

 

事実

北海道産小麦の生産者の中には、経営安定資金を含む様々な補助金制度に助けられ、また、活用しています。

 

労働力の少ない地域では、大型で新らしいコンバインの導入のお陰で天候の影響を避け、効率良く収穫が行われています。

収穫後、小麦の乾燥施設を新設/増設したことによって品質低下を免れました。

品質の良い小麦を生産するために補助金が活用され、労働リスクが軽減されるのであれば多いに活用すべきだと僕は考えます。

 

これらの事実をふまえて、生産者を支えるとはどういうことかを考える時

 

国産小麦の消費を拡大しよう というのも大事ですが

同時に外国産小麦の消費も拡大しよう と言わないとつじつまが合わない

ということに気がつかされました。

 

 

 

■結論

国産小麦とその生産者を買い支えするためには、輸入小麦も買わなくてはならない。という一見矛盾したような言い回しですが

このことが矛盾ではないことも、表現のアヤでもないことも理解できたころと思います。

 

北海道の生産者が受け取る補助金が、外国産小麦の売渡し利益「マークアップ」が財源 ということは何かの皮肉みたいにも思えますが

制度がこのようなしくみになっている以上、矛盾ではないのです。

 

 

■普段の生活レベルで行動すると

簡単に言えば

道産小麦パンしか買わない。というだけでは物事の一面しか捉えていません。

本当に小麦産地を支えようと思うなら

道産小麦パンと同じ量の外麦パンも買う。ということです。

 

もっと解り易くいうと

 

地元のパン屋さんで道産小麦パンを買って産地を支えるのも良いし

コンビニや量販店で外国産小麦のパンを買っても 結局は、北海道の生産者を支えることに繋がっている ということです。

 

そう、世の中はどこかでつながっているのです。

 

 

■で、パン屋さんに関して言うと

もちろん北海道産小麦のパンを作ることが産地と生産者を支えることになります。

地産地消から生じる副産物も多いのでおすすめです。

一方、

外国産小麦しか使っていないパン屋さんもまた、マークアップの一部を担っているので、間接的に生産者を支えることに貢献しています。

 

外国産小麦は敵ではありませんし、また外麦をだからといってそのパンを否定することもありません。

 

お互いに消費を拡大していけば、廻り回って国内産も支持していることにつながります。

 

 

■道産小麦を使う・食べる意義/副産物

・加工技術(製パン技術)の向上と発展

・道産小麦の高品質なパンが食べられる。

・職人の腕的に、外国産から道産への置き換えが可能になる。

・新たな用途の開発

・育種開発(新品種)のヒントになる

 etc

  進んで北海道産小麦を使い続けていると色んな発見や得られるものがあります。

 

今日があるのも 品種を世の中に送り出してくれた育種開発機関の功績と生産者、製粉会社、パン職人の協力の中が積み重ねられて来た賜物です。

 

この人間関係がなければ、今の世の中はありません。

 

たゆまず歩み続けることが後の世の中を作ることへとつながっています。

生産し続けること

使い続けること

食べ続けること

です。

 

ここまで読み進めて下さってありがとうございました!

 

読んで下さったあなたは、すでに小麦の世界の住人ですw