How to fly・48 | 黒チョコの嵐さんと大宮さん妄想書庫

黒チョコの嵐さんと大宮さん妄想書庫

嵐さんが好きです。二宮さんが好きです。大宮さんが好きです。

こちらは妄想書庫でございます。大変な腐りようです。足を踏み入れる方は、お気をつけくださいませ。

※BL妄想書庫です


苦手な方はお気を付けください





















ステージが、飾りになった?



「楽しみにしてるのはあんただけじゃないって言ったよな」

「は?なにを?ステージを?」

「そうだよ、この損害賠償はあんたに請求させてもらう」

「損害って…なに言ってんだか分かんないんだけど」

「あいつは真摯にステージと向き合ってた、次の奴を雇ったとしても見劣りするに決まってる」

「…次?」



その後の言葉は耳に入ってこなかった

靴を脱ぎ捨ててステージに上がり、暗い通路を駆け抜ける



ドンドン!


突き当たりの扉を叩く



「おい!居るんだろ?!」



ドンドン!



「体調崩したのか?!」



ドン!



「大丈夫かっ?!」



ドンドンドン!


叩きながら叫んでも、応答は無い



嫌な予感がする

どうか無事であってくれ



「開けるぞっ!」



ノブを回し、縺れる足をどうにか前に進めて、部屋に入った




「なん…で…」



昨夜まで、いや、今朝まであったはずの物が無い

彼の腹の下に入れたクッションも、吊るされていた彼の衣装も、二人で使ったタオルも、何も無い



「なんで…こんな…」


「知らなかったの?」



背中から声が聞こえる



「今日の昼過ぎ、店を開ける前に出てった」



出て行った?



「…追い出したのか」

「は?」

「ここしか居場所が無いって震えてたあいつを!お前が追い出したのかっ?!」



振り返り様に駆け寄り、胸ぐらを掴む



「お前が有給だって言ったんだろ!ステージ休んだのはお前の許可があったからだろっ!」

「ちょっと」

「なんでだよ!もう誰からもそんな…お前のこと優しいって!やっと辿り着いた場所だって言ってたのに!なんで追い出したんだこの野郎!」



怒鳴りながら拳を振り上げる

ゴチッ

骨と骨がぶつかる鈍い音がした


ドサリ

床に崩れたのは俺だった



「いっ…てぇ…」



左頬と顎が痛い

殴る前に殴られたらしい



「ごちゃごちゃうるせーなぁ、一人でテンパってんじゃねーよ」

「こんなの…テンパるだろっ」

「この状況は全てあんたのせいだろ、俺は引き留めたからな」



俺だってここを出て行くと言われたら引き留めたに決まっている

なのに、なぜ?

なぜ何も言わずに出て行った?



「なにか…なにか言ってなかったか?」

「詳しくは聞いてない」

「なんでもいいから!何か言ってなかったのか?!」

「ほんとに何も聞いてねーの?」

「聞いてたらお前なんかに聞くわけねーだろ!」



怒りと哀しみが混ざりあって、それを何かにぶつけないと正気が保てない気がした



「何も聞いてねーからこんなテンパってんだよ!それを…なんでお前なんかにっ お前なんかに誰がっ」



舌が鉄の味を拾う

先程の殴打で口の中が切れたらしい

痛みは無い


が、他の場所が…胸の辺りが猛烈に痛い



「はぁー…」



頭上から大きなため息が聞こえる



「騒いで悪かった、謝る、その代わり一つだけ教えて欲しい」

「なに」

「ここを出てく時、あいつは…元気な顔、してたか?」



もし彼が言葉を残しているなら聞きたい

残していないのなら、元気に出て行ったのかどうかだけでも知りたい

それがマスターの主観であっても、、それを他人伝で聞くことがどんなに腹立たしいことであっても

俺は聞きたい、そして、知りたい



「強くなりたいんだってさ」

「…強く?」

「壁を越えて高く飛びたいって言ってた」



壁を越えて、高く…



「あと、忘れてたことを思い出して?飛ぶ方法を思い出して?だったかな、悪い、正確には記憶してない、でも迷った顔はしてなかったし、しっかりと前を向いてた、だから送り出した」



彼が好んで使いそうな抽象的な言葉だ


そして、非現実的に聞こえるのに具体的でもあるのがとても彼らしい



これらの言葉は、本当に彼が言ったことなのだと思う



なぜ俺には、何も言ってくれなかったのだろう…




「いつまでそこで寝てる気?」



腕を掴まれて、立たされる



「さてと、損害賠償請求について話し合おうか」



引き摺られて部屋を出る



通路を歩かされている時、彼の気配を感じた

振り返った先で、扉が静かに閉まる


光は失われ、闇に包まれた

















つづく