※BL妄想書庫です
苦手な方はお気を付けください
「あの状況でそんなこと考えるなんてばっかじゃないの?!」
「でもさー」
「でもじゃなぁーいっ!ぶわぁーかっ!」
体 内 の洗浄が終わって、全身も丁寧に洗った
怒りの治まらない彼の身体を拭かせていただき、服を着る手伝いをさせていただき、髪を乾かせていただき、ようやくご機嫌が戻ってきた
「はぁー、喉渇いたぁー」
「何か買って来ようか…って、まだここから出られないのか」
「もう閉店したんじゃない?」
「え?もう?」
ここには長く通っているが、早い時間に店を閉める日があるのは知らなかった
携帯を見る
通常の閉店時間から一時間が経過している
「うわっ もうこんな時間?!全然気付かなかった」
「お酒飲もー」
「俺もいい?」
「もちろ~ん」
彼に続いて部屋を出る
暗い通路を抜け、低い階段を上り、見た目に反してぺらぺらの薄い板を背にして、立つ
「こんな景色なんだなぁ」
ゆっくり歩きながらポールの側まで進む
部屋に行く時に初めてステージに上がったが、周りの景色を目に入れる余裕は無かった
今はうるさい音楽も無く、照明も半分落とされている
それが余計な境目を消しているのか、どこまでも続く空間を連想させた
「地下だけど、結構気持ちいいでしょ?」
「うん、気持ちいい」
酒の入ったグラスを二つ手に持った彼が、特等席に座る
「いつもこんな風に見上げてたよね」
口を開けて、熱っぽく見つめられる
わざとらしく腰を引いて見せているのは、俺が 欲 情 していたことを、それを隠そうとしていたことを知っていたということか
「そんなアホ面じゃねーし」
「そう?似てると思うんだけどなぁ」
「お前はこんな風に見下ろしてたよな」
ポールを握り、彼を真似て身体を浮かしてみた
「おっ…わあっ」
ドシン
床に尻餅をつく
「あははっ 俺はそんなかっこわるくないですぅ~」
「なにこれ、全然浮いてらんない、見てるより超絶ムズいっ」
「コツさえ掴めばそんなに難しくないよ」
「とおっ」
もう一度チャレンジしてみたが、二秒とキープ出来ないうちに再び尻からドシンと落ちた
「あははっ」
「そういえばさ、あれもすごいよね、どうなってんの?」
「あれってどれ?」
「身体が床と水平になるやつ、スーパーマンみたいなのあるじゃん?」
「あー、あるね」
「ここにこうやってポール挟んでるだろ?」
宙で再現することは不可能だと悟ったので、床にうつ伏せになってポールを股に挟む
「そうそう、身体の使い方は近いかも、さすがよく見てるねー」
「これってさ、支点は股じゃねーの? ち ん こ 直撃で痛くね?」
「うん、痛い」
「ぇえっ?!まさか毎回潰れちゃってんの?!」
想像しただけで袋が縮み上がり、背筋が冷たくなる
「だからそれもコツだよ、捲き込むとマジでヤバイかんじになるから、どっちかに外すってゆーか」
「外す?なるほど…こっちかこっちに外す…」
床でうつ伏せのまま、ポジショニングを幾つか試す
「うん、ダメだ、これは余裕で潰れるな」
「見たーい、やってみてー」
「出来るわけねーだろっ しかも潰れるって言ってんのにっ」
「無様に落ちて痛がるのを見るのがおもしろいんじゃーん」
「お前…ちょいちょい酷いよな」
馬鹿馬鹿言うのも、ヘタくそ爆弾も、思い返せば色々と酷い
「やばーい、嫌われるぅ」
「そんなことで嫌うわけねーし」
「じゃあ、好き?」
「好きだよ」
「…俺も」
「かもは取れたんだ?」
「取れた、かも~」
「んふふ」
「ふふっ」
視点が逆転しても、客でなくても、今は共有出来る物がある
願わくば、自分の居場所はここであると、迷わずに、堂々と思ってくれたらこんなに嬉しいことはない
「明日はどーすんの?」
「お休みは一日で充分です」
「そっか」
「ねぇ、また…会いに来てくれる?」
「当たり前だろ」
「…ありがと、待ってる」
「予約は?したほうがいい?」
「んーん、あなた以外の予約は受け付けないから」
「うん、分かった」
それから二人でのんびりと飲んで、たくさん話して、夜を明かした
つづく