独白人 -リアクション- | にっけいしんぶん新聞

独白人 -リアクション-

春秋 -5日1面-

▼春めいた陽気のせいか、駅や道端で独り言を語る人をよく見かけるが、“独白人”を前にどう振る舞えばよいのか分からない。
▼周りを見ると「聞こえないふり」が多いようだ。この季節、自分も約束時間に遅れて電車内で「しまった」などと口走ることが多いが、中には迷惑そうにスッと離れていく人もいる。
▼他者との意思疎通目的でなく、無意識のうちに脳内に現れる言葉が外に出るのが独り言だという。玩具で一人遊びする幼児の口からは、自らが紡ぐ楽しい物語が聞こえるが、大人になるにつれ脳の扉は閉ざされていく。
▼外的に囲まれる現代社会は脳内をさらけ出して生きられるほど平和な世界ではないので、己を守るために扉が閉まるに違いない。だとすれば、立春の束の間に扉を開放する“独白人”とは、無防備にも敵の存在を忘れた優しい心の持ち主であろう。幸福そうな独り言ならば微笑み返すのもよい。


春の陽気が独り言に関係あるのかどうかはわかりませんが、立春の束の間に限らず、どうやら記者は優しい心を持ち合わせているようです。

・・・いえ、単に「扉」の建てつけが悪くなっているだけかもしれませんね。
生身の人ではなく、実体があるのかないのか分からない「マーケット」を何年も相手にしているうちに、ストレスをためないために画面に向かってブツブツ言うクセがついてしまっております。(どうやらマーケット関係者には結構多いらしい)

ところがこのクセが日常生活にも出たりして、自分でも気がつかないうちにあちこちでボソッとやっているような気もします。
おそらくは春秋氏と同様、電車や街角で「しまった」とか「やべっ」とかはたまた「あそっか、○▲×だったか・・・」などと思わず口から出ていたり、あるいは家の中で「さ、風呂入ろ」とか「あ、そや、古新聞しばっとこ」とか、いちいち口に出してから行動してみたり。

まあ口にするのはたいがいどうでもいいことばかりで、幸福であろうとなかろうと、街なかで幸福そうな独り言をもらすことはあまりないとは思いますが。
だいたい、

「きょうは○○ちゃんとデートだあ」
「やったあ、明日から休暇だあ」
「よし、今日はすき焼きにすっか」

マンガやドラマじゃあるまいし、街なかで突然こんな独り言を言う人はそうそういませんって。

とはいえ、万が一記者が幸せそうな独り言を発したときに、それを耳にした通りすがり方がいらっしゃいましたら・・・


どうか微笑み返さないで、
聞こえないふりをしておいてください。



たしかに能天気な独り言を言ってる人間を見かけるほうもキツイかもしれませんが、見ず知らずのオッサンに微笑み返されるのはもっとキツイです・・・。