独り歩きする目標株価 -信じるものは・・・- | にっけいしんぶん新聞

独り歩きする目標株価 -信じるものは・・・-

試練の新興市場 -16面-

「目標株価を35000円に下方修正」。9月19日にJPモルガン証券が公表した楽天のリポートが市場の話題を集めた。49850円だった株価は25日には41400円まで下落し年初来安値を記録し、さらに10月12日は一時37000円を割り込んだ。(10月12日付で投資判断を停止)
下落基調をうまく見通したかのようだが、6月22日に設定した目標株価は66000円で、実際の株価は急速に下落し、JPモルガンはわずか3ヶ月足らずで目標株価を半分近くに下げたことになる。
新興市場では楽天のようにアナリストが目標株価を発表すると、それ自体が株価材料となって急伸・急落することが多い。アナリストの不足などで投資情報が乏しい新興市場の現実だが、それゆえ中小型株・新興株は、企業調査次第で大きな投資成果を得やすい面もある。参加者のすそ野を広げ、市場を振興させるために情報の発信機能を担うアナリストの役割は大きい。


確かに新興市場を見渡すと、人気化して割高と思われる水準まで買い進まれている株がある一方、投資家にまったく見向きされずに安く放置されている株も少なくありません。参加者に偏りがあり、アナリストのカバーが限られているゆえの現象なのでしょう。
しかしアナリストが増えればよいといっても1000をゆうに超える中小型・新興市場銘柄を手広く分析できる人員をそろえてコスト面で見合うとも思えず、マイナーな銘柄はどっかのアナリストがたまたま書いた買い推奨レポートで株価が高騰する、そんな状況が変わることはないと思います。

ですが、さすがに時価総額5000億円クラスの超メジャー新興市場(ジャスダック市場)株の楽天は例外で、証券10社以上のアナリストがカバーしており、各社各様・・・といいたいところですが、どちらかというと弱気な投資判断が多く出されています。
今年に入り、軟調な新興市場の地合いに加え、いろんな噂やJPのように目標価格を切り下げるレポートも手がかりになり、楽天の株価は大きく下落しました。

で、散々下がったところでJPさん・・・


(10月12日付で投資判断を停止)


???

なんでしょうかこれ。

散々下げといて、今さら判断をやめるって。

レポート自体が材料になって株価急落を誘うのが申し訳なくなったからでしょうか???

謎なので、記者の手元に届いたその「投資判断を停止する」旨宣言したレポートを見てみることにしましょう。


当社調査部で検討した結果、現時点で当社は同社について深い理解に基づいた調査・分析を行える立場にはないと判断しました。そのため、本日(10 月12 日)付で楽天(4755、38,950 円、Underweight)をカバレッジから削除します。これに伴い、JP モルガンの業績予想、レーティング、目標株価などの情報はすべて無効となります。
(10月12日付JPモルガン証券レポート原文)


えええっ!?

なんですかそれ!!??

いままでのは深い理解に基づいた分析じゃなくて、よくわかってなかったけど安い目標株価を設定して売り推奨しまくってたっていうんですかぁ???
で、「やっぱりこないだまでのは全部なしね!」っていうんですかぁ???


・・・あ、そういえば連休前の6日、JPから「すんません、おとといの楽天のレポート、間違えてました」って内容のレポート来てたっけな・・・。
間違いがあったっていう4日付のレポートはけっこうけちょんけちょんに楽天のこと書いてたのに、6日の訂正レポートは、
「事実関係の把握が不十分でした」
「他社の事例を一般化したのは不適当でした」
「楽天の開示が不十分な印象を与えたかもしれませんが、担当さんにはきめ細やかな対応をしてもらってました」
「会計処理の議論に事実誤認がありました」
なんて、完全にお詫びモードだったもんな・・・。

・・・。
アナリストさん、それほど乗り気じゃないけど、担当だからしかたなくレポート書いてたのですかねえ・・・。
楽天ってJPでは情報通信セクターに割り振られてたんだけど、最近は証券とかクレジットとか金融関連業のほうが大きくなってきちゃってるから、担当のアナリストさんも大変なのはわかるんですけどねえ・・・。
それで、「ああもう、あんたとこの会社、最近よくわかんないのよ!」って感じにでもなってたんですかねえ・・・。
実際の事情はよく分かりませんが・・・。

まあなんにせよ、こんだけ間違えたレポート書いちゃったってんなら、「深い理解に基づいた調査・分析を行える立場にはない」ってのも、しゃあないわなあ・・・。
おっそろしいなあ、これを信じて売りまくってる人だっているかもしれないんだよなあ・・・。
さっそく今日(13日)は反発しちゃってるもんなあ・・・。
そういや機関投資家や証券会社の人の間でも、楽天のレポートは中身をちゃんと読まないで「○○証券、楽天の目標株価○万○千円!」みたいなところだけ話題になってたりしたもんなあ・・・。

まあでもなにがおっそろしいって、たぶんこれって「おいおい、そりゃおかしいだろ」って楽天側からクレームがあって「すんません、間違ってました」ってなったんじゃないかと思うんですけど、これがもし楽天の売り推奨じゃなくてもっとマイナーな会社の買い推奨レポートにでっかい事実誤認があってとんでもなく高い目標株価が設定してあったとしても、きっと誰も突っ込み入れなくて、書かれた会社も「全然間違ってるけど買い推奨だし景気づけになるからまあいっか」なんてスルーしてたりして、それでもみんなそのレポートを信じて買いが殺到して株価がぶっ飛んだりしてることが、起こってるかもしれないってことだよなあ・・・。

・・・いや、ぜったい起こってますよ。
新興市場の会社の経営者さんと話をしてると、たまに証券レポートはおろか、○季報の予想数字についてすら、「いやいやなんでそんなすごい数字になるのか、私どものほうが知りたいくらいですよ・・・」なんてこと、何度かありましたから・・・。

みなさん、レポートにしても何にしても、信じすぎて足下をすくわれないように気をつけましょうね・・・。