「神様」去り 重いかじ取り -対話- | にっけいしんぶん新聞

「神様」去り 重いかじ取り -対話-

FRB、バーナンキ体制に -1面ほか-

世界の金融市場がもっとも注目してきた人事が24日、決りました。ブッシュ米大統領は米連邦準備理事会(FRB)のアラン・グリーンスパン議長(79)の後任に最有力候補とされていた大統領経済諮問委員会のベン・バーナンキ委員長(51)を指名しました。
金融市場は18年ぶりの交代劇を冷静に受け止めましたが、絶大な信任を得ていた「巨匠」の退場は世界経済や市場の環境を大きく変える可能性があります。


グリーンスパン議長、みなさまご存知でしょうか。
アバウトに言ってしまえば「アメリカ版日銀総裁」なわけですが、米国の金利と日本の金利では世界経済に与える影響がケタ違いなため、世界の金融市場にもっとも影響を与えることのできる人物となっています。
市場からの信任は非常に厚く、政権(大統領)が変わってもポストに手をつけるどころか、市場の不安を避けるため他のポストはさておいてもグリーンスパン氏の留任だけは早々にアナウンスするほどでした。

ITバブルが膨らむ過程では「根拠なき熱狂」と戒め、そしてバブル崩壊後も絶妙の手綱さばき(金融調節)で米国が深刻な不況に陥ることを回避したといわれています。
米国経済は世界経済を左右するため、グリーンスパン氏が講演や議会証言などで市場に発するメッセージには世界中が注目していました。

そのグリーンスパン氏の後任にバーナンキ氏が決まったのですが、米国をはじめとする株価が大幅に上昇するなど、市場はおおむね好意的に受け止めていますが、ではこの交代劇で、世界の金融市場環境はどう変わるでしょうか。

とりあえず・・・あれこれ推測して思い悩むことは減るんじゃないでしょうか。

というのもグリーンスパン氏、難解で婉曲的で一見その真意が理解しがたい言葉を話すことで有名でした。
どれくらい難解かというと、グリーンスパン氏はなんと72歳のときに50歳の女性ジャーナリストと結婚しているのですが、そのプロポーズの言葉を言った際、女性がそうとは気付かず、数日後に答えを催促してはじめてあれはプロポーズだったのかと分かったというエピソードがあるくらいです。

そんな言葉でなんで市場を上手にコントロールできるのか不思議なのですが、逆になんとでも受け取れるからこそ、彼の実績が作り出したカリスマ性によって市場自身が自制する方向に動き、彼が意図した以上の効果をもたらしていたのではないかと思われます。
虚像がさらに虚像を生み出す、たとえていうならノストラダムスの予言みたいなものでしょうか。

バーナンキ氏はグリーンスパン氏と比較されて冗談交じりに「後継者は普通の英語を話す人」などとも言われているそうで、これで市場参加者は発言の真意を測るのに苦労することはなくなると思われますが、しかしそれはすなわち、議長発言が発言以上の重みを持たなくなるということでもあります。
しばらくは議長としての実績がないことも手伝って、バーナンキ氏は力量を十分に発揮するのに苦労するでしょう。

おまけに今の米国の経済環境、足元の景気こそ悪くはないものの、原油をはじめとする一次産品価格の上昇でインフレリスクが高まり、住宅価格もバブル気味に上昇する一方で、その住宅価格上昇を利用した消費者向けのハイリスク融資が増加し、そしてその融資が堅調な消費を支えるといういびつな一面もあるなど、金融調節が難しい局面を迎えつつあるのです。

今後、市場もバーナンキ発言に過剰反応したり、手腕を疑問視して失望することもあるかもしれませんが、グリーンスパン氏だって当初はその手腕が疑問視もされたものです。
ITバブルの時だって、グリーンスパン議長が止めるのもきかずに勝手に大騒ぎして、あとで議長は何やってたんだなんて言ったものです。

これからは新議長の分かりやすい言葉を素直に受け取って、その上で冷静に対処していってほしいものであります。