今日の愛ルケ(#284) | にっけいしんぶん新聞

今日の愛ルケ(#284)

この記事は渡辺淳一先生の連載小説「愛の流刑地」を記者が個人的な視点で読み解く記事で、性的な描写かなり出てまいります。そのような記述を好まない方、ネタバレを嫌う方、並びに15歳未満の方はご遠慮ください。
なお、記者がまとめたあらすじ中の灰色文字部分は、作品のテイストをできるだけ伝えるために原文をそのまま引用した部分です。



花火 二十五


すべて脱ぎ捨てた冬香の胸元に顔をうずめ、柔らかく温かいふくらみのあいだで目を閉じると、母なる大地につつまれているような安らぎを覚える。触れ合ったまま動かない冬香は、もう、どこへも行ってはいけません、このわたしのなかで休むのですよ。といっているのかもしれない
そんな思いを交わして菊治は顔をあげ、乳首に舌をからませる。弄ぶように転がすうち、冬香は耐え切れず「ねぇっ…」と訴えて身悶える。菊治も耐え切れないが、美しい生け贄をいきなり食べるのはもったいない。きょうはくまなく全身に接吻したい。
乳首から脇、お臍へと下がり、そこで寄り道して恥骨から花蕊にいたる。先端に触れると冬香が訴える。
「ください…」
「なにを?」

「ください・・・ください・・・・抱いて、抱いてください
冬香は叫び、起き上がって両手を伸ばして菊治にしがみつく。
延々と続く接吻に耐え切れなくなったのか。しかしこんなに激しく求めてくるのは珍しい。
「どうしたの?」
抱き締めてきくが冬香は答えず、胸元に額をすりつけながら訴える
「わたしを思いきり、滅茶苦茶に、滅茶苦茶にして…」


#自ら一気に脱がせておいて「すべてを脱ぎ捨てた冬香」と甚だしく事実誤認の菊治、マザコン全開でお母さんに見立てた冬香に脳内で優しく諭されます。


もう、どこへも行ってはいけません、このわたしのなかで休むのですよ。


昔の感動モノのアニメのセリフかなにかのつもりでしょうか。

でもさ・・・どこへ行くも、休むもなにもさ・・・



お前はろくに仕事にも行かずに、

年がら年中休みっぱなしじゃねえかよ!



働いてんのは妄想と下半身だけだよ。あと、ときどき右手と。


と思ったらきょうは唇も働いているようです。
乳首を転がせば冬香は「ねぇっ…」とせがみ、胸から股間までテキトーにチュウすれば「ください…」とおねだり、なかなかいい働きです。
「全身くまなく接吻」には程遠いですが。

しかしねえ・・・


「ください・・・」

「なにを?」


言わせたいんですかねえ。
ま、それは分からいでもないですがねえ。
どうせなら渡辺先生には、「これ」とか「それ」なんて指示代名詞じゃない形で具体的な答えを掲載できるかどうかチャレンジしていただきたいところです。

いやまあ、それはいいんですけど、ここのくだり、あらすじのほうでは会話だけにしちゃったんですけど、原文、ちっとも官能的じゃないんですよ。

「ください…」
「なにを?」ときき、「ください」と、二度くり返したところで、冬香が叫ぶ。
「抱いて、抱いてください」
(以上原文)

なーんか、事務的じゃないですか?
この雰囲気なら、

「ください」「なにを?」「ダイテ、代手ください」

代金と手数料なのか、代金取立手形なのか、とにかく急いで銀行に走らなきゃならないような気分になりますよ。


え?そんなことないですか?
と、とにかく「抱いて」と叫んだ冬香、珍しく菊治に抱きついて激しくおねだりです。
あの程度でも「『延々と続く』接吻に耐え切れなくなったのか」なんて思い込むのはいつものことですが、菊治はとりあえず「どうしたの」ときいてみました。
冬香、それには答えず何を言い出すかと思ったら・・・


「わたしを思いきり、滅茶苦茶に、滅茶苦茶にして…」


ジャジャーン!

なんて衝撃的なセリフ!!

いったい冬香はどうしたっていうのでしょう!?




ひゅーぅ・・・


・・・もはや驚いて気を揉む読者さんもいませんよね。

どうせまた夫だか義父母だかになんかされたのでしょう。
嫌なことがあったらセックス、つらいことがあったら抱かれて忘れる、あー、ここにもう一匹いましたよ、今度は雌のボノボが。
こりゃ、つがいですか?
いやいや、つがいじゃなくてもアリでしたね、ボノボは。
週末はいよいよホカホカ本番ですか?
「滅茶苦茶にしてやる」なんていっちゃうんですか?


しかし、なんか似たようなセリフは聞いたような気がしますが、「滅茶苦茶にして」は初めてだったでしょうか?
それともどっかで出てきてたでしょうか。いちいち調べるのも面倒です。

ラストに冬香の派手なセリフで読者を引き込む、連載小説においてそのパターンを否定する気はありませんが、でももうこの手のセリフは「びっくり」でも「おおっ!」でもなんでもなくなっちゃってるんですよね・・・。
読者の笑いもどんどん乾燥してきてるんじゃないかと思いますが・・・。


これ・・・ご本人は、書いてて楽しいんですかね・・・?



※ボノボさま、またしてもごめんなさい。