今日の愛ルケ(#169) | にっけいしんぶん新聞

今日の愛ルケ(#169)

この記事は渡辺淳一先生の連載小説「愛の流刑地」を記者が個人的な視点で読み解く記事で、性的な描写かなり出てまいります。そのような記述を好まない方、ネタバレを嫌う方、並びに15歳未満の方はご遠慮ください。
なお、記者がまとめたあらすじ中の灰色文字部分は、作品のテイストをできるだけ伝えるために原文をそのまま引用した部分です。

春昼 十八

冬香には本気だが、仕事に追われる中瀬にはわからないかもしれない。中瀬のいうとおりほどほどにしたほうがいいと思わなくもないが、いわれたくはない。話を打ち切り、カウンターの魚を見る。
黒くて大きいのは黒鯛で、その横は眼張なのか。さらに甘鯛があり、ホウボウがいて、青みを帯びて輝いているのは鯖で、手前のやや小振りなのは鯵なのか。
「その赤いのは、喉黒かな」
焼いてもうまい、という白い髭の店主に見せてもらうと、全体はピンクを帯び、喉の奥だけ黒々としている。それを焼いてもらうことにする。
小料理屋とはいえ、一匹まま焼くのは高そうだが、どうせ中瀬の支払い、好意に甘えてさらに焼酎を頼む。
小説はどうだときく中瀬に、なんとかやっていると答える。このところ調子がよく、150枚ほど書き上げた。
「アルバイトばかりもしていられないからな」というと、中瀬は「眼が澄んできたから、大丈夫かもしれない」とおどけていう。菊治自身、恋愛に没頭している分、小説にも集中し、手応えがある。
じゃあ恋愛を続けなければなと中瀬はいうが、恋愛をしているのは小説のためではない。


#男の恋愛談義@小料理屋が続きます。

・・・と、思いきや菊治、早々に打ち切りです。
せっかくの恋の許可証に「ほどほど」なんて制限がつけられて、面白くなかったのでしょうか。
菊治、カウンターの魚に眼を移して、平目の刺身を味わう余裕がなかった分、ほかの魚で取り返すことにするようです。

これは黒鯛で、横は眼張なのか。さらに甘鯛があり、ホウボウがいて、青いのは鯖で、小振りなのは鯵なのか。

・・・すると八本足は蛸で、十本足は烏賊なのか。
腰の曲がったのは海老で、腹ばいなのが蝦蛄なのか。
穴のあいたのが蓮根で、スジの通ったのは蕗なのか。
脚の速そうなのは馬で、角の生えたのが鹿なのか。
母さんは霜焼けで、父さんは胸焼けなのか。
隣にいるのは中瀬で、今考えているのは菊治なのか。
そして菊治は俺で、ではいったい俺は誰なのか?
俺はやはり夕焼けで、弟は小焼けなのか?
いや、俺は何を言っているのか?
ていうか記者は何を言いだしたのか・・・

・・・って、ああ、もう!

「なのか」「なのか」うるさいよ、たかだか魚を眺めるのに。
どんな懐疑主義だよ。
「その赤いのは喉黒?」なんてマニアックな魚を知ってるヤツが、なんで「これは鯵なのか」だよ。
だよ、に決まってるよ、喉黒を知ってるやつが鯵に見えるなら、ほんとは鰯でも鯵でいいよ、もう。通ぶって喉黒の喉の奥なんて見せてもらってないで、さっさと焼いてもらって食っちまえ。ついでに焼酎まで頼んじまえ。

そうそう、どうせ役員さまの中瀬のおごりなんだからよ・・・


って、プライドがないのか、菊治!


金ない、地位ない、センスない。
テクない、知恵ない、会話もない。
おまけにプライドまったくない。

これじゃあ、せんだみつおもかないませんよ。

ったく、せんみつだってせいぜい「ウケない、金ない、仕事ない」なのに・・・。
あ、そうか、さては「落ち目」菊治、だからセックスもせんみつ譲りの「いきなりズッコン」なのね。
・・・ええ、誰も知らないかもしれませんね、このギャグは。
菊治と中瀬が「銀座ナウ」ということで許してくださいよ。


・・・なんていってる間に、小説の話です。
菊治、いつの間にか150枚も書いたことになってました。
いいですねえ。
寝てる間に小人さんが書いてくれたんですかねえ。
おまけに校了直前のくそ忙しいアンカーの仕事も、明日になればきっちり終わってるんですかねえ。
同期の友人の奢りで旨い魚を食って焼酎を飲んでるうちに仕事が終わってるんなら、記者だってプライドの一つや二つ、売り飛ばしますよ。

ちくしょう、記者なんて週末に酒を飲んで寝ていたら、新聞は容赦なく毎日届いて、未執筆分の記事が溜まる一方なのによう・・・。

遅れてる更新を一気に飛ばして次回いきなり#174をアゲて、「菊治は#172であんなことを言ってましたが・・・」なんて大技を使ったとしても、それは「書いたことになっている」ということで・・・。