今日の愛ルケ(#68) | にっけいしんぶん新聞

今日の愛ルケ(#68)

この記事は渡辺淳一先生の連載小説「愛の流刑地」を記者が個人的な視点で読み解く記事で、性的な描写かなり出てまいります。そのような記述を好まない方、ネタバレを嫌う方、並びに15歳未満の方はご遠慮ください。
なお、記者がまとめたあらすじ中の灰色文字部分は、作品のテイストをできるだけ伝えるために原文をそのまま引用した部分です。

再会 十八

ここで果てるべきか、まだまだつながっているべきか。菊治の気持は大きく揺れている。
果てればこの上ない快楽を得られるが、次の瞬間は急激な喪失感に見舞われる。冬香の悶えるさまもまだ見ていたい。
冬香も頂に向かっているようだが、ここで自分が果てた時、ともに昇り詰めてくれるのか、それともまだなのか。できることなら同時に果てたい。
「それに・・・」と菊治は高まる心の中で考える。
いま果てたのではもったいない。若ければまた挑むこともできるが、菊治の年齢ではそれも覚束ない。できればもう少し、快楽と忍耐の入り混じった高ぶりの中で、さ迷っていたい。
そして、せっかく京都まできて部屋まで借りたのに、いま果てたのでは虚しすぎる、そんな現実的なことも思い浮かぶ。
「ふゆか・・・」
菊治はつぶやきながら冬香の胸元に顔を近づけ、
まだしばらくこのままでといおうと口を耳許に寄せると、冬香は素早く首をすくめる。
そういえば前に何気なく触れたときもそうだったが、冬香は耳が弱いようだ。それなら、少し戯れてみたい。
動けぬように抱きしめて耳許に唇を当てると、冬香は「ひい・・・」と甲高い悲鳴とともに、激しく顔を左右に振る。



#「できることなら同時に果てたい」
連載68回、菊治が相手のことを考えたのは初めてではないでしょうか。菊治もセックスが自分の満足のためだけでないことは分かっているようです。
しかしです。次がいけません。

「せっかく京都まできて、部屋まで借りたのである(原文)」

惜しい。「せっかく京都まできたのである」で止めておけばよかった。それなら本当は交通費を惜しんでいたとしても、「めったに逢えない2人のせっかくの逢瀬、できるだけ楽しんでいたい」という切ない気持の表現として、比較的好意的に受け止められることも可能だったでしょう。(記者はそう受け止めないと思いますが)
しかし、「部屋まで借りたのである」。このひとことでぶち壊しです。「愛しい人」とのセックスの最中にその「1発」のコストを計算するようでは、経営者としては合格でも、恋人としては失格です。

どうやってこのラウンドをこらえるのか、そんな窮地の菊治にまたしてもラッキーパンチが飛び出しました。冬香の弱点を発見です。
本当のテクニシャンならとっくに気付いていたであろうポイントを、菊治はようやく攻めはじめました。
しかしこれはかなり有効なようです。

「ひい・・・」

エロ小説以外ではお目にかかることもない悲鳴をあげて悶絶する冬香。
さあ、いったん立場が強くなるととことん調子に乗る菊治、ここから本領発揮といきましょう!


あっ。
記者もすっかり菊治のペースにはまって注意するのを忘れてた。


おめえ、今回もつけてねえじゃねえか!!


まったく、あれほど言ったのによう・・・。