新春特別企画 -無駄に?分厚い新年版- | にっけいしんぶん新聞

新春特別企画 -無駄に?分厚い新年版-

日経金融・産業・流通新聞 3紙の年頭企画記事

記者のように出勤2日目となるとお正月気分もさっぱりどこへやらですが、きょうが出勤初日の会社も少なくないようですので、もう少し新年特集を続けたいと思います。
今回は特別に、日経新聞の子分、日経金融新聞、日経産業新聞、日経流通新聞MJ=マーケット・ジャーナル)の年頭版にフォーカスしてみたいと思います。

この3紙、専門的でつまらないかと思いきや、むしろ日経新聞より面白いことも多いくらいです。金融新聞は多少読みづらいところもありますが、他の2紙、特にMJについては「消費」という身近なところに素材が限られているため、読みやすいだけでなく、読み物としては間違いなく日経新聞より面白いです。

ではそんな3紙から、新年らしい特集記事をとりあげてみましょう。

まずは日経金融。
金融新聞らしく「2005年の株式相場について専門家60人へのアンケート」が1面トップです。株価の動きについては年末高、ざっと13000円くらいを予想した人が多かったとだけ言っておきましょう。同時に「株式市場で意外感をもって受け止められそうな出来事」も予想してもらっていますが、確かに驚きの予想がありました。

「景気調整長期化」「人民元切り上げ」「円高」「円安」など、確かに株価に影響のありそうな材料が並んでいます。ただ、ある程度予想されていることも多く、サプライズがあるのかないのか分からない材料が並んでいる中で、吉野晶雄氏の予想は目を引きました。

「東北楽天イーグルスが日本一に」

これはサプライズです。いえ、記者自身は以前述べたとおり参入決定前から「来期は楽天優勝」と予想していますので、それ自体に驚きはありません。それより、楽天優勝を株価材料に挙げた勇気に驚きです。
ただ、「株式市場に意外感をもって受け止められそうな出来事」なのに、同氏はこのほかに「日本株大幅上昇」と本末転倒の回答をされているあたり、何か質問を勘違いされているのかもしれません。

続いて日経産業。
1面トップはシリーズ特集「日本の経営」の第1弾ですが、これは話が具体的なのでここではパスするとして、3面で同じく「経営」にスポットを当てた企画記事、「今年ブレークが期待される経営者」に注目しました。
いろんな業界のいろいろな状況にある企業の経営者16人が挙がっていますが、40代中盤から60代前半の社長さんがずらりと並ぶ中でひときわ目を引くのがこの方です。

松崎みさ(34) アガスタ社長
中古自動車輸出を手がけ、2004年マザーズ上場。海外における日本車人気を背景に事業の拡大が見込まれる。

松崎氏の経歴を少し紹介しましょう。
「世界を飛び回る経営者になりたい」という夢を持っていた松崎氏は、獨協大学のフランス語学科を平成5年に卒業、様々な業界・経営者に触れる機会を求めてベンチャー系コンサルティング会社に就職。中古車のガリバーを担当された際、幼少期を海外で過ごされた経験から「日本で廃車にされる中古車はまだまだ海外で売れる」と直感。平成9年に勤め先を退社して(有)アガスタを設立、わずか7年でマザーズ上場にまでこぎつけました。
もちろん、いまや億万長者(ビリオネア)
詳しいプロフィールは名前の上に勝手に貼らせてもらったリンク先にありますが、まさに絵に描いたようなサクセスストーリー。もちろんシンデレラストーリーなどではなく、自らの才覚と努力でつかみとった成功です。
もっとも彼女にとっては、お金よりも夢を叶えることのほうが大事なのでしょうけどね。

記者、プロフィールを読み、同年代ながら尊敬いたしました。同時に何と申しますか、会社で普通に仕事をしているのが少し寂しくなりました。
強い夢も持てずにいた記者は、いろいろ志望理由は取り繕っても実態としては「とりあえず」金融関係に就職、幼少期の関西在住経験を活かすのは、せいぜい友人の結婚披露宴の余興で笑いをとる時くらいです。

ぼやいてもしかたありません。これも記者の人生です。
不満じゃないけど少し悲しい、こんなときはあれを歌うしかありません。

かいーしゃをおっこぉしたーやっつがいるー
かいーしゃにのっこぉったおっれーがいっるー・・・

・・・とにかく、新しい上司にフランス人が来ても平気な仏文科卒の松崎氏と比べても仕方ありません。
ここはひとつ、正月ですので前向きに、つぎ、いってみよー。

MJのトップは「生鮮ブランド勝ち組ランキング」です。
しかし、正直言って聞いたことのない肉や魚が並ぶそんなランキングよりよっぽど気になったのが中ほど、「海外のヒット商品2004」です。
国内では「韓流」と「アテネ五輪」関連が両横綱(MJヒット商品番付)にランクされましたが、海外の流行りものはどんなものだったのでしょうか。幾つか並べてみましょう。

米国:①iPod②アンチ・ブッシュ・グッズ③ピンク衣料品
ロシア:①星②ゲームセンターの商品「自動車」③(はり)④過激なテレビ番組
中国:①高級マンション②オリンピック選手③足裏マッサージ
台湾:①テコンドー②林志玲③韓劇
シンガポール:①格安航空②シンガポール・アイドル③韓流
タイ:①ヤマハのスクーター「mio」②ペット入り日本茶③絵本版「トーンデーン物語」
ベトナム:①レトロ・スクーター②カメラ付き携帯③大規模カフェ
インドネシア:①出会い系サイトと対戦ゲーム②視聴者参加型アイドル発掘番組③男性用化粧品【番外編】ダイヤモンドを埋め込んだ歯
オーストラリア:①豪州産和牛「WAGYU」②ミス・ユニバースの豪女性③格安航空券
ブラジル:①ガソリン・エタノール併用車②プラスチック製履物③スパークリングワイン④日本語ブーム【番外編】マラソンのデリマ選手
(ごちゃごちゃ見づらくて申し訳ありません)

面白いですねえ。
各国で共通点のあるモノ、まったく訳の分からないモノ、様々です。いくつか見ていきましょう。

まず、日本の横綱「韓流」が台湾、シンガポールとアジアを席巻しているのがわかります。やはり何かアジア的なツボがあるのかもしれませんね。
ついでにほかのアジアも見てみると、タイ、ベトナムではともにスクーターが1位となっており、このあたりは2輪が走りまわる東南アジアならではです。
またタイをよく見るとヤマハ日本茶など日本関連が上位を占めましたが、世界でもオーストラリアの和牛(「和牛」とは産地ではなく品種の分類です)やブラジルの日本語熱など、日本も韓国に負けていないこともうかがえます。ちなみにブラジルの日本語熱はアニメ・マンガが火付け役だそうです。

もうひとつの日本の横綱でもある「アテネ五輪関連」は、中国やブラジルの選手のみならず、台湾テコンドーも含んでいます。台湾の五輪史上初めて金メダルを獲得した2選手が感動を呼び、ブームとなったそうです。
スポーツの感動は万国共通のようです。

さて米国の1位はiPod。クリスマス商戦でもかなりの人気だったようですが、日本のランキングでも大関となっており、世界的ブームのようですね。ただ、同様に世界的ブームだったアンチ・ブッシュの機運は、やはり米国では対抗馬(2位)どまりだったようです。

あと気になったのがロシアの4位「過激なテレビ番組」。内容は知る人ぞ知る昔の「ザ・ガマン」のようなものらしいのですが、大規模なテロも頻発し、イベントをやればウォッカ一気飲み大会で優勝者が急性アル中で死んじゃう国での「過激」がどの程度か、少し怖い気がします。

もう一度アジアに戻ると、急激に資金力をつけてきた富裕層が高額品に群がっている様子も見てとれます。上海では日本円で1億円を超すマンションが人気を博し、インドネシアでは「笑顔からこぼれる宝石の輝きを求めて」歯にダイヤを埋めるのがブームとなるなど、まだまだ賃金の低い一般労働者と二極化が進んでいることがうかがえますね。

というふうに、このMJの記事、世界各国の流行や文化と、その奥にある社会構造の変化までかいまみえる、なかなか面白い記事だったと思います。


正月らしい長編記事になりましたが、いかがでしたでしょうか。
3紙の特集をひとつの記事に押し込んで、しかも普通に解説を書いてればそりゃこんなに長くもなりますね。
まあ、日経から一般紙まで、各紙正月版は誰も読まない7部とか8部まで無駄にぶ厚いもんだ、ということでご理解ください。

では、明日からは通常編成に戻る予定です。(たぶん)