今日の愛ルケ(#70) | にっけいしんぶん新聞

今日の愛ルケ(#70)

この記事は渡辺淳一先生の連載小説「愛の流刑地」を記者が個人的な視点で読み解く記事で、性的な描写かなり出てまいります。そのような記述を好まない方、ネタバレを嫌う方、並びに15歳未満の方はご遠慮ください。
なお、記者がまとめたあらすじ中の灰色文字部分は、作品のテイストをできるだけ伝えるために原文をそのまま引用した部分です。

再会 二十

女はほとんど仰向けで、男はその右手に横たわり、やや下の位置から入っていく。
ちょうど、チョキが二つ直角に交わり合った形
は、菊治のように年配の男には体の負担の少なくちょうどよいかもしれない。しかも冬香の乳房や脇からウエストへのラインにも触れることができる。
そのまま動きを繰り返すと、冬香は再び忍び泣くように喘ぎ出した。それにつれ菊治も燃えてくる。このまま突き進んで、冬香は昇り詰めてくれるだろうか。できればともに満たされて欲しい。
一人だけ果てるのでは虚しすぎる。ともに果てたい。
互いの体はややVの字に開いており、そこから冬香の上半身を窺い見ると、乳房の左右に揺れるリズムに合わせるように、繰り返される喘ぎも強まってきている。あと一息かもしれない。
菊治は動きを緩め、また激しく動き出す。そのテンポの変化が効いたのか、冬香が「あっ」とつぶやき、「だめ」という。
刺激された菊治がさらに暴れると、冬香が叫ぶ。
「とめて・・・」
顔を振り乱して哀願する、その声が愛しくて菊治は冬香の手を握ったまま、ゆき果てる。



#暴れた菊治、またしてもそのままゆき果ててしまいました。
今回は「ください」ではなく、「とめて・・・」のあと、有無を言わさずです。

いくら連載小説とはいえ、公共性の高い新聞に連載されるもの、一定の良識が必要ではないか、と前回の「ください」のときには記者や読者のみなさんもかなり憤りました。
菊治、お前おかしいだろ、と。
冬香もどういうつもりだ、と。
日経もどういうつもりだ、と。

しかし年が明けたとたん事情が飲み込めました。
そう、今年の日経新聞最大のテーマは、

少子化に挑む

です。
すでに冬香は3人の子持ちです。菊治との間に4人目すら出来かねません。
子だくさん万歳です。
そして、愛ルケに感化された若者が、

生挿→「ください」→内射→妊娠→できちゃった婚→出産

と分かりやすいコースをたどってくれるかもしれません。
脱・少子化への具体的な一歩です。

それに、
「早く結婚・出産しても体型は崩れるしあとは子育てに追われるだけ」
若い女性のそんな思い込みに対し、冬香は強烈なアンチテーゼを打ち出しています。

結婚しても出産しても恋愛はできる、そして体もむしろ魅力的になる。

比較的若い年齢で結婚のチャンスがありながら踏み切れないでいる女性に対して、そんなメッセージを送っているのです。冬香は意志の見えないお人形さんに見えますが、いわば日経のキャンペーンレディなのです。
なお、この際、結婚したあとの恋愛の相手が菊治じゃ嫌だ、とか言ってはいけません。

とにかく、日経がそこまで深慮遠謀あっての渡辺先生起用だったとすれば、これは感服せざるを得ません。

となればこの小説の最後は意外や意外、菊治と冬香と冬香の旦那、そして「4人」の子供が一つ屋根の下暮らすことになり、冬香はその後もどちらの子ともつかない大勢の子供たちを産み、みんなで育て、お母さんと2人のお父さんのいるちょっと変わった大家族として、みんなでいつまでも楽しく幸せに暮らしましたとさ。
そしてこれが新しい、本当の、「純愛」の形じゃったそうな・・・。

ってあほか。
んなわけねえだろ、渡辺先生だよ、ただのエロスだよ、究極の性愛(らしい)だよ。
そんな無理矢理に話を広げなくていいよ、まったく。

そんなわけで、広げすぎた話を大きく変えて、今度は体位の話。
横から求める菊治。ほとんど仰向けの女性の右手に男、下から入ってチョキを2つ直角に交わり合わせた形で、乳房や腰にも触れることができ、そして互いの体はややVの字に開いた体勢。
いったいどうなっているのでしょうか。とっさに想像がつきません。

そこでこんなときのための挿画です。

はー、なるほど、こうだったのか、こりゃたしかにチョキが直角だわ!




(挿画:小松久子) 挿画はクリックで拡大します。