日露戰爭が終った時に日比谷焼打ち事件があった。朝日新聞などにより民衆が煽られてポーツマス條約反對を唱へて東京で暴動を起した件である。それが誤りであったことは今の人なら誰でもわかる。20世紀はマスメディアが発達し、二度の世界大戦や冷戦の中でマスメディアの存在は絶大であった。マスコミが煽動して起きた騒擾は枚擧に暇がない。彼らは部数を増やすため、または文屋なりの正義感のために民衆を煽ってきた。

一方で民衆の方も煽りに乘ることを楽しんでゐた。彼らは煽動されるまにまに、戦後も安保闘争や70年安保闘争に參加して、馬鹿騒ぎをした。マスメディアと民衆との煽り煽られる関係は、現代社會の特質であらう。最近では特定秘密法案や集團的自衛権で馬鹿騒ぎを見せつけられた。

私の知合ひも集團的自衛権行使容認で戰爭に近附いたと政権批判をしてゐた。朝日新聞の受け売りであらうが、さうやって政権批判することを彼は樂しんで居るやうに見えた。彼は本當にそんな大袈裟な話を眞に受けて居るのだらうか。官邸の前で活動家が口角泡を飛ばして反対運動をしてゐる樣子が報道されてゐたが、彼らの行動自体がマスメディアを意識したものにしか見えなかった。

このやうなマスメディアの煽動とそれを楽しむ民衆といふ構造を打破しなければならぬと思ふ。何故ならマスメディアは煽動に一切責任を取らないからである。これまでマスコミが與黨の法案に猛烈に反對して、通したら大變なことになると煽りたてたことが屡あったが、本當に大變なことになった例がない。数日もすれば法案可決があったなんて想ひ出せない程、何も報道しなくなるのである。

例へば、特定秘密保護法案。これが通れば我国は言論抑壓国家になると煽ってゐた。今ではそんな馬鹿なことがあるはずないと分るのであるが、當時は相當反對が多く、政権の支持率も大きく下がった。ではマスメディアはその責任は取ったのか。取ってゐない。集團的自衛権もあと半月もしない内に忘れられてゐるだらう。

歴史をみると、政府とマスメディアが対立した場合、政府の方針が正しかったことが多い。逆に新聞が煽ってきた事例を見ると、国益を害したことが多い。新聞の煽りに乘ることが最悪な結果を齎すことを認識すべきである。