移民を毎年20万人づつ入れて、最終的には人口の一割を移民としようと提言する坂中英德氏の會見が話題となってゐる。氏は移民推進派の代表である。

坂中氏が謂ふには日本は長年移民鎖國をして來て、現在は移民を入れなければ衰退する瀬戸際にあるとのことである。

「そうすれば、日本社会の一層の多民族化になります。先祖代々、日本生まれという人だけでなく、いろんな国で生まれた人に日本国民になってもらう。これこそまさに、多民族共生社会になるだろうという見方です。 」

多民族共生社會に對して氏は無批判に良いものであるとしてゐるが、昨今の西歐の右傾化の一因に移民問題があることを忘れてはならない。異民族が一つの國で共に生きれば深く互ひを理解し合へるなどと言ふのは空想であり、實際は摩擦を生む結果となってゐる。文化の違ひを輕視してはならない。

「一番重要な課題は、製造業の分野に対する移民が必要だということです。大企業を支えている中小零細企業が後継者難でつぶれていっている。製造業、モノづくりの能力がなくなったら、日本というのは本当に滅亡です。ここをどう支えるか、移民政策で支えるしかないと、私は思っています。 」

氏が強く訴へるのは、豊かな經濟の維持のために移民が必要であると言ふことだ。確かに經濟がこのままいけば衰退するのかも知れない。經濟學者の多くが最近そんなことを言ってゐる。しかし、移民を大量に入れてまで經濟的繫栄を維持すべきでせうか。

さう言へば支那との貿易についても商人は同じやうなことを言ってゐた。支那で商賣したいから政府は支那政府の言ふことを聞き、靖國神社に参拝するな、共産党のご機嫌を窺はう、と。その結果我が國の眞橫に現在世界で最も危険な侵掠國を誕生させてしまった。商船三井の件は自業自得である。目先の慾に目がくらみ、我々の領土を虎視眈々と狙ふ國に鹽を送ってしまった。

それなら、大正期に一部の人間がいった一切を棄つる覺悟ではないが、幾ら大損をしても支那から撤退して居た方がましだった。私はさう思ってゐたが、それを言ふのはタブーのやうな雰圍氣があった。

坂中氏の移民の話には支那におべっかを使って来た商人に似た危機感の欠如がある。移民が民族の独自性を訴へ始めてオスマンやオーストリアのやうなことになってしまっては、それこそ国家分裂の危機を招來することになる。内戰となれば經濟も何もないのである。

このやうな安易な考へで移民を導入すれば最悪な結果とならう。移民を受け入れて來た西歐で今移民を排斥したい勢力が勢ひ附いてゐる。移民の話は、その歸趨を観てからでも良いのではないかと想ふ。