「勝手にしやがれ」
色彩の季節に生きて、色鮮やかなる花を想う、
誰より孤独を欲したつもり、
誰より気儘に生きたつもりで、
自由に隷属した挙句、足跡には砂埃、
赤土舞うのは海辺の樹々の生きた証か、
割れたライトの単車が過ぎる、
青白く浮く血の管と、
足首には刺青一周、もう消えることもない、
艶やかなる夏の花を模したそれとは、
まるで違う契りの孤独、
奪ったものは数知れず、
失くしたものもやはりそう、
天国には呼ばれない、地獄すらも生温い、
思い思いに罪を重ねて、生き血を吸う蟲の果て、
生きても死んでも檻のなか、
それが此の世の在るべき姿、
ルーファウスの交響詩、鳴り止まないオルゴール、
外れた蹄鉄、船着き場のおしゃべりや、
ボトルシップのなかの帆船、戦争映画のなかの反戦、
ブーツの踵の黄色いガムと包み紙、
地に落ちたヒューマニズムとイデオロギー、
踏みつけようにもそれは既にないものだった、
人を叫んだ思想家たちは、いつの間にかもういない、
泥を食って黙り込むんだろ、
首飾りをして船出の時間を指折り数え、
ギターケースのなかの拳銃、
深く被ったハットのなかの、
その眼の色は赤い自由、
喉の奥で呟き続ける「勝手にしやがれ」、
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あの夏、ぼくらは流れ星になにを願ったんだろう……
流星ツアー(表題作を含む短編小説集)
あの人への想いに綴るうた