「雨の街のフリオール」
その街の恋人たちは、雨に打たれたネコみたい、
傘は濁った雨に溶かされるから、
錆びたステンドグラスの鉄枠の下、身を縮めて寒さをしのぐ、
汚れた水は止まないまんま、
街路樹は健気にも、葉をつけては腐らせる、
壁の落書き、石ごと流され排水溝に倒れた男、
呼吸が終わる寸前だった、
葬列の汚れた白は錆びた白、
涙は誰も流さない、慣れているから、
慣れていなきゃならないから、
その魂は汚れているのに白かった、
フリオールは空を集める、
代わり映えない憂鬱を、切り取っては嘆き明かして、
〝いつかオーロラ、この街で見られたら〟
雨降る街の恋人たちは、
親のいないネコみたい、
傘は汚れ雨に溶かされるから、錆びたステンドグラスの鉄枠の下、
身を縮めて寒さをしのぐ、
開かない石の扉に閉ざされた街、
閉じこめられた人々を濡らし続ける、
壁のない空、それもまた憂鬱そうで、
フリオールはカメラ越し、光のない星を睨んだ、
⇒フリオールの終焉
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あの夏、ぼくらは流れ星になにを願ったんだろう……
流星ツアー(表題作を含む短編小説集)
あの人への想いに綴るうた