「月の砂漠のコルディゾンネ」
マイナス500、風すら凍る、
夜の月の砂漠の匂い、飲み込まれる星々と、
最果てのバス停は、時刻表さえ氷の向こう、
子供のころの落書きだらけ、変色した古い地図、
タバコの煙、焦げる紙の熱の花々、
誰かのくれた優しい声も消えてゆきそう、
ガラス細工の街で生まれた、
彼の名前はコルディゾンネ、花の色は見えない眼、
青と白とその間、太陽のオレンジさえも白になる、
氷の味の果実さえ、ならなくなった終わり待つ街、
地平の先のモノクローム、海から空へ移り変わる無色透明、
仰ぎ見るコルディゾンネ、
星々は濁ったガラスの夜の白点、
吸い込まれゆく煙はさざなみ、
コルディゾンネは月の砂漠で立ち尽くす、
終わり待つ街、コルディゾンネの頬に一滴、
ガラスに凍る、足下には粒々が、
無人の月の砂漠のような、白いガス燈、
旅立つ用意はできていた、
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あの夏、ぼくらは流れ星になにを願ったんだろう……
流星ツアー(表題作を含む短編小説集)
あの人への想いに綴るうた