色づく花を見た君と
子供のころを遠く離れて、
かすかな記憶を手繰る日は、
坂道からいつも眺めた、色づく花の淡く儚い、
吹きつけられても食いしばるよう、
しがみつくよう枝々に、咲き誇るを待っている、
野山に猩々、風に波打つ淡紅を、
濃淡さえも命を見せて、変わる季節を告げて去る、
散り落ちるのを待つ前に、微かな笑みの横顔は、
色あせながら消えてもくれず、
雨の鳴る屋根、バス停で、
ただ待つだけも胸のなかは小躍りしてた、
あの日の君はもういない、
あの日の私ももういない、
過ぎる列車に舞う淡雪、駆けてゆくのはひとりずつ、
嬌声さえも甘い歌声、
目を閉じないと消えゆきそうな、
夢か現か、真昼に浮かぶ星のよう、
色づく花を見た君は、
見渡してもここにはいない、
色づく花を見た君と、
生きた記憶は胸のなかだけ、いまもずっと胸のなかだけ、
色づく花を見た君へ、
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⇒砂漠に雨が降る
⇒ルフトハンザの孤独
⇒ランドスケープ・フィクション・ビデオ
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あの夏、ぼくらは流れ星になにを願ったんだろう……
流星ツアー(表題作を含む短編小説集)
あの人への想いに綴るうた
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