紋切重 (もんきりがさね)
それは、切り紙を重ね複雑かつ繊細なイメージへと変貌させる手法。
そこから生まれた、無限の可能性とは?
★ 柴田精一 展 ギャラリーヤマキファインアート 〔24日(土)まで、11:00-13:00/14:00-19:00、日月休〕 神戸市中央区元町通3-9-5 2F TEL078-391-1666 ★
《画像1》 紋切絵シリーズ 和紙、アクリル絵具 2010
切り紙を重ね制作された、紋切重 。
だが、柴田精一氏の紋切重の仕事はひと工夫もふた工夫もされています。
《画像2》 紋切絵作品 部分アップ
まず紙に色をつけ、折り、切って、重ねていく。
そうなんです、一枚一枚作家自身が色付けをした紙を使って制作されているので、マチエールが異なり、それを重ねることにより無限の可能性が広がるのです。
《画像3》 紋切絵シリーズ 展示風景
こんなパターンもあります。
《画像4》 Worlds-unit- 各360×360(mm) 水彩紙、水彩、墨、和紙、マスキングテープ等 2009
《画像5》 画像4 部分アップ
コチラは、シンプルに表現された作品。
幾何学的なイメージがありオモシロイですよね。
《画像6》 直角のレリーフ 男 800×600(mm) 木(桂)、アクリル絵具 2011
柴田氏は、壁の角に展示できる90度の作品 『直角のレリーフ』 シリーズも多数制作されていて、住空間にマッチした作品に仕上がっています。
この 『直角のレリーフ 男』 は平面として展示されていて、男の葛藤を物語っています。
最近 ″ 陶芸 ″ などの工芸作家さんが、現代美術のギャラリーで展覧会を開催されているのをよく目にします。
元々日本はものづくりの国であり、卓逸した技術の職人さんが多数存在します。
しかし最近一部の貴重な職種の後継者不足で、そのものづくりの基盤が失われつつあります。
職人とは師匠の技を受け継ぎ、自分なりの解釈や時代のエッセンスをプラスし後世に伝えていきます。
師弟の意味、それは側でその伝統を見て、感じ、惚れ込み、そして磨いていく。
そんなきっちりとした基礎があるから文化は伝承されていきます。
最近現代美術の作家さんで、見よう見まねで伝統工芸を真似た作品を制作されている作家さんが多数おられます。
作品を購入するエンドユーザーとして、まだまだ若輩者ではありますが私に言わせてください。
そういった作品を制作される場合はまずは、もう一度現代美術とは何であるか? ということを徹底的に追求し、現代美術職人として工芸に挑み、弟子入りするつもりで工芸に向き合う。
そして工芸家の皆さんに、 「やっと現代美術というものの良さがわかりました!」 とおっしゃっていただけるような作品を制作してほしい。
このものづくりの基礎、つまり作り手の側で一部始終を見て学んでこそ ″ 作る ″ という技が身に付き、もの自体も半永久的に受け継がれていくのです。
現代美術のギャラリーさんでも陶芸家の作品がよく展示されるようになってきた昨今、陶芸家は伝統の基盤があるからこそ現代アートとして制作してもその伝統の威光が輝き、見る者の心を掴んで離しません。
長くなってしまいましたが、そういった ″ 技 ″ こそ日本の宝。
現代美術も、腕、筆さばきの基礎があってこその作品制作。
今回柴田氏の 『紋切重』 を拝見し、漫才師としての自分も含めて、ものづくり心に火が点いてしまいました。
そんな話を、ギャラリーヤマキファインアート代表の山木さんとじっくりお話させていただきました。
山木さん、貴重なお話ありがとうございました。
そして 「申し訳ありません、お先に失礼します。」 と足早にギャラリーをあとにした柴田氏、これからも伝統的な 『紋切重』 作品見せてくださいね。
最後は、アクリル絵具でコラージュ制作されたパネル作品をご覧ください。
《画像7》 柴田精一氏と 「双相Ⅰ」(赤) 八角形のパネルにアクリル絵具 2011