17日付日経1面

金型2社、政府主導で統合
2・3位、支援機構が出資 「ものづくりの基礎」守る

 自動車用金型で国内2位の富士テクニカは同3位の宮津製作所(群馬県大泉町)の事業を買収する。宮津は事業譲渡後に会社を清算、富士テクニカは企業再生支援機構から8割の出資を受け入れ経営基盤を強化する。金融危機後の受注急減で金型各社の経営環境は厳しさを増している。両社は統合を機に先端技術の開発や海外展開を加速、生き残りを目指す。日本のものづくりの根幹を支えてきた金型産業の再編が政府主導で動き出す。


金型や成型といった事業は、日本のものづくりの力を支えてきたアナログ型の産業ですが、ほとんどが中堅・中小企業であり、これまでの景気低迷で、多くの中小金型メーカーが経営危機に陥り、何社かは中国など海外の会社に買収されています。有名なケースが金型で首位だったオギハラです。


日本国内でこれらの金型メーカーに出資する企業があればいいのでしょうが、ユーザーである大企業はそれらを「叩いて」使う立場から、直接支援することは少ないのが現実です。そいうい場合に本来であれば日本の独立系のPEファンド(再生ファンド)に存在感があれば、こうした中堅・中小の金型メーカーに支援の手を差し伸べることもできるし、多くのオーナー社長に事業承継の道を与えることもできたと思います。すなわち、中国など外国企業に売却するしか選択肢がない現状を大いに改めることが出来るはずなのです。


とはいえ、オギハラのケースでは、一度投資ファンドが買収した後、結局海外企業に売却されたという経緯もあります。ファンド経営者の長期を見据えた志が問われる局面でもあるでしょう。


一方、今回のように、いわば国営のファンドが出て行くのは経済合理性に基づく本来の判断を損なう恐れもあるし、投資後の経営改善も資本の論理を貫徹できない恐れがありますので、好ましいこととは言えません。


結論を急げば、志のある独立系のPEファンドを日本でもきっちりと育成していかないと、すべての事柄が歪んだ形で定着してしまいかねず、困ったことになると考えています。政策の最優先順位のひとつが、日本に独立系のPEファンドを育成することであることに疑いの余地はありません。