まずはじめに、この業界では非常に稀なことだと思いますが、自分の立場を明確にして、当面の間、このブログで、差し障りのない範囲で、責任あるコメントを掲載していきたいと思います。

 私は、現在、PEファンドであるニューホライズン キャピタル株式会社( http://www.newhorizon.jp/  )の取締役会長の安東であります。前職では、日本で最も大きな事業再生ファンドを創業・運営し、在任期間中は相応の投資成果もあげていたのですが、日本の産業再編に取り組むという新たな気持ちで昨年秋に、志を共有する仲間と共に現在の会社を立ち上げてきました。

 さて、最近、日本でも投資ファンドのことが世間の耳目を集めるようになってきましたが、一口に投資ファンドと言っても、創業間もない企業を支援する「ベンチャーキャピタル」、成熟期の企業を支援する「プライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)」、また、日本特有の概念として、PEファンドの中でも経営不振企業を専門とする「事業再生ファンド」があり、これらは、多くの場合に、自らが株主を代表して経営者などに協力して、自分たちも汗をかいて企業価値を上げていこうという投資ファンドです(「ハンズオン・アプローチ」ともいいます)。また、これらと違って、飽くまでも相場感や裁定取引など市場での株式等の売買によって利益をあげようとする投資信託やヘッジファンドも、投資ファンドの一類型です。更に、最近耳目を集める大きな要因となったのが、株式保有を通して株主の権利として経営者に株主利益の向上を迫る、いわゆる「アクティビスト・ファンド」の活躍です。

 近年、政府の関与が小さい資本主義諸国において、産業再編の主役の一つがPEファンドになっており、米英ではM&A総数の3分の1以上にPEファンドが関与しているとも言われます。日本でも、いわゆる行政指導であるとか、旧来型の銀行主導の産業再編には、様々な制約や問題点がある中、健全なPEファンドを育成し、社会インフラとしてそれを活用していく環境を整えることは焦眉の急であろうと思います。

 このところ、「投資ファンドを規制すべし」との論調も散見されるわけですが、投資ファンドが市場の厚味や流動性を増し、また、経営改善や産業再編に寄与することで経済が活性化している欧米の状況に鑑み、まずは「日本にも投資ファンドをきっちり育成しよう」というところから議論を始めるべきだと私は思います。その上で、規制の原則は「投資家保護」であることを明確にすべきではないかと思います。PEファンドで言えば、一般株主との間で利害相反があるファンド運営主体(例えば金融機関やその関係者による投資ファンド運営)の論点整理であるとか、ファンドの投資家へのリスク説明や情報開示のガイドラインを示すことは大切だと考えますが、それを越すファンドへの行為規制が必要なのか、他の投資主体への規制との平衡性の観点からも、また、他のアジア諸国との間での金融センターとしての競争の上からも、慎重に考えられるべきだと思います。

 一方、ベンチャーキャピタルやPEファンドの運営責任者には、企業価値向上や産業再編に寄与し、もって企業を取り巻く各ステークホルダーに貢献するという高い志と使命感、そして人間としての品格が求められると思います。それが結局は、中期的に見れば、投資家に安定的なリターンをもたらすものであると考えています。

 初回は堅い話から入りましたが、これから徐々に話を拡げていきたいと思います。