鳴りやむなチェーンソー!トビー・フーパーよ永遠に(新文芸座オールナイト上映) | 三つ子の魂百まで…トラウマニア

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10/14(土)池袋の新文芸座で行われた

トビー・フーパー監督の追悼オールナイト上映に行ってきました。

 

22時30分開場。

22時48分よりトークショー開始。

 

登壇者【田野辺尚人さん(別冊「映画秘宝」編集長)、篠崎誠さん(映画監督)、山崎圭司さん

(映画ライター)】

 

以前、この新文芸座で田野辺尚人さんが

トークショーで語った自宅に本物のチェーンソーを所有しておりベランダに保管していると…。

燃料を入れれば確実に動くと…。

で、田野辺さんTwitterで「チェーンソーダンス、

やれと言われればやります」と公言されたので、

これは70年代映画黄金期を生きた男の信念を

この目で確かめなければ一生後悔すると

思ったんです。

 

22:50、オリジン黄色の電気のこぎりを持って勢いよく見事なチェーンソーダンスを披露してくれました。お身体の調子が芳しくないのに体を張ってガンナー・ハンセン生き写しのような舞いを披露してくれるなんて、やっぱ年期が違いますよね年期が!やる、やらないじゃなくて、やる人間こそ信用できるんです!と、一瞬マジで本物のチェーンソー振り回しているのかと思ったのですが(アクシデントで電ノコをゴトン!と落としてしまった)。

実はアメリカで公式に販売されている大人向け

玩具でした(あー、少し安心したw)

 

トビー・フーパーを愛して止まない映画監督の

篠崎誠さん、そしてイタリアンホラーを語らせたら右に出る者はいない映画ライターの山崎圭司さん。

 

初っ端から初公開時『悪魔のいけにえ』を小学4年で鑑賞された田野辺さんの鉄板エピソードが炸裂!ブルース・リー好きの友人と一緒に『ドラゴンへの道』目当てで足を運んだら同時上映だった悪魔のいけにえが最初に流れてしまい強制鑑賞。

パムがニワトリの羽が散らかり人骨が散乱する部屋へ迷い込むシーンで友人がゲロを吐いてしまい上映中断。事務所に呼ばれてゲロが飛び散った服を拭いてもらった後、劇場の優しいおばちゃんから招待券を貰って帰ったという大惨事の後のやり場のないトラウマがオールナイトを見に来ていた観客を大いに沸かせてくれました!で、嘔吐したお友達は本命だったドラ道を性懲りもなく別の映画館へ見に行ったそうな(笑)4Kリマスター化でディティールがはっきり確認出来るようになった現在。海外のいけにえマニアがレザーフェイスマスクの完璧版を製作中なのだそうです。マスクが3種類あることも熱心に語って下さった田野辺さん。75年は大豊作イヤーだったと。田野辺さんが鑑賞された1975年(昭和50年)、新宿東急(閉館した新宿ミラノ座)で正に『悪魔のいけにえ』と『ドラゴンへの道』上映中の大変貴重な個人の方が撮影された8mm映像がYoutubeにアップされています。

※7分15秒と8分03秒

 

 

 

篠崎監督はクリエイター視点での語り口が非常に聞き応えがあって、「フーパーは階段にコダわる。下からじゃなく上から撮る。それと地下が好き。」

もう同意すぎて首を縦に振るしかない。ブランコから立ち上がったパムを超ローアングルで追う青い空を強調した有名なカット。「あれは地面を掘ってカメラレール敷いてる。」ぐぐぐ・・・何遍も見返しているけど、そこまで考えた事なかったです。スゴイ!カークがハンマーで頭をカチ割られ勢いよく足をバタバタさせながら痙攣する場面も、人間は簡単には死なない。どこを切り取っても生々しい裏付けがしっかりしているからこの世の物とは思えない地獄絵図をフィルムに焼き付ける事が出来たのだなぁとしみじみ感じました。階段を駆け降りて来たサリーに一瞬怯むレザーフェイスやオヤジに叱られるレザーフェイス・・・いけにえ好きの心踊るツボを押しまくる切り口・・・そこに的確なレスポンス飛ばしてゆく山崎さんのクールさがスコン!と噛み合うギアのようでいつも気持ちがいいんですよね。

 

いよいよ上映開始です。

フーパー大先生が愛飲していたドクターペッパーを自販機で買って(3本立てに合わせて3本!)

ちびりちびり飲みながら地獄旅を楽しみました。

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      『悪魔のいけにえ<公開40周年記念版>』

   (1974年/アメリカ/84分/5.1chサラウンド/

        Blu-ray上映/23時41分~1時55分)

 

輪郭バッキバキの4Kリマスターバージョン。

サラウンドも弄り倒していて絶えず不穏なSEが

ワオンワオンしてる。爺様の椅子を引きずる床の摩擦音。脳髄を掻きまわされるような電気ノコの爆音!ストロボの残響音…。

カニバリズムはタブーと言えども、食文化の違いだから赤の他人がとやかく口出しする事じゃないと思うんすよね。ソーヤ一家は人肉が主食で狩りに出かけてる。僕らもお肉買いにスーパー行くでしょ。そう考えると不思議な事じゃないし、世の中は弱肉強食ですよ。食うか食われるか。巷ではハンディがあって動けねぇし役立たずで文句ばかりで煩いフランクリンを叩くのがフツーでしょうが、自分は彼のセンシティヴさに感情移入してしまう。異様な空気をいち早く察知しているのは彼なんだよね。感受性が鋭い。だから生き残れなかった最期はいたたまれない…。

ちょっとしか映らないんだけど、胸ポケットに入れてるベビールース(チョコバー)、あのテキサスの灼熱地獄じゃ溶けて水チョコになってそう。それとガソリンスタンドに寄った後にソーセージ食べるじゃないですか。あれってGSで買ったものだとすると、人肉ソーセージだよね。美味しけりゃあ何でもアリの世界なのよ(笑)

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                        『マングラー』

     (1995年/アメリカ/107分/

        Blu-ray上映/1時33分~3時18分)

 

ハイテンションな洗濯屋さんのお話。

ヴィンテージ・タイプライターみたいなイカす

デザインのプレス機が従業員をバシバシ潰したり切断したりと鬼のような肉魂製造マシンっぷりがどこかファンタジックで魅了されます。理屈抜きに邪悪な何かが憑りつかせたら手に負えないフーパー監督の突き抜けた自由さに惹かれる1本。

「羊たちの沈黙」でバッファロー・ビルを演じたテッド・レヴィンが終始神経カリカリした刑事役で場を盛り上げてくれます。胃薬を水なしで大量にバリバリ噛み飲みするのに影響受けちゃって何か似たようなサプリとかあったら真似してみるのが夢だな(笑)それと危なっかしく故意にプレス機に手を出したりダチョウ倶楽部スピリッツが溢れているのも一言物言いたくなってヤバい。派手なストロボの閃光が眩しい謎多きカメラマンと主人公のやりとりが泣けます。なんかアメコミっぽいのも好き!

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                   『悪魔の起源 ジン』

   (2013年/アラブ首長国連邦/86分/

        Blu-ray上映/3時36分~5時02分)

 

いかにも油田出身系で彫りの深い顔立ちの

キャラばかり出てくる露骨なショック演出多用で体の芯から疲れちゃうオカルト作品。車のエンジンが掛からなかったり、車の中で悪魔に意地悪されるシークエンスばかり。マンションに怪奇現象が多発して頭を抱えるヒロイン(しかも美形)。謎の隣人も美形。フーパー節を挙げるならば否応なしに住居からおっぽり出される設定と車のヘッドライトがこちらに勢いよく向かってくるカットくらいかな。全体的に平坦なイメージだけど、アラブ産だけあってちょいと毛色の異なるムードは出ていると思う。

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篠崎監督のコレクションが展示されていました。

 

『スペースバンパイア』新聞広告の原版!

2種類もあったんですね。

オブジェとして飾ってもお洒落っぽい。

 

満席とまでは行かなかったけど、関連Tシャツを着用したお客さんや、ホラー慣れしていない女の子が痛かったりびっくりするシーンで目を伏せるリアクションが見られて眼福でした。長年ホラー映画ばかり見ていると余程の事がない限り展開が読めてしまうし気色悪さにも慣れてしまう。指が切れて、女がフックに吊るされ、木陰からブッチャーマンが飛び出てくる。それをピュアハートで鑑賞できるなんて羨ましい限り!70年代の名作は若者の心に響くパワーを絶やしていないんだね。

偉大なるトビー・フーパー監督、数々の名作を生み出してくれてありがとうございました。全部好きですけど、いけにえは人間が生み出した映像とは思えない現実よりもリアルな世界観だから恐ろしいと思うんです。優秀なスタッフに恵まれていたけれど、若かりし頃のフーパー監督の情熱は人知を超えたものだったと思う。監督の母親が映画館で産気付いて生まれたというのだから、彼の歩む道はこの時から決められていたのかもしれない。突然この世を去ったのも、どこかでやるべき使命が残されているのかもしれない。たぶん気紛れにこの世に立ち寄ってドクターペッパー大人買いしてると思いますわーw