7月鑑賞映画まとめ | 三つ子の魂百まで…トラウマニア

三つ子の魂百まで…トラウマニア

映画レビュー、コレクション紹介、映画や趣味全般について書いています。

『コンビニ・ウォーズ バイトJK VS ミニナチ軍団』【2016年/アメリカ】

 

コンビニでバイトする2人の女子高生。

全くヤル気なし。レジに突っ立てるだけで

スマホばかり弄ってる典型的なダメJK。

職場は遊び場状態。ジョニー・デップの娘

リリーちゃんがとにかく可愛らしい!

親友のハーレイちゃんはヤングなのに

中年おばさんみたいな貫禄を感じさせる

堂々とした演技。監督の娘だというからまた驚き。

そしてどの作品に出ても度を超えた"変装"の

ためか言われて始めて気が付くとぼけたお爺さん役のジョニー・デップ。やっぱり目元しかジョニーって分からなかった(笑)
娘の目元もジョニーそっくり!歌って踊って弾けてダラけた青春を謳歌するJKたち。

理由はともかく加齢臭が漂ってきそうなナチスのソーセージ小人がコンビニにわらわら湧いてきたからさぁ大変。あの手この手で撃退するヨガ馬鹿娘w 全体的なムードは夕方からNHKで放送してる

教育番組っぽいノリ。

マンガやTVゲームの要素をふんだんに取り込んだり、お菓子の外箱みたいなポップな色使いは若い子にウケるんじゃないかな?冒頭でアンスラックスの"I'm The Man"を熱唱するデップ娘が本当にサイコーだった!時にジョン・カーペンターの

「ハロウィン」や「クリスティーン」っぽいBGMを

挟みながら「シャイニング」のテーマ曲をズシッと

配置する映画オタクなケヴィン・スミス監督の

遊び心に「あー、それね!うんうん!」と納得。

この監督「ダイ・ハード4.0」でSWマニアなハッカーを演じてたデブのあの人だったんすね~。

女子高生のカバンをひっくり返したような世界観に胸躍る愉快な珍作でした。スタローンのアレは似すぎてて腹筋がヤバい。

まさに出オチなあいつが一番笑えた(爆)
ヨガは体幹を鍛えるのとナチが攻めてきた時に

役に立つ・・・かもしれないww 

【2017年7月5日(水)新宿シネマカリテで鑑賞】

-----------------------------------------

                『地獄愛』

(2014年/ベルギー:フランス合作)

男の愛に女が溺れる。女の真の愛に男が

翻弄される。孤独が生み出す狂気。

結婚詐欺師でもなんでも、満たされない心の穴を埋めてくれる男がいるのなら鬼にだってなれる。

ごく普通のシングルマザーが嫉妬に狂い、

愛する者への裏切りに怒りをぶつけず、

男が目を付けた女性に牙を剥く偏執的かつ

悪魔に憑りつかれたような想像を絶する

暴力描写は閉口せずにはいられないほど

強烈なストーリー…。

無計画で短絡的な行動。男も女も脳が死んでいるかのように同じ過ちを繰り返す。

それを粒子の粗い16mmフィルムの質感を上手く使って実話をより本物らしく映し出しているのだから全然笑えない。恐すぎる。純愛映画のはずなのに、秒針が進む度に地獄の奥深くへと転がり落ちていく二人。

あまり相性が良すぎるのもマイナス要素に

なるのかな?切り落とされる足首。

修正が加えられていたけど、ノコギリが骨を粉砕する生々しい音だけで十分堪えました。

邪魔者は消して、自分たちの都合の良い状況を

維持しようなんて身勝手な思考は精神が崩壊している以外に考えられない。スクリーンの奥から

臭い立つように密着する中年男女の乾いた肌。

見るに堪え難い。こんな女に人生を蝕まれる

くらいならいっそのこと自殺した方がマシ。

題名通り本物の「地獄愛」。

恐怖映画を見ているようだった。
【2017年7月5日(水)新宿武蔵野館で鑑賞】

-----------------------------------------

          『美女のはらわた』

          (1986年/にっかつ)

エンジェルレインなる覚醒剤を打たれた女医が

皮膚ズルムケ両性具有モンスターに変身する

本格的な和製スプラッタームービー。

男ヤクザに復讐する時は色仕掛けで誘って

一発やってるスキに性器もんまりで窒息死させる。

女医の催眠術にかかったヤクザ男が「馬鹿野郎」ワードを耳にするとドスを抜いてボスに斬りかかるという分かり易い設定や胡散臭い闇取引にチラッと顔を出すガイラ監督。モロに中東系の

ヤー公っぽく見えるから洒落にならない(笑)

そんな冗談みたいな80年代のノリで笑わせてくれるんだけど、裏切ったヤクザがゴム人形の如く

いとも簡単に四肢をバラされるシーンは嘔吐必至の迫力!あの伝説的な問題作「ギニーピッグ」の生々しい特殊メイクを手かけた古賀信明氏がタッチしているのだから気色悪さは保証済み。

ヤクザの死体と女の遺体が合体して巨神兵のような化け物が誕生する。理屈なんて細かい事はどうでもいい単純明快さで飽きさせずに楽しませてくれます。前作「処女のはらわた」はポルノ要素が

強かったけれど、ホラーブームも最高潮に達した1986年後期製作だけあって人体損壊・溢れ出る血の量は相当なモノ。女を殺すときは男○器がニョキッと飛び出してチェストバスターまんまな風貌のソレが女の腹部を貫通する。しかも可愛い鳴き声まで発するからホント自由に撮らせてもらえたんですねえ…。(映倫審査は大事な部分も牙が生えていればOKという変な理屈らしい)

ヤクザに追われ助けを求めてメンタルクリニックに駆け込んだ少女。自殺にまで追い込んだヤクザを何故に赤の他人の女医が身を挺して復讐しなきゃならないのか理解に苦しむ。どう見ても売れない劇団員が小汚い事務所でウダウダしているだけにしか見えないチンケなやくざ一味のキャラが最高に様になっているから憎めない。社長にバレたらどうする!と煩く小言を言っても最後まで社長は出てこないんだよなw

端整な顔立ちと棒読み台詞で魅了する小沢めぐみの素人っぽさがまさしくシロウト系AVのようで裏っぽい雰囲気に纏め上げているのは上手だと思う。表社会と裏社会。性器も裏返る。一粒で二度美味しいグリコみたいな映画とは監督の弁。

(妙に納得)

【2017年7月5日(水)】
~怪奇・幻想映画ノ世界~

ラピュタ阿佐ヶ谷で鑑賞。
※初見は06年頃にSynapse社の輸入DVDで。

-----------------------------------------

 『人食いシャーク 

   バミューダ魔の三角地帯の謎』

          (1978年/イタリア)

バミューダ海域での不可思議な現象をテーマに

ジョーズや空より高い所の何かを織り込んだ

イタリアお得意の何がしたいか良く分からない

困ったSFパニック映画?

突如操縦不能になる飛行機が

ミニチュア→分かる。


嵐の中を航行する船がミニチュア→分からない。


海底に眠る謎の遺跡がミニチュア→カネ使え!

大御所アーサー・ケネディがダイバーに潜ってお宝を取ってきたらゼニうんとやるわ!と騙して

無事見つかったお宝をケチって拳銃一丁で奪おうとしたらダイバーに逃げられるマヌケさ加減。

撃たれたくないダイバーは浮上できず、オッサンは潜れないのイタチごっこが本当にしょーもない。

海底で何かを守っているようなサメが嫌に不気味で、しかも実物のサメだし俳優とのアクションシーンも命がけ。この辺は必死に映している感はあるんだけど展開がダラ付くので緊迫度は全然ナシ!ステルヴィオ・チプリアーニのムーディーなサントラ盤が気に入っているので映像も気になっていたのですが、何か想像していたものと違い過ぎた。。

主題歌"SAIL BOATS"の爽やかなメロディも

全然活かされていない。

ポスターに描かれている不気味な人形が大活躍していたのには正直驚き。悪魔に憑りつかれて2週間飲まず食わず系のツラをした気色の悪い人形が波に揺られて血のゲロを吐く。イタリアンホラーの常連ジャネット・アグレン(地獄の門、食人帝国)やルチオ・フルチの『ビヨンド』で盲目のエミリーを演じたシンツィア・モンレアーレの若き姿が拝めたのはとても嬉しかった。

海底で人を小馬鹿にしたかのように光る

物体・・・。唐突に「?」で〆られるラスト。
お前らが分からないなら観客はもっと謎だよ!
こんな投げやりな映画も滅多にない。

【2017年7月9日(日)】輸入盤DVDで鑑賞。
※英題「SHARK'S CAVE」

-----------------------------------------

   『ジョン・ウィック:チャプター2』

          (2017年/アメリカ)

殺しに憑りつかれた孤高の殺人マシンこと
ジョン・ウィック。物語は前作の僅か5日後から

始まる。腹に響くマスタングの爆音エンジン。

まさに曲芸並みのカースタントで冒頭から

グイグイ引っ張ってくれるのは爽快そのもの!

従順すぎる愛犬の名前は「ない」。
「ない」という名前なのか?(笑)

電光石火で繰り出す"ガン・フー"の腕前は

前作よりパワーアップしているけど、

ゲームのようにただ淡々と殺していくだけなので、
途中で飽きてしまった。

会話劇とアクションとの調和が上手く噛み合っていないため、中弛みしてしまっているのが残念。

やはり愛犬家には本当に辛いんだけど、愛らしい犬がいとも簡単に殺され復讐の鬼と化すジョナサン。印象的な物語に仕立てるには失う者がなくてはイマイチ感情移入できない。

「誰にも邪魔させない」と無駄のない動きで確実に息の根を止める機械的で完璧すぎる元殺し屋を

キアヌ・リーヴスが体を張って役になり切るのは

一見の価値あり!寡黙な女アサシンを演じる

ルビー・ローズのクールな仕草、潔さはめちゃくちゃカッコ良かったな。バイオハザードとか燃えドラとかザ・レイドってぽいシークエンスが出てくるんだけど特段目新しさは感じなかった。


【2017年7月10日(月)】

TOHOシネマズ海老名で鑑賞。

-----------------------------------------

     『幽幻道士(キョンシーズ)』

            (1987年/台湾)

TV放送がきっかけで当時の小学生にキョンシーブームを巻き起こした記念碑的作品。大道芸人の子供たちがキョンシー相手に本格的な武術を披露する本家に恥じない正統派パロディ作。

1作目のテンテンってこんなに初々しかったんだ!それに法術の腕前も見事にキマっていて、おしゃまな性格から何からどこを取っても愛らしい。そりゃあの頃クラス中の男子がテンテンに恋するのも頷ける!本家『霊幻道士』と差別化を計っているのは、キョンシーに影を踏まれると動けなくなること。オマケに不吉な前兆にもなる。子供達が幽体離脱しコミカルな動きで手加減なしにキョンシーを痛めつける特別霊魂のアイデアは斬新でした。

中国・台湾は著作権という概念が存在しないのか、アメリカ映画のサントラを露骨に無断使用。(恐らく無許可w)
オープニングに『ハウリング』。顔に落書きされた金おじいさんが目覚めるシーンで『ゴーストバスターズ』(エルマー・バースタインのスコア版)。親方とキョンシーの格闘シーンでは『ジョーズ2』がバリバリ流れる(汗)ほかに『マニアック』『ファンタズム』『レイダース』『マッドマックス』と製作当時としてはサントラレコードを入手するのも結構大変だったと思うのにこの豪華セレクションw

幽幻道士と言ったら原語より日本語吹き替えの方が馴染み深いですよね。今日では不適切と思われる台詞(乞食とか)がバンバン飛び出すし、スイカ頭のオ○ニーとかリアルタイムで見た小学時代は分からない単語だったよ(汗)

香港アクション俳優にヒケを取らない心優しき親方が繰り出す目にも止まらぬスゴ技アクションの数々。どうにも憎めないお茶目な風貌のデブ署長がジャンピング土下座する。膝が砕けてんじゃねえのかい?(爆)マージャン好きの酔っ払い道士が他人事のように親方に警告するとか、お前がしゃしゃり出てきたから皆が不幸になったんじゃないか!疫病神め!w

今回30周年を記念したデジタルリマスターBlu-ray発売に際し映画館で、それこそ30年振りに鑑賞。スクリーン狭しと駆け回るテンテンやチビクロにベビーキョンシーの可愛い姿を見る事が出来ましたが、お国柄か当時から保管状態の悪い劣化フィルムでの撮影だったため傷が凄いし、画質もマイルド(笑)1987年当時、TVではこの手のキズは当たり前だったし、変に手を加えて綺麗にしたところで風合いが消えてしまうからメーカーサイドのレストア方法は間違っていないと思いました。本当に懐かしかった!タイトルバックが出てこないのは何故なんだろ?

【2017年7月15日(土)】新宿シネマカリテで鑑賞。
※カリコレ2017出品作品。

-----------------------------------------

   『霊幻道士 

          こちらキョンシー退治局』

             (2017年/香港)

あのキョンシーが現代に甦る。しかし時代錯誤な感じは一切しない!それを退治するゴースト・・・じゃなくてキョンシー・バスターズの愉快な面々が非常にキャラ立ちしていてマジに黄金期の香港アクションは衰えていないとひれ伏す面白さです!

バイトで入った新米クン(美男子!)を叩き上げる凄腕のキョンシーバスターに『霊幻道士』でラム・チェンインの弟子を演じたチェン・シュウホウがダンディな色気を振りまいてブランクを感じさせない本物のカンフーを心ゆくまで堪能させてくれたのには本当に感動したし男だけど惚れすぎた!

『キョンシー』の役より全然素晴らしい。

100年前の封印から目覚めた女キョンシーか新米クンに犬のように甘え、仕草や八重歯とか嫁萌え的な要素を織り交ぜて、甘い純愛ラブストーリーっぽく描いているのも幸せな気持ちにさせてくれる。お粥が好物。レバー?が大好物って設定もなんか現代的というか妙に庶民的で、そんな女キョンシーがオタッキーな新米クンの部屋でニコニコしてチョコンと座ってる。それだけなのに怖さと切なさと激しさが混然一体となっており、非常にバランスが良くてたった1度たりともダレない。そこが凄いし魅せる魅せるぐいぐいと。

往年の香港名俳優リチャード・ンとエリック・ツァンの掛け合いなんてのは福星シリーズかと思うほど。「あけまっておめっとーございます」と空耳するほどの懐かしさ(笑)血液を吸収しパワーを得るキョンシー退治剣のカッコ良さ!噛まれたら有無を言わさず焼却処分。外見は清掃会社で、モッサリしている所もミソ。そこには凄腕の達人が国を守っている。そして新たにキョンシー退治のため訓練を受ける者たち。網の目のように張り巡らされた過去と未来のネットワーク。ボケたおばちゃんの大胆発言は椅子からズッこけそうになりました。香港映画はまだ衰え知らず。いい役者が揃ってる。近年稀にみる充実感のあるコメディアクションホラーでした。メリケンヒーローには修正がいっぱいね(笑)

【2017年7月15日(土)】新宿シネマカリテで鑑賞。
※カリコレ2017出品作品。

-----------------------------------------

          『悪夢のファミリー』

     (1979年/アメリカ)

主人公とその家族らを取り巻く人間模様をフィルムからフィルムを通して展開するデ・パルマと

ピノ・ドナッジオのポップスオーケストラが

融合した異色のコメディ。


たった独りで食事をしたり、映画を観たり、友人と会話をする時でも、その一瞬はフィルムの1コマ。主人公デニスは「僕は人生のエキストラ」なんて嘆くけれど、脇役がいなくちゃ主役が引き立たない。どんな岐路に立たされても、カメラが回っていると思えば真剣に喋れるし、ここ一番の行動にも移れる。8mm映画を通して人生をどう生きるか客観的に映し出していく奇抜なドキュメンタリータッチな演出。

デ・パルマの癖もそこかしこに垣間見れて楽しい。
常連のナンシー・アレンや『ファントム・オブ・パラダイス』のゲリット・グレアムが大きな目玉を剥いて小姑みたいな婚約者を熱演してるけど、カーペンターの『クリスティーン』でオンボロ車の霊に憑りつかれるいじめられっ子アーニーで有名なキース・ゴードンのカメレオン演技が最大の見せ場。本作で脇役だった彼は憧れの監督を目指し見事その職に就いた。ひょっとして今、監督を演じているのかもしれない(笑)


フィルム代も現像料もカネがかかるんだ。
人生を棒に振っちゃ勿体ない。

そんな若者が抱く挫折と苦悩をレンズを通して

切り取ったブライアン・デ・パルマは素晴らしい

監督だと思う。派手さはないけど、映画の製作側に興味のある人には心に響く1本になると

思いますよ。

明るくテンションの高いピノ・ドナッジオのサントラが頭の中をぐるぐると駆け巡ってると思えば我が人生もウキウキするような気がしますよ~。とにかくこの映画は音楽抜きには語れない。ビデオ止まりで未DVD化なのが非常に惜しい隠れた秀作。


【2017年7月22日(土)】鑑賞。

-----------------------------------------

            『暴走機関車』

          (1985年/アメリカ)

脱獄囚が乗り込んだ列車が無人暴走。

極寒のアラスカを舞台に悪魔のようなエンジンの唸り声を上げて突進するフルパワー4重連のディーゼル機関車と、執拗に追って来る刑務所長と自由を求め真っ向から戦いに挑むジョン・ボイトの魂の叫びが涙なしには見られない真の男の生き様!

黒澤明監督が温めていた脚本をロシア人のアンドロレイ・コンチャロフスキーが映像化。スリリングな刑務所脱獄シーンから列車へ乗り込むまで一点たりとも無駄のない完成尽くされたプロットでぐいぐい引き込んでいく。ボクサー役で駆け出し時代のダニー・トレホがスリムなボディを見せてくれる。黒人の運行司令員デイブには『遊星からの物体X』で終盤まで生き残るノールスを演じたT・K・カーターを起用。またしても寒々しい雪景色の作品に一際生える役柄となった。運行司令長マクドナルドには『サブウェイ・パニック』で現場指揮官を演じた巨漢のケネス・マクミラン。トレインパニック物に引っ掛けてキャスティングしたとしか思えないファンの心をガッシリと掴む俳優陣にも注目したい。

ベースの基本はやはり『新幹線大爆破』なんだけど、貨物列車との離合シーンは『アンストッパブル』に影響を与えている。(全く同じシーンがある)ランケン所長のヘリ追跡とボロい橋梁通過シーンは『カサンドラ・クロス』とほぼ同じだけど、俯瞰やローアングルで狙った撮影手法は本作の方がレベルは高い。鋼鉄の機関車が貨物と衝突した際に引っ掛けた残骸が悪魔の牙に見えてくる。誰にも止められない鉄の塊は悪魔そのものといった井出達だし、逃避行に疲弊し自由の道を選択したマニーの狂気じみた行動もやはり何かに憑りつかれたかのように見える。

防寒対策で身体中にグリスを塗りラップを巻くマニーの姿がとても印象深い。連結器に指を挟まれ赤じゃなく黒い血が飛び散るのも覚悟を決めたマニーの身体に変化が起こっているように思えた。この機関車こそ、姑息な手段で囚人を押さえつける体制から逃れる自由への片道切符。屋根に上り悲し気な表情を浮かべるマニー・・・ジョン・ボイトの熱演は雪をも溶かす。彼は囚人全員を自由の世界へと解き放つ救世主だったのかも。パニックよりヒューマンドラマ寄りの名作ですね。音楽にシンセを用いているのが80年代らしい。

【2017年7月23日(日)】
午後のロードショー
<2016年11月30日(水)放送>の録画で鑑賞。
●ジョン・ボイト(マニー)麦人
●エリック・ロバーツ(バック)堀内賢雄
●レベッカ・デモーネイ(サラ)佐々木優子

※初見は1988年2月16日、
TBS系「ザ・ロードショー」で。

-----------------------------------------

          『大陸横断超特急』

      (1976年/アメリカ)

列車内で殺人現場を目撃してしまったドーラン濃い目のジーン・ワイルダーが追って追われて多忙極まりないパニックサスペンス。語り草になってる3度落ち。「またなんだもの~」な広川太一郎氏の吹き替えも絶好調なロードムービーの傑作。

列車内でぐだぐだするだけじゃなく、勝手に途中下車してお茶の一杯でも飲んでまた乗り込むような緩急の付け方が特徴的で飽きさせない。レンブラントを知らない保安官との掛け合いがめちゃくちゃ笑えるww さすらいのハーモニカに乗せて線路をとぼとぼ歩くジーン・ワイルダー。黒人のリチャード・プライヤーと組んでからはバディ物のような軽快な調子で盛り上がる。007のジョーズ役で有名なリチャード・キールを水中銃で退治したのはまぁそういう意味なんでしょうなぁ。

クライマックスでは列車大暴走を忘れないテーマの本筋をダイナミックに描いているのも豪華ですよね。大悪党のパトリック・マクグーハンはいつ見ても冷徹な顔つきで怖いよなぁ。ボスがライフル片手に大立ち回りを演じるのも珍しく、しかもなかなかの腕前。何回屋根に登るんだよ!アクロバティックかつ密室劇じゃないオリエント急行殺人事件みたいなノリが好きだなー(笑)

【2017年7月25日(火)】
BSジャパン「シネマクラッシュ」
<2017年2月1日(水)>放送の録画で鑑賞。

●ジーン・ワイルダー(ジョージ)広川太一郎

●ジル・クレイバーグ(ヒーリー)小原乃梨子

●リチャード・プライヤー(グローバー)坂口芳貞
※初見は大昔にTVの洋画劇場で。

-----------------------------------------

             『ザ・ディープ』

       (1977年/アメリカ)

スキューバダイビングを楽しんでいた夫婦が偶然発見した沈没船。その中で見つけたモルヒネを巡って闇組織に狙われるスリルとサスペンス。ニック・ノルティとジャクリーン・ビセットが『ジョーズ』のクイント船長ことロバート・ショウと共に王妃の宝を探すディティールの細かい時代考証、ブードゥーの呪いで味付けするなど、バミューダ諸島ならではの風土色が如実に出ており何度見ても飽きない海洋アドベンチャーの大傑作です!

エメラルドグリーンの海が美しいロケーション。海底シーンは抜群の照明効果で不穏な雰囲気を醸し出しているし、沈没船のヌシでもある化け物ウツボの恐ろしさ。サメも出てくるけどザ・ディープといえばウツボ。砂からふんわり浮かんでくるモルヒネアンプルが宝石のようだけど、金銀財宝より何より悩ましいのはジャクリーン・ビセットの水に濡れた白いTシャツから透けるおっぱい。冒頭でゴライアス号の船底へ磁石で引き寄せられるかのように引っ張られるジャクリーンのカットも忘れられない不思議さが。今も独身を貫き通しているなんて…。

ロバート・ショウは海の男が似合いますね。砂を掻きだすポンプで吸い上げてしまう手榴弾。傾くミニチュアの沈没船もリアルに撮影されているし、エレベーターでの死闘など、全編に渡って陸海のバランスが上手く取れていてテンポ良くまとまっています。カネに目が眩むと死をも恐れない・・・それじゃ元も子もないのだけれど、買い物リストからヒントを得て僅かばかりのご褒美を手にするのはトレジャーハンティング物の定石とでも言いましょうか。数滴の酒でクローシュに寝返るイーライ・ウォラックのコソ泥演技も忘れられない。

【2017年7月26日(水)】
午後のロードショー
<2016年7月22日(金)>放送の録画で鑑賞。
●ロバート・ショウ(トリース)穂積隆信
●ニック・ノルティ(デビッド)有川 博
●ジャクリーン・ビセット(ゲイル)平井道子

※初見は午後のロードショー
<2009年7月6日>の放送で。

-----------------------------------------

       『ウィッチ』

     (2015年/アメリカ)

テーマは森に潜む魔女の恐怖という触れ込みだけど、厳格なキリスト教信者の両親に抑圧された環境で育てられる子供はたまったものじゃない。

ウサギやヤギなどの動物、兄弟が錯乱する場面は少女が親に抱く恐怖と不安であり、その不安要素が具現化した結果なのでは?僕はこのように解釈しました。

時代背景からすれば、あの家族のように神にでも縋らなければ精神状態が保てない人々もいたのだと思う。しかし、人間の弱い部分に「悪」は付け込み入り込もうとする。魔女や儀式の実体は人間自身の弱さが造り上げた産物なのではなかろうか?昨今、親による育児放棄が問題になっているが、その親の背中を見て育った子供たちがどんな大人になるのか?三つ子の魂百までとは良く言ったものである。犯罪に走る者、殺人を犯す者。映画の中で描かれていた「魔女」は社会の秩序を乱す悪いお手本のような存在。

実の親に魔女扱いされて正気でいられる子供はいない。一番大切な時期に親が遊び呆けて子供に無関心でいると魔女のような人間になる。松竹映画「鬼畜」で描かれたあの家族のような恐ろしさ。野村芳太郎イズムを感じずにはいられない恐怖に震えるダークな映像美と美しくも不気味な音楽に心を揺さぶられる。そんなホラー作品でした。


【2017年7月30日(日)】新宿武蔵野館で鑑賞。